「ウニ」
WEDNESDAY PRESS 040
淡路島の赤ウニがうまい季節なってきた。
ミョウバンを使わないそれは苦味がなく、一瞬にして口の中から消え去り甘みだけが残っている。
ウニは「雲丹」と書くことが多い。
しかし、これはどうやら食用となった時に使うようだ。
むしろ「海胆」や「海栗」と辞書には表記があり「雲丹」と書くこともある、と。
海胆には多くの棘があり、毬栗のような形をしていることから「海栗」と書かれるのである。
死ぬとその棘が取れてまんじゅう形の殻だけ残る。腹面には口、背面には肛門がある。口には大きな5つの歯があり、その形が五角錐で、それが中国のランタンに似ているので「アリストテレスの提灯」と呼ぶそうだ。
またかつて海中で現在地上の場所では海胆の化石が見られる。古代人にはこれが海産の動物とは思えず、雷と一緒に天から降ってきた石と考えられ「雷石」と呼ばれたこともあるようだ。おまけにこれは守護神や護符として珍重されたこともある。
そして「アリストテレスの提灯」という名称。
海胆の口には五角形をして、そのシンメトリックな姿が崇高なものとして映ったようだ。「五」という数字は、人間の五感にも通じ、古代ギリシアで尊崇されたペンタグラム(五芒星)もまた五角形である。これは火、水、土、金という4大元素に霊を加えた五つのエレメントとされた。五行説では霊の代わりに木が加わる。どちらにしてもシンボリックなことである。
というように海胆からさまざまな世界が見えてきた。
これもあの殻の美しさがなせることであろう。