かきかけの手帳本の一部をさらす
てちょぶん祭り、という、手帳と文具の同人誌を出すオンラインイベントに申し込みました。
「ツヅリヤ」というサークル名で、自分なりの手帳の選び方とそのために考えた分類いろいろをまとめた本を出すつもりです。
目次はこんなかんじ。(作業中ファイルなので見出しにあれこれスミカッコついてますが気にしないでほしい)
執筆がりがりしてるんですが、この手のやつを長く書いたことがないので「これおもしろいんだろうか?」という疑問がわいてます。いやいつか私が考えたことを忘れた私にとっては役にたつように書いてるんだけども。
トータル2万字以下程度には収まるはず、と思いつつ現在12000字であと5章ほどあるんですが、うち一章をここに置いておきます。
こういうの好きな人は一冊楽しめると思います。
こちらはアナログ手帳ジプシー(主に私)にむけて、目的を果たすならアナログにこだわらなくてもいいのでは、というのをいろんな手がかりから考えてみようね的な章です。
【原稿より抜粋】選び進める前に:それデジタルのほうが良くない? を、考えてみる
アナログの利点、デジタルの利点
本書は「手帳」の選び方を提案するものではあるのですが、もし「手帳を使えるようになりたい」の目的に計画管理やタスク管理などが含まれるのであれば、デジタルツールに任せたほうがうまくいくかもしれません。
本章ではアナログとデジタルのメリットとデメリットを列挙して、それでもアナログの手帳を使うべきか? を考えます。
実はやりたいことがデジタル向きなのにアナログに拘泥してしまうと、手帳沼ならぬ手帳煉獄へ迷い込んでしまいます。
アナログのメリット
①低いコストで得られる高い参照力
なんだかんだでアナログのここ、デジタルはまだ越えられてないなあ、と感じます。
指先で「だいたいこの情報がこのへんにあった」ってサーチしたり、ぱらぱらめくったり、24ページ目と8ページ目を瞬時に行き来したり、みたいなところ。特定ページの行き来が多い使い方をするのであればアナログのほうに分があります。
②記憶に残りやすい
いろんな研究や実験が示してますが、キーボードやフリック入力で打ち込んだ文字より、手書きの文字のほうが感情が文字自体に残りやすく、書いたときの感情も併せて記憶に残りやすいように思えます。一度書き記せばあとは「情報」になるだけといった内容のものであれば、こだわる必要はないポイントです。
③愛用して愛でることができる
アナログの最大のメリットはこれじゃないでしょうか?
モノとして魅力的で愛せるものを使い込める、という喜びはデジタルでは得られない快感です。とはいえデジタルのメリットをチャラにするほどではないことが多いので、要素の一つではあります。
④柔軟なテンプレート、フォーマット
アナログのデメリット
①有限のリフィル
まあこれですよね、デジタルのノートに移行する人の理由もこれが多い。綴じノートであればページ数を増やすことはできないし、紙面のサイズも決まってくる。
とくに「手帳」として販売されてる冊子は、「一年間でこのメモ帳を使い切らないようにしないと」みたいなプレッシャーで逆に何も書けなくなったり足りなくなったりします。いつでもどこでも無限の紙が欲しいタイプの人がアナログの手帳やノートを使うには試行錯誤が必要になってきます。
②場所をとる
①につながるところなんですが、まあ、書いていくと場所をとりますよね、移動中でもスマホなりタブレットなりをすでに持ち歩いているのに、そこに冊子が加わることになります。広げて書き込むのにもデスクの面積が必要です。A5サイズの手帳ってコンパクトなような気がしても、書き込むにはA4のスペースが必要ですしね。
③悪筆だと難易度が上がる
これ私なんですけどねー。思考を止めようとするとどうしても走り書きになるので文字が汚い→自分でもわからない、となったり、汚い字でつまったページがあるとその一冊がもうなんとなくうとわしいものになってしまったりするんですよね。
####ベストツールに出会うまでのコストがかかる
アナログではまりがちな落とし穴だと思われます。ベストなツールを探すあまり、手帳でやりたかったことよりもツール探しが目的になってしまう。万年筆、インクにありがちなやつです。
デジタルのメリット
①無限のリフィル
なんといってもこれですね。一般的なノートは40ページくらい、年間手帳のメモページも20Pもあれば良いほう、システム手帳のリングも枚数制限あり、と、書く際の精神的障壁になりえる「残りページ」の問題がありません。
②共有が楽
特に業務用のスケジュール共有で威力を発揮します。googleカレンダーを業務で使う方も多いでしょう。カレンダーのURLを共有すれば、リアルタイムで変化する予定共有を簡単に行えます。日報、日記、議事録、家計簿として扱うこともできます。
③悪筆でも大丈夫
自分の文字の汚さが障害になることがまずありません。手書きタイプのアプリはこの限りではないですが、まあアプリでわざわざ手書きを選ぶような人は読めない字を書いたりはしないのでしょう。
③検索可能
検索性の高さはデジタルの大きな利点です。五年間googleカレンダーを使い続ければ、5年前の特定の日の予定も、数年ぶりに連絡がきたクライアントといつなにをしたかも、どんな本をいつ読んだのかもすぐわかる。こればっかりはアナログには難しいので、ログをデータベース化したい、という人にはとてもいいのではないでしょうか。
④アクセスがしやすい(こともある)
PC仕事の場合はアナログの手帳を開くよりgoogleカレンダーのほうが記入がシームレスだったりします。アプリならiPhoneとパソコンでデータが同期できたりも。
