門屋 亮

クローバ株式会社代表。つながるホームページ「クローバ PAGE」( https://qloba.com )、 マニュアルが報告書になる「Runbook」( https://runbook.jp ) などのクラウドサービスを開発運営してます。

門屋 亮

クローバ株式会社代表。つながるホームページ「クローバ PAGE」( https://qloba.com )、 マニュアルが報告書になる「Runbook」( https://runbook.jp ) などのクラウドサービスを開発運営してます。

最近の記事

長く続けることによってしか得られないもの

おかげさまで、クローバは今年で10期目を迎えました。わたしはひとりで、自分がめちゃめちゃ使いやすいと思うWebサービスを作って、それを売っています。幸いなことに買ってくださるお客様がいて、なんとか10年近くもやってこられました。 以前、誰かが独立してする仕事は、みんな個人的な表現活動のようなものだという内容の記事を書きました。花が好きな人は花屋になりたいと思うかもしれません。登山ショップを営む人たちの多くはおそらく自分でも山登りをするのでしょう。わたしのように誰かに必要とされ

    • お問合せを減らすためにやったこと

      小規模でWebサービスを運営していると、お問合せとどう向き合うがけっこう重要なポイントだったりします。実際に使用するお客様から、改善のヒントをいただけたり、思わぬ不具合に気づいたりします。え? こんな使い方してたのと驚かされることもあります。このように、お問合せはお客様から直接ご意見がいただける貴重な機会と捉えるべきです。 一方で、カスタマーサポートに費やすことのできる時間や人数は限られていますから、サポートサイトのマニュアルに書かれてあることをこちらが回答すれば済むような

      • BtoBで新しいサービスを始めた理由

        あけましておめでとうございます。昨年はほとんどの時間を新しいサービスの開発に費やしていて、年末に無事ローンチすることができました。 クローバ PAGEのローンチが2016年の終わりでしたから、丸7年ぶりの新サービスとなります。クローバ PAGEは企業で使うよりも、個人事業主やイベントを主催するお客様が中心のサービスですが、新しく開発したRunbookはマニュアルを作ることに特化した企業向けのサービスです。ビジネス向けのソフトウェアは慣れ親しんだ分野ではありますが、なぜ今、マ

        • コードだけでは量れない重さ

          難しいのはアイデアを思いつくことではなくて、それを正しく実現することだとよくいわれます。簡単に実現できるアイデアであれば、誰でも真似ができてしまいますから、優れた製品やサービスを提供したいなら、それなりに時間をかけて準備しないといけません。ひとりで作るWebサービスって、リリースするまでにどれくらいプログラムのコードを書かないといけないものでしょうか? ひとりで作る単純な機能のものなのだから、3ヶ月から半年くらいかけて開発できるくらいかなと想像するかもしれません。わたしが独立

        マガジン

        • お店を開くようにひとりでウェブサービスを作る
          14本

        記事

          誰のためのルール

          Webサービスの利用規約ってありますよね。なんか新しいサービスにサインアップするとき、利用規約に同意しますみたいなチェックボックスを押すあれです。同意するといっておきながら、読んだことがないものがほとんどじゃないかと思います。わたしも普段あんまり真面目に読むことはありません。 大きな会社でサービスを運営するのであれば、専任の法務の方が利用規約やらプライバシーポリシーやらを作るのでしょうが、ひとりで開発も運用のするのであれば、こういったものも自分で作らないといけないです。なんか

          誰のためのルール

          何度でもうまれかわる

          年齢を重ねるにつれ、偏屈になる人と、逆にぜんぜんこだわりがなくなる人がいる。若いときは人を見かけで判断するしかないから、ロックスターに憧れている人はロックスターのような格好をするし、自分はケンカが強いのだと思わせたい人は相手を威嚇できるような格好をする。ところが35歳くらいになると、本当にロックスターであればとっくにロックスターになっていてもおかしくない年齢なので、ロックスターでもないのにロックスターみたいな格好をしている人はちょっとおかしいのかなという気がしてくる。ケンカが

          何度でもうまれかわる

          どうやって顧客に届けるか

          今回はどうやってサービスを売るかという話をしてみたいと思います。Webサービスなんかプレスリリース出してGoogleに気に入られそうなホームページ作ってネット広告ばんばん打てば楽勝だろうと思われるかもしれません。ちょっとマーケティングの本を読んでかじったことのある人なら、グロースハックといってなんか書かれているとおりにやれば自動的に売れていくような魔法のやり方があると信じている人もいるでしょう。かつてわたしも信じていました。でも実際にやってみると、そんな甘いものではないことが

          どうやって顧客に届けるか

          プログラマーのための5つの真実

          ある程度大きな会社で開発をしているエンジニアであれば、始業から終業までコードを書くことだけが仕事で、顧客と話したことなどない人も少なくないでしょう。そういう人にとっては、そのコードに「いくらの価値があるか」関心がないのが当たり前です。それよりもエッジファンクションの使いみちとか、CSSのスタイルが競合しない方法とか、ペアプログラミングのほうがずっと興味があるものです。ところがさあ自分でコードを書いて、それを製品として売ることを商売にしようと考えたとすると、ちょっと考え方のシフ

