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KADOLABO 003 Dive in the Wild


諸言

ビール醸造過程において、酵母は麦汁に含まれるグルコースやマルトースを資化してエタノールと二酸化炭素を生成します。また、同時に副産物として生産されるアミノ酸、脂肪酸、エステル類、硫黄化合物、有機酸、高級アルコールなどはビールの香りや味わいを大きく左右します。酵母の菌種や菌株によって糖の資化性や副産物の生成バランスが異なることから、酵母の選択は醸造酒の特徴を決める重大な要因であると言えます。近年では、消費者のニーズが多様化しており、従来のビールとは異なる香りや味わいのビールを求める人が増えています。そのため、ビールメーカーは、新しい酵母を開発したり、従来の酵母を改良したりして、より多様な味わいのビールを造り出しています。
近年では従来のSaccharomyces属酵母には無い二次代謝産物を生成し、醸造酒のフレーバーに肯定的な影響を及ぼすnon-Saccharomyces属酵母と称される酵母が注目されています。
例えば、Lachancea属酵母は、グルコースを資化して乳酸発酵を行うという特徴を持っており、サワービールの醸造に適した酵母となっています。
そこで今回は、自然界から単離したSaccharomyces属の酵母とnon-Saccharomyces属の酵母でビール醸造することを試みました。

方法

初めに、自然界から酵母を単離するために、森の中に入り、樹液や花を採取しました。樹液や花を、5%エタノール含有麦汁の中に入れ、25℃で2日間培養し、YPM培地に画線培養し、得られた菌を単離しました。単離した酵母を麦汁にいれ、発酵させ、attenuation試験と官能試験を行いました。単離した酵母の中には、乳酸を生成し、バラのようなフローラルな香りを生成する株が得られたため、遺伝子シークエンスを行いました。結果、Lachancea thermotoleransという種類であり、WLT-1 (Wild Lachancea thermotolerans-1)と名づけました。attenuation試験の結果、マルトトリオースを資化することが出来ていなかったので、共発酵を行うことにしました。共発酵を行う株は、弊社の看板酵母でもあるKadoya-1です。
Kadoya-1はバナナ様の香りとヨーグルトっぽい香り、少しスパイシーなフレーバーを生成することから、乳酸を生成する酵母と相性が良いと考えました。
麦汁にWLT-1をピッチし、乳酸生成とバラの香気成分生成を行いました。十分に乳酸とバラの香りを感じたら、発酵麦汁にKadoya-1をピッチし、共発酵を行いました。
発酵後期にCitraを5g/Lドライホップし、発酵が終わり次第、冷却と熟成し、ビールをパッケージングしました。

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