デジタルのデメリット
①参照がしづらい
メリットで挙げた「検索可能」と矛盾するような内容ですが、デジタルはここはまだ追いつけていないように感じます。
特定の単語をピンポイントで掘り出すのはもちろんデジタルの得意とするところですが、紙のように「この冊子のこのあたりに書いた」とか、並行参照したいところに指をはさみながら瞬間で行き来したりとか、ぼんやりぱらぱら眺めたり、というのは、アナログに分があります。
②記憶に残りにくい
これは人によるかもしれないんですが、デジタルで入力したものは記憶に残りにくいように思えます。逆に記憶に残したくないことをまとめるには有用です。
③存在がデバイスに依存する
これも地味に大変なところです、書き込もうとしてiPhoneのバッテリーや電波がない→とりあえずメモ書きする→なくす といったこともあります。ありました。アプリでは開発終了してしまってOSのアップデートについていかなくなる、ログのエクスポートもできなくなって死蔵、というルートもあります。
④テンプレートやフォーマットを新しく作るのにコストがかかる
思い立ったらすぐに自由に線をひいたり図を作ったりできるアナログに対して、デジタルの手帳、スケジュールツールでこれをやろうとするとコストが高かったり、そもそもできないのでツールのフォーマットに自分を適合させていったりする必要があります。
アナログとデジタル まとめ
感情をのせたいものはアナログ、そうでないものはデジタル
いろいろとメリットデメリットを列挙してみましたが、ざっくりまとめると「感情を乗せて記録したいものはアナログ、そうでなくデータベース的に蓄積したいものはデジタル」というところかな、と考えています。
例えば「家計簿(これも広義の手帳と考えています)」。
淡々とデータをとって分析、改善したいならgoogleスプレッドシートや家計簿アプリが良いでしょうし、楽しく記入したい、買い物の思い出も記録していきたい、といったことならアナログの家計簿のほうが良いでしょう。
また、どちらがどうということもないけどアナログでやることにした、デジタルでやることにした、というものについても、アナログには感情が乗りやすくデジタルにはデータベースの側面が出てくる、というところは自覚的でいたほうがよさそうです。
手書き文字の効用
感情が乗るものはアナログでデータがデジタル、というところの私なりの根拠の話です。
私は紙やウェブのデザインをする仕事をしておりますが、手書き文字とフォントの文字の違いを感じることが多々あります。
例えばポスティングのチラシや、書店のポップ。
これ、パソコンできっちりつくるのだけが最適解ではなくて、あえて全部手書き文字で制作する、というワザがあります。
手書きの文字だと文章が情報だけでなく、書き手の人格というか感情が読み手に想起されるんですね。
親しみをもってもらいたい、個人系学習塾だとか個人商店だとかは手書きチラシのほうが反応率(配ったチラシに対する問い合わせ率)が上がるというデータがあります。
大手のムックなどでは、販促品として店員が手書きポップを書いてる風の印刷済みポップを添えて出荷していたりもします。
逆に整理収納アドバイザーなどが収納場所のラベルとして推奨するのがテプラやピータッチといった、文字が印刷されるラベル。
これは見た目がきれいで均一だからというだけでなくて、家族にもその収納場所に従ってほしい場合、お母さんの手書き文字だと「ここに入れろ」という圧になってしまいあまり従ってくれず、テプラだと単なる「ここに入れる」という情報になり、無心にそうしてくれることが多いのだそうです。
最近はやりのさらっとした手書き文字風のタイトル、よく見ますよね。あれは手書き文字による「これはエモエモなやつですよ」というアピールになってるわけですね。
アナログとデジタルの最大の違いは、この、手書きの文字かそうでないか、というところに集約されるかもしれません。
なのでiPadなどによくある手書き系ノート、手帳アプリは、一覧性は低いけれどアナログ寄りのアイテムなのかもしれません。
仕事で使うのであればデスクワークかどうかでも異なる
パソコン仕事ならアナログ手帳よりパソコンでも編集できるツールのほうがスムーズに記入できていいかもしれません。やっぱりgoogleカレンダーが最強です。あと少し昔の仕事術みたいな本だとoutlookを使ってたりもしますね。
このへんは会社のセキュリティポリシーにもよるところもあるかもしれないです。
逆に勤務中にPCやスマホを触れない仕事であれば、アナログ一択になりますね。
集中力が切れやすいならアナログに集約したほうがいいかも……
私はパソコン仕事なうえ目的はデータベース作りなので上記の理屈でいうとデジタル一択なのですが、「パソコンで仕事以外のことをすると気が散る」「プライベートでもスマホとかで記入しようとすると流れるようにSNSにダイブする」ので、アナログ手帳にしています。
音楽もスマホ使ってるとザッピング的な動きをしてしまうのでCDプレイヤーをあえて使ってるくらいです。
むかーしのPDAみたいな、スケジュールに特化した、ネットにつながらない端末とか使ってみてもいいのかもですけども迷ってるところです。
以上で抜粋おわり
こんなかんじの本をてちょぶんで出せるように進めてます。
現物はもうちょっと図解とか記入例とか入れたい。
Twitterの「#てちょぶん祭り」タグがいろいろ支度してる人いて楽しいです。まだ出店も受け付けてるみたいですよ。
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