「遊びの研究」
WEDNESDAY PRESS 037
ジャ―ナリストの立花隆さんがこの4月に逝去された。
昭和を代表するジャーナリストであり、僕の中ではいつも同じノンフィクションの世界で沢木耕太郎さんと並んで存在していた。
立花さんは、綿密な取材と資料を紐解きあらゆる世界に切り込んでいた。農協から田中角栄研究、宇宙船、先端医療などなど。一方の沢木さんはノンフィクションで「私」という存在を際立たせた書き手であった。立花さんはフィクションの世界に足を踏み入れることはなかったが、沢木さんは小説というジャンルでも活躍をみせる。
その立花さんが10回のシンポジウムのモデレーターを務め、その再録と評論が「遊びの研究」(三一書房)と一冊の本にまとまっている。
項目は
現代社会を考える
意識変化からみた現代
ヒトと人間
技術のもたらした功罪
旧い社会の崩壊と新しい社会システム
終末論的様相をどうとらえるか
遊び論の解体
わたしの<遊び>
現代人の<遊び>を考える
企業と<遊び>
と10本あり、それぞれにパネラーが参加する。
例えば「現代文化を考える」では山崎正和、合田周平、中村雄三郎、北沢方邦
「わたしの<遊び>」では黒井千次、野坂昭如
「現代人の<遊び>を考える」では寺山修司、虫明亜呂無、小中陽太郎
など錚々たる論客揃いである。
これをまとめる立花隆さんの力量にも驚くが、このシンポジウムは1972年10月からほぼ2年間にわたって開催されたもの。
その主宰は、なんとファッションメーカーのヴァンジャケットなのである。
時代が「仕事中心社会」から「遊び中心社会」へと移行し始めた時期で、それぞれのテーマで立花さんが仮説を立て、それを検証するというスタイルを取っている。ファッションを単に「衣料」としてとらえるのではなく生活を彩る「モノ」を扱う企業というメッセージもあったのだろう。
これらのテーマは今の時代でも十二分に通用するものだと思う。
それをファッションメーカーが主宰するのは難しいだろう。では、いかなる企業なら可能であろう。
そしてこれらをコーディネートする論客は一体誰であろう。
そんなことを考えながら、「遊びの研究」を再読していた。