小説家とセールスマン
最近のアップデートで、かねてから要望の多かった独自ドメインがご利用いただけるようになりました。今回は、クローバ PAGE を開発した背景について書いてみたいと思います。
実は、わたしは起業する少し前、小説を書いていた時期がありました。といっても出版社から出ていたわけではなくて、電子書籍の自費出版です。専業でもなく、当時勤めていた会社は副業が自由だったので、夜や休日を執筆の時間にあてて3冊の電子書籍を出版しました。
このとき書いた本は今でもアマゾンから購入することができます。めっちゃ面白いのでぜひ買ってみてください。今さらに紹介するのは非常に恥ずかしいところもありますが、こういう場でさらけだすとなんか面白いのであえてそのまま公開してあります。
悲しいことに小説はさっぱり売れませんでしたが(面白いのに!)、そのときの経験は今とても役にたっています。たとえば、わたしは小説を多くの人に知ってもらうために誰でも思いつくであろう方法を試しました。それはブログを書くことでした。電子書籍を自費出版したところで、誰も宣伝などしてはくれません。なのでわたしは、不特定多数の人に情報を発信するためのもっともコストのかからないツールを選びました。ちなみにわたしはブログを書いたことがありませんでした。毎週ひと記事ずつ、最低一年は書こうと決め、休みの日はブログを書く時間にあてました。わたしはプログラムを書くのは速いですが文章を書くのがめちゃめちゃ遅いです。このエントリーも今日の午前中に書こうと決めて、今は午後4時です。小説を書くのはもっと遅いです。なのでだんだん小説を書いているのかブログを書いているのかわからなくなってきました。ブログは2回はてなやグノシーに取り上げられてそれなりにバズりました。わたしはああこれでブログを書かなくていいのだと思いましたが数日たつとアクセスはもとにもどり、ブログを見てくれた人が小説を買ってくれたりもしませんでした。それもそのはずで、わたしはブログに小説の紹介や宣伝をほとんど書いていませんでした。そういうものを書いても誰も読まないと思ったからです。ブログにつけていたのはアマゾンの自分の商品へのリンクだけです。このときからわたしは、自分のやっていることや商品を紹介するための固定のページがあればいいなと思っていました。
そのブログはきっかり一年書いてやめました。小説が売れそうになかったので、書いていく理由がなくなったからです。そのあとしばらくしてFacebookを見ていたら、普段見ていない画面に新着メッセージがあることに気づきました。今は改善されているようですが、当時は友達以外のユーザーからメッセージを受信しても非常に気づきにくい仕様になっていました。メッセージを開くと、知らない人からわたし宛に、小説を読んでおもしろかったから、いっしょになにかできないだろうかと書かれてありました。それはまさに自分が求めていたことでした。さっそく返信しようとして、手がとまりました。なぜかというと、そのメッセージは1年も前に送信されたものだったからです。結局わたしは彼に返信することはできませんでした。
それでもブログを書くという経験からは、たくさんのことを学びました。どんなタイトルや記事が注目を集めやすいか。バズるとどうなるか。検索エンジンやSNSの効果、それから、やみくもに情報を発信するだけでは、相手から求めるアクションは得られないということ。
そういったわけで、わたしはブログでも単なるホームページでもない新しいものをつくることにしました。自分たちの活動や商品を発信してアピールするための固定のページが持てて、それを気に入ってくれたひとたちと双方向にコミュニケーションがとれて、常に新しい情報をファンに発信しつづけることができるツールです。もちろん今のブログをページに埋め込んでいっしょに使うこともできます。わたしたちはホームページをつくる敷居をブログと同じくらいに下げたいと思っています。有料プランのユーザー向けには追加料金なしで、ホームページで使える写真をカメラマンが撮影に行きます。
これからは多様な働き方をする人が増え、自分のビジネスを持つことが当たり前になります。それはかつてのわたしのように副業かもしれませんし、フリーランスかもしれません。起業かもしれません。自分のビジネスを持つということは、それはセールスマンになるということです。モチベーション3.0を書いたダニエル・ピンクも、技術革新によって逆説的にセールスマン中心の世界が来ることを予言しています。これからのセールスというものはたんなる売り込みではなく、ファンを増やす活動だといわれています。情報格差を利用して売り込むというやりかたは、情報というものがだれでも容易に手に入るようになった現在では通用しないからです。わたしは、クローバ PAGE がみなさんのファンを増やすうえで役にたつと信じています。