          プログラマーのための5つの真実

          てこの原理

          会社で出世と聞くとだいたいは、管理職になることを意味します。さあ今日から私のことを課長と呼びなさいという人がいたら、ああこの人は出世したんだなと思うでしょう。管理職とは英語ではマネージャーですので、部下をマネージメントするのが仕事になります。 昔企業で開発部門の採用面接を担当していたとき、ときどきプラグラミングはやったことがないけど興味はあります。ゆくゆくは企画やマネージメントがやってみたいですと話す人がいて、わたしはいつも不思議に思っていました。ええと、サッカーのチームに入

          てこの原理

          何を売るのか

          前に予告したとおり、今回は「何を売るか」について書きます。わたしたちは自分で作ったソフトウェアを売るわけですから、「何を売るか」とはすなわち「何を作るか」とほぼ同じ意味です。実際には売るのは製品そのものではなくて、サポートとかその他もろもろの付加価値を付けて初めて売り物になるわけですが、それでも作った製品が主役であることに間違いはありません。 売り物になるソフトウェアを作るのはまあまあ大変な作業です。クローバ PAGEは最初のリリースまでに開発に1年半かかっていて、当然その

          何を売るのか

          なぜひとりで始めるのか

          わたしはクローバ PAGEというWebサービスを5年ほど運営していて、現在は収入の多くをこのサービスから得ています。開発、運用、マーケ、サポートなどほぼすべてひとりで行っています。ITで起業というと、資金調達して上場してみたいなキラキラした世界を想像するかもしれませんが、わたしは資金調達も借り入れもしたことがありませんし、今のところオフィスすら借りていません。おそらく初めて会う人は、わたしのことをフリーランスのプログラマーかWebデザイナーか、もしくは売れていないスタートアッ

          なぜひとりで始めるのか

          プログラマーの矜持とサイボウズのリアクション機能のこと

          2012年のことです。わたしたちのチームはサイボウズ Office バージョン9.1の開発に着手するところでした。サイボウズ Office は会社で使ったことがあるかもしれませんが、日本でシェア1位のグループウェアと呼ばれるソフトウェアで、当時で確か300万人くらいの利用者がいました。そのころのサイボウズ Office はクラウドサービスではなくて、会社のサーバーにインストールして使うタイプのソフトウェアだったので、リリースのたびにバージョンいくつ、と呼んでいました。今のバー

          プログラマーの矜持とサイボウズのリアクション機能のこと

          最適化が正解ではない理由

          今はとにかく合理的に生きるほどスマートでいけてるマンと思われがちです。毎日満員電車に乗って通勤するのは合理的じゃないよね。リモートワーク万歳! その意見はきっと正しいでしょう。けれど今多くの経営者がリモートワークで生産性が下がったと感じているそうです。それはマネージメントが悪いのでしょうか。仕事のやり方が悪いのでしょうか。Slackを社内に導入していないからでしょうか。前にテレビで見たのですが、ある企業では生産性を上げるため、リモートワークをしている社員の行動を逐一監視するツ

          最適化が正解ではない理由

          21世紀の経済学者と覆面画家が教えてくれること

          緊急事態制限が解除されたので、ひさびさに外出して109シネマズで映画「21世紀の資本」をみて、横浜で「バンクシー展」をみました。 「21世紀の資本」はトマ・ピケティという経済学者が書いた同名のベストセラーを映画化したものです。本は難解で読めそうになかったのですが、この映画は映像のキャッチーさもあってわたしのような経済の素人にもわかりやすく楽しめました。本が出たのはだいぶ前なので今さら感があるかもしれませんが、解釈も交えてポイントをまとめると、 1. 株などの資本によってまわ

          21世紀の経済学者と覆面画家が教えてくれること

          働きかたを改革したまもの

          先週、東京など7都市を対象に緊急事態宣言が出されました。今のところ大きな混乱は起こっていないようですが、いつ事態が収束するのかまったく予想のつかない状況になっています。 それまでなかなか進まなかったことが、大きな外部要因によって一気に加速することがあります。14世紀にイギリスやフランスでは人口の過半数が死亡したとも言われるペストが大流行した時には世界に大きな変化が起こりました。 それまでヨーロッパの社会というのは、王族を頂点、農民を底辺とした封建的なものでした。 農民は「奴

          働きかたを改革したまもの

          30分だけしか外出できない世界

          新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、時差出勤をしたりリモートワークをしたりする人が増えています。わたしはもう何年も在宅勤務のような状態なので、生活スタイルにほとんど変化はありません。ただJリーグの試合はないし、映画や美術館に行くのも少し躊躇してしまう状況なので仕事以外の楽しみはずいぶん減ってしまいました。あとついにティッシュペーパーが底をつきましたがコンビニには売っていませんでした。 この1ヶ月足らずで、突然わたしたちは「人と会ったり遠くへ行ったりすることがぜいたくな世界

          30分だけしか外出できない世界