ぼくは書物と図書館と本屋が好きだ。そこにバーボンの一杯でもあれば云うことはない。
ウィリアム・コツウィンクルの『ホット・ジャズ・トリオ』(訳:橋本槙矩/福武書店刊)が、ハチャメチャで実にいい!という話。
はじめての著者。
プロフィールによると、1938年生まれのアメリカの作家。
色々な職業を転々としたのち、ヴォネガットやブローティガンに比肩する作家と評されるようになったとあるが、不勉強で申し訳ない。
創作活動の領域は、詩集、児童文学、SF、映画のノベライズなど。
ノベライズは「ET」だと思われる。
『ホット・ジャズ・トリオ』は、1989年にひとつの中編、2つの短編を集めて出版されている。
時々覗いている書評サイトをパラパラ見ていると、“ジャズ・トリオ”の文字。
JAZZ好きとしては見過ごせない。
書評の筆者、牧槇司さんの紹介文はいつも面白いのだが、ざっと書いてある物語の内容が、なんというか、それ以上にぼく好みで、わくわくさせられる。
まず、目に飛び込んできたのが、ジャンゴ・ラインハルト。
ご承知の通り、伝説のミュージシャン。ベルギー生まれのロマ、ジプシーだ。
ジャンゴに影響を受けたジャズミュージシャンは数知れず。MJQ(モダンジャズカルテット)が彼に捧げた「ジャンゴ」は超クール。いま聴いてもこころときめく。
さて、舞台は爛熟のパリ、モンパルナス。
主人公は、奇術師ルブラン。箱を使った消失マジックで人気を博していたが、ある夜、アシスタントのロリ―が本当に消えてしまう。
ルブランに助けを求められたジャンゴのトリオ三人と、“爬虫類のような目”をしたジャン・コクトーや、エリック・サティ、ピカソ、アンドレ・ブルトンなど、こんな人たち、やたらと登場させちゃっていいのか?!
小心なぼくは、カーテンの影から事の顛末を、手に汗握ってそっと見守るばかり。
どうやらマジックの箱が謎解きの鍵のようで、異界への入り口か!と思ったら、著者に人格を与えられた箱の恋心が、ミステリーの始まりで、謎解きの鍵だった。
ドタバタ劇と云えなくもないが、エンターテイメント作品として十分楽しめる一作だと思う。
箱に人格。
ライアル・ワトソンの『シークレット・ライフ』(1995年/筑摩書房)を長く愛読しているぼくには、なんとなく解かる。
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