「小さなかけ算」

WEDNESDAY PRESS 027

一年半ぐらい前に東京の某所で「吉田牧場✖️ドロワ✖️サカエヤ」という食事会を催した。岡山県の吉田牧場のチーズは料理人が競って使いたがる。そのチーズはブラウンスイスという牛から生まれる。食用に育てられた牛ではない。それを手当ての名手滋賀県南草津の「サカエヤ」の新保浩伸さんが仕上げる。そのブラウンスイスの肉を京都の新鋭「ドロワ」の森永宣行シェフが料理にするという概要であった。
まずはブラウンスイスの牛乳を飲むところから始まり、吉田牧場のチーズを使った種々の料理が出る。メインがブラウンスイスとなる。お客様は満足されたようなのだが、新保さんは手当ての期間が短いと感じられた。そこで昨年の6月に「ドロワ」で再びこの会を催した。メンバーは吉田牧場の吉田全作さん原野さん親子、新保さん、新潟「UOZEN」の井上和洋さん、鳥取「かに吉」の山田達也さん、京都「MOTOI」の前田元さんであった。この会は森永さんのホームグラウンドでもあり、新保さんもこの日に合わせて手当てをする。結果は大満足。そして「かに吉」は吉田牧場と知己を得て、昨年の冬には吉田牧場のバターを使う蟹料理が生まれた。「UOZEN」で時折使うガンジー牛が新保さんの手当てを受けるようになり、「MOTOI」の前田さんも「サカエヤ」に通うようになった。その数日後には京都の「チェンチ」というイタリア料理の坂本シェフなど数名がこの料理を食べ、昨年12月に「チェンチ」で「吉田牧場✖️チェンチ✖️サカエヤ」という食事会が生まれた。
その食事会に参加した「ドロワ」の森永シェフが興奮し、また熱くなってこの4月には同様に食事会となった。
最初は小さなかけ算だが、そこでまた色々なかけ算が生まれ、行くつもの新たな愉しみが生まれることを実感している。何も大きなコンセプトやテーマを掲げてやるのではなく、小さな組み合わせがきっと何かを動かす原動力になっているのだと思う。

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