【新刊案内】『アメリカン・ボーン・チャイニーズ』
弊社では先月、『アメリカン・ボーン・チャイニーズ――アメリカ生まれの中国人』(ジーン・ルエン・ヤン作/椎名ゆかり訳)を刊行しました!
ここで突然ですが、奇才カウフマンの監督作品、
『脳内ニューヨーク』
って見たことありますか?
これは、劇作家の主人公が、「マッカーサー・フェロー賞(通称:天才賞)」を受賞したことで、彼の脳内にあるニューヨークを、ものすごい規模のセットの中に建設・上演していくという話です。
そんな、とてつもないことも可能にする(可能性のある)マッカーサー・フェロー賞は、各分野から年間30人程度が選ばれ、5年間にわたって、各人に総額7000万円近くの奨学金が振り込まれます。
『アメリカン・ボーン・チャイニーズ』の作家、ジーン・ルエン・ヤン(1973年生まれ)はこの賞の(まがうことなき)受賞者です。
さらに、アメリカにおける中国系移民の出会う差別や、アイデンティティの問題について描いた本書、『アメリカン・ボーン・チャイニーズ』は、グラフィックノベルとして初めて全米図書賞の最終候補になりました!(全米図書賞は、おととし、多和田葉子さんが翻訳文学部門で受賞したことでも話題になりました。)
そんな、なんともスゴそうな書籍ですが、いったいどのようなお話なんでしょう……? 魅力を少しお伝えいたします!
本書に登場する主人公は3人。
孫悟空(画像はp.8より引用)
中国系移民2世の、ジン・ワン(画像はp.27より引用)
そして、
白人の高校生、ダニー(画像はp.46より引用)
です。この3人の物語が、別々に展開しつつ、思いもかけないかかわり方をしてくのが、この本、最大の見どころです。
映画「パラサイト」もビックリの衝撃の結末は、ぜひ秘密になさってください!
ここでは、ジン・ワンの話を中心にご紹介いたします。
両親がアメリカで出会い、チャイナタウンで育ったジン・ワンは、上のコマのように、トランスフォーマーになりたいと願う男の子。
そんな彼が、アジア系のいない小学校に転向してくるところからジン・ワンの話は始まります。
(p.30~p.31より引用)
上のような無理解にさらされつつ、ジン・ワンは中学生になりますが……
(p.94より引用)
彼がどのような系譜をたどるのか、どうやって孫悟空と関わる(?!)のか、詳しくは書籍をご覧ください!
また、この本最大のインパクトを与えるキャラクターは
中国から来たダニーのいとこ、チンキ―です!
(p.48から引用)
注意したいのは、「チンキー」の原文は「Chin-Kee」ですが、「chinky」だと中国人を表す侮蔑語であるということです。
ジーン・ルエン・ヤンは、わざと、中華系に対するステレオタイプや差別を体現するキャラクターとして、チンキ―を登場させています。
また、お気づきになった方もいるかもしれませんが、上のコマのように、チンキ―の登場箇所などには、シットコム(アメリカのコメディードラマ)のように拍手や、歓声などが書き加えられています。
それがどういう効果をもつかは、まずは本をお読みになられたあと、巻末に収録した、訳者の椎名ゆかり先生による素晴らしい解説をご覧ください。
……と、説明しようとしてみても、かえって謎が深まる『アメリカン・ボーン・チャイニーズ』。ともかく一度お読みください!
全国書店さんほか、以下のネット書店などでもご購入いただけます。
https://books.rakuten.co.jp/rb/16153778/?scid=af_pc_etc&sc2id=af_101_0_0
すでにお読みになられた方は、マンバ通信さんなどでのご感想もお待ちしております!
*画像はすべて、ジーン・ルエン・ヤン作/椎名ゆかり訳『アメリカン・ボーン・チャイニーズ――アメリカ生まれの中国人』(花伝社、2019年)より引用。無断転載禁止。