ラングストン・ヒューズ詩集『One-way Ticket』(1949)
「民主主義」
民主主義は やってくるまい
今日も 今年も
いや永久に
妥協や脅迫をとおしては
ぼくだって 他のやつ同様
ぼくの両足 ふんまえて
立ち
自分の土地を所有する
権利がある というものだ
<ものごとは なりゆきにまかそうよ
明日には 明日の風が吹く>
こんなことは 聞き飽きている
死んでから ぼくは 自由に用はない
明日の糧では 今日は暮れない
自由
とは 強い種子だ
必要に迫られて
植えつけられた
ぼくだって ここに生きてる
ぼくも 自由が欲しいのだ
あなたがたと同じく
「片道きっぷ」
ぼくは 生命を 拾いあげ
で 肌身につけて 持ってゆく
で ぼくが それを 置くとこは
シカゴ デトロイト
バッファロー スクラントン
どこでもいい それが
北部と東部ならー
でも 南部諸州は いや
ぼくは 生命を 拾いあげ
で それを持って 汽車に乗る
ロサンゼルスへ ベーカースフィールドへ
シヤトルへ オークランドへ ソールト・レークへ
どこでもいい それが
北部と西部ならー
でも 南部は いや
もう たくさんだ
人種差別法なんか
残忍で それでいて
怖がりで
リンチをしては 遁げていく
ぼくに怯える連中も
で 奴らに 怯えているぼくも
ぼくは 生命を 拾いあげ
で それを持って 遠くへいくんだ
片道きっぷ でー
北部へ消えて
西部へ消えて
消え失せる
『片道きっぷ』訳者:古川博巳(1975・10・05初版/国文社刊)
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