徳島でi-GIPを始めたきっかけ

「徳島が大阪万博に持っていけるものって何?」不意に、久しぶりにお茶でもと誘った高校の友人に質問されました。自分は徳島が好きで、徳島中の楽しいスポットは知り尽くしたと言ってもいいと思いますが、大阪万博で披露できるような、新規性や未来感があって、世の中に役立つようなものを徳島から提案することはできませんでした。結局3時間ほど頭を悩ませ、現状どれだけ大阪万博に出展しようとしているプロデューサーたちが化け物たちかということを再認識しただけでした。

家に帰った後、自分で改めて大阪万博について調べてみました。すると、たまたますぐ後日に「徳島ビジネス チャレンジメッセ」で“大阪万博が目指すもの”というフォーラムが開催されるというではないですか。徳島も捨てたもんじゃない、私は早速そこに申し込み、フォーラムの様子をリアルタイムでみさせてもらいました。そこにはVR、AR、ドローンはもちろんのこと技術の粋を集め作られたような洗練された建造物、陸上海上の次は空中にでもその歩みを進めんとするが如く伸ばされた空の遊歩道、ただの木からも変わらない、変えてはならない不変的な存在を暗示する自然の素晴らしさ、またこれから目指すSDGsの片鱗を感じさせました。私たちが特に驚いたのは大阪万博の構想では他の国の万博とは異なり自分の国を一番大きく、目立つ場所に位置させるといった国家間の優位性を示す画策が行われていなかった点です。これは中央集権的な1極の強さではなくこれからは地方分権的な世界になることを示唆している、と感じさせました。どのみちこの示唆は徳島に住む私の心を強くうちました。また同時にコンセプトが「未来への実験場」であり、テーマ、サブテーマが「いのち」に関連づくものであることは医学生である私に対してのメッセージだと受け取りました。そう錯覚してしまいそうになるほどこの時代、この場所でピンポイントに大阪万博が飛び込んできました。私たちは未来のために何かしなくてはならない。その思いで、まず徳島で自分に何ができるのか考えてみました(当時4年生だったのでCBTの勉強と並行して悪戦苦闘して進めてました)。

そして、徳島の課題を、進行する少子高齢化と若者の活躍の場の少なさだと仮定し、それを解決する策として万博に出しても恥ずかしくない徳島の未来を想像しました。私が、最終的に作っていきたいのは「循環する社会」で、そこではお金や物だけでなく「人」とその人に付随する人脈であり、資産であり、技術、を循環することができる社会です。それらを次世代に受け継いでいくことのできる、若者と高齢者双方が活発にシームレスに社会に参加していくシステム作り、を徳島が今目指すべき、そして無謀にも大阪万博に提案すべき理想像と考えました。

そのために何が必要か。

それは「徳島にいる若者が徳島で活躍する面白い大人を知ること」です。

また、「大人が徳島で開花を待つ蕾を見つけること」です。

だから今、長期間のフィールドワーク×コンペティションが必要なのです。

順を追って説明します。

私もその1人でしたが「徳島にいる若者」が徳島の大人を知らない理由はなぜでしょうか。それはその大人に会う"時間"と"接点"と"意味"がないからです。受験勉強で忙しく、学校と塾と家の往復になりがちな中高生にどんな人かもわからない、なんのために会うかもわからない大人と会う時間はありません。また、そもそも会うきっかけがありません。

これは大人側にも言えることだと思います。

大人にも当然自分たちの仕事があり、学生、いわば子どもの相手をしている時間も意味も、またそもそも接点もないと思います。

しかし、これを「しょうがない」で終わらせてしまっていては徳島の終わりが近づくだけです。

私は、徳島が抱える、少子化に直結するこの課題を解決すべく

「若者と大人がお互い興味を持って接する機会を作る」

ことを目標にしました。

私自身高校の時に言えたことですが、興味のない、自分に関係のない人と対面している時こそ、恥ずかしい時間はありませんでした。何を話せばいいかもわからない、向こうは何かしらの仕事をしている人で自分が時間を浪費させてしまうのは申し訳ない、それぐらいの考えで何もできず、挨拶だけで終わっていました。

対して、大人もそうだったのではないでしょうか。なんの変哲もない子供が来たところで何を話すでもなく、かわいいねぇ、勉強熱心で偉い、などと当たり障りのない言葉でその場を取り繕ってごまかしていたと思います。憶測ですが。

そこに、ワンスパイス、「目的」を挿入するとどうなるでしょうか。

例えば、「テクノロジーとコミュニティーの力で新しい産後うつ予防を考えよ」というミッションが課されたとします。この場合社会のヘルスケア課題を解決に導く、ということなのでもしかしたらメディカル系を志望する学生にとっては大変意味のあることかもしれません。内申が上がるかもしれません。テクノロジー分野も加味されているのでAI・ロボット関連に興味があるの人にも刺さるところはあるのではないでしょうか。と、このように、上にあげた活動する"意味”が作られます。

次に時間です。

そもそも学生にとって一番時間を消費しているものはなんでしょうか。もちろん勉強です。理科、社会、国語、数学、英語、その他、で毎日の生活が占められていると思います。その中で、産後うつを考える時に必要になってくる知識はどこにあたるでしょうか。統計を使う場面もあります(数学)。相手に説明するために文脈や文意を汲み取る機会もあるでしょう(国語)。英語の論文もどうやら読まなければならないようです(英語)。新しい解決策には物理的なアプローチが有効かもしれません(理科)。そもそも産後うつを行政はどう解決しているのでしょうか(社会)。と、勉強に当てる時間をここに置き換えて考えることで勉強に割いていた時間をこのミッションに使うことができます。

そして、最後に"接点"をどう作るか。

私たち大学生が作ります。

大学生は何者でもない境界人だからこそ、どこにでもいけるし、何者にもなれるのではないでしょうか。一度大人になってしがらみに囚われた大人のために分野横断的にいろいろな接点を作り、これを中高生にシェアすることで中高生が作ることのできなかった"接点"が生み出せると信じています。

対して、大人側にとってはどうでしょうか。何かメリットはあるのでしょうか。

時間・意味・接点:メールでアポイントをとって会うとします。自分のやっている仕事に興味を持って会いに来てくれた学生、しかも質問まで用意してくれています。ちょっと無碍にできません、よね(希望的観測)。そして、1時間程度、お昼ご飯を食べている間の時間をいただいて若者の文化に触れるというのはもしかしたら新鮮な風を吹かせてくれるかもしれません。もしかしたら将来この学生が大人になって良いつながりを生んでくれるかもしれません。あくまでかもしれないという希望的観測なのですが私たち大学生が大人の時間を無駄にしないよう、あらかじめ対策を打っておきます。

このような形で大人にとってもこの出会いを時間のある時に、意味あるものとして扱ってくれる人にお会いできたらと思ってます。

そのような活動がi-GIPだと感じます。

この活動を通して、未来のあり方を考え、若者の力で、いのち守る社会を創り、地の利を活かして徳島をアップデートしていきます。

私たちは、いのちをただ生きている状態ではなく、「生きる」権利を妥協することなく全力で享受している状態、と考えます。その権利を行使し、全ての人間の能力がのびのびと発揮される社会こそがいのち輝く未来社会にふさわしい社会ではないでしょうか。そして、現在超少子高齢社会に突入する徳島、ひいては日本はその課題をいの一番に挑戦し、ある種「実験的」に政策、企画を試みることができます。

「若者の力でいのち守る社会を」

そして、若者が徳島で徳島をアップデートできる未来を。

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