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【メンバー学習会レポート】算数研究会~小1での足し算と引き算~

 北海道札幌市を中心に「環境に左右されない楽しい学びの場をすべての子ども・若者へ」をミッションとして掲げ、学習支援と居場所づくりをしている認定NPO法人Kacotam(カコタム)
 活動の中でのボランティアメンバーの「困った」を解消していくための取り組みとして、2021年11月~2022年2月にかけて行われた「算数研究会」に参加したメンバーが感じたことをまとめました。

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 学び支援マネージャーとして複数のスタサポ拠点やゆるきちで活動している”わたるん”からのレポートです。わたるんが、算数研究会で得た気づきとは何だったのでしょうか?

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 算数研究会が発足した理由のひとつの「困った」として、「小学生がどの学年でどこまで教えられているかがわからない。。。」というのがありました。

「小学生って移項していいんだっけ?言葉使っても良いんだっけ?」
「そもそも足し算・引き算ってどう教えられてるの?」
「約分ってしなくてよかったんだっけ。。。?」
などなど。

 そんなこんなで、算数研究会は「小学生の各学年で何を学習するか」をまとめることを行いました。今回作成した小学校の各学年で何を学ぶかを一覧にした「学年配当表」は非常に良いものになったなと今見返しても思います。

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 さて、「小学生が各学年で何を学習するか」をまとめることも重要ですが、「どのように学んでいるか」も重要です。学校教育において「どのように学んでいるか・どのように教えられているか」を参照するの役立つ資料の一つが学習指導要領解説です。

 小学校学習指導要領(平成29年告示)解説を参照しつつ、学年配当表をまとめていると、小学1年生では「一ケタ(一位数)と一ケタの足し算および引き算」を取り扱い、その中では、3 + 5 = 8 のような 1ケタ + 1ケタ = 1ケタ もあれば、8 + 7 = 15 という 1ケタ + 1ケタ = 2ケタ になる式、いわゆる繰り上がりのある計算も扱うとありました。

 しかしながら、小学1年生では「繰り上がり」「繰り下がり」という言葉・概念は取り扱われないことになっていました。つまりは「繰り上がり」という言語を用いずに説明しなければならないということです。これが実に難しく面白い。算数研究会が発足した理由にも思えます。

 学習指導要領解説では、以下のように述べられています。

 1位数と1位数との加法とその逆の減法については、和が 10 以下の加法及びその逆の減法と、和が 10 より大きい数になる加法及びその逆の減法に分けて考える。和が10より大きい数になる加法及びその逆の減法は、「10 とあと幾つ」という数の見方を活用して計算する。
(『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説』より)

 つまり、10より大きい2ケタの数は、10を基点とした上での計算を行うことが定められています。

 具体例を示せば、先に出した計算で言うと 8 + 7 = 15 という計算は速やかに行わず、8 + 2 + 5 と言う具合に、7 を 2 + 5 と分解し、8 と 2 を組み合わせることで10をつくることを優先するということです。

 考えてみれば、繰り上がりであることに変わりはありませんが、これが繰り上がりの概念を形成する上での地盤となります
 この加えられる数に対して10を作るために加える数を分解して計算する手法は、一時期「さくらんぼ計算」と呼ばれ用いられていました。実際、私もさくらんぼ計算法を用いて学習をしていた記憶があります。さくらんぼ計算は減法にも用いることができます。
 14 - 8 は、14 - (4 + 4) = ( 14 - 4 ) - 4 = 10 - 4 = 6と言う具合になります。14から4を引いて10にするために8を4と4に分解しています。

 では、なぜ、このさくらんぼ計算のような10を基点に考える計算法が用いられているのでしょうか

 宇野ら(2013)は、小学1年生における計算学習の現状と課題を教員及び児童への調査から導き出しました。その研究では、繰り上がり・繰り下がりのある計算学習における児童のつまずきと、それに対する指導法の検討を目的として調査を行なっていました。繰り上がり・繰り下がりにつまずく児童は数の合成・分解の理解に課題を感じており、そのつまずき・課題に対する視覚的な支援方法の一つとして「さくらんぼ計算図の工夫」が挙げられていました。
 数という基礎的な概念を理解するための手立てとしてはブロックを用いるなどすることも挙げられ、その意味でさくらんぼ計算図は立式における数の分解を支援する方法であることが言えます。

 では、なぜここまで10という数字が重要視されているのでしょうか。これは日本をはじめ世界で十進法が用いられていることが理由であり、人の手指の本数が10本であることに起因すると考えます。10を一つのまとまりとして見ることで頭での処理を簡単にしているのであろうと推測できます。

 小学1年生の算数では、ものを数として捉えること、その数を操作することが目標として挙げられています。私たち大人は至極当然のように扱っている数でも、小学1年生には理解が満ちていない児童もいます。その中で教育はどう工夫され、小学生らはどのように学び、感じているのでしょうか。

 それらを研究し調査していくのが算数研究会の活動目的なのだろう。。。算数研究会の行く末はまだまだ終わらない。。。

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