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【企業分析】デルタ航空

DAL (NYSE)
時価総額:200億ドル
株価: 32ドル
売上高: 300億ドル
営業利益: 19億ドル
(2021年)

事業内容: 航空会社
設立年: 1928年、2007年上場
本社: 米国🇺🇸ジョージア州アトランタ
代表者: Ed Bastian (CEO) 、C.E. Woolman(創業者)
従業員数: 83,000人

概要

デルタ航空(Delta Air Lines, Inc.)は、アメリカの航空会社で、ジョージア州アトランタ市に本社を置いています。

世界約50カ国、300以上の都市に運航しています。

社名は、ミシシッピ・デルタにちなんで付けられたものです。現存するアメリカのエアラインでは最長の歴史を持ちます。

デルタ航空アトランタ本社

日本の航空会社と提携していないため日本での知名度はそれほど高くありませんが、米国ではトップクラスの知名度と歴史がある航空会社です。

創業は1924年、コレット・E・ウールマンが始めた旅客サービスから始まり1941年にアトランタに移転。現在では全世界で9万人の従業員を雇用し800機以上の主要機材を運行しているメガキャリアの1つです。

アメリカの航空会社ではアメリカン航空、サウスウエスト航空、ユナイテッド航空と並び世界最大規模の航空会社になります。運航都市は世界50カ国以上、アメリカ国内はもちろん、日本を含めたアジア諸国、アフリカ、中東、アセアニア、ヨーロッパ等、全世界をつなぐハブとして機能しています。

年間の塔乗客数は1億8,000万人以上、1日の便数は5,000便もの数に昇ります。また、航空連合「スカイチーム」の創立メンバーであり、エールフランス、アリタリア、ヴァージンアトランティック航空とともにアライアンスを結成、共同で事業展開を行っています。

2008年に当時同じくチャプター11を申請していたノースウェスト航空と経営統合をして、現在のデルタが誕生しています。 アジアでは中国東方航空と大韓航空と提携しています。

現在ではメインハブ空港であるアトランタ国際空港をはじめ、ハブ空港からアメリカ国内および世界各地に向け、 国際線はヨーロッパ・アジア・カナダ・ラテンアメリカ・アフリカ・オセアニアに就航しています。

2009年7月よりオーストラリアに新規就航を果たし、世界でも6大陸すべてに就航する数少ない航空会社となりました。

旅客運送数および旅客キロ数で、アメリカン航空に次ぐ世界第2位の大手航空会社です。

プロダクト・ビジネスモデル

航空セグメントと、精製・供給セグメントの2つの事業セグメントを通じて事業を展開しています。

アムステルダム、ロンドン-ヒースロー、メキシコシティ、パリ シャルル・ド・ゴール、ソウル-仁川にハブ空港を有し、市場で存在感を示しています。

航空セグメントは、米国および世界各地に旅客と貨物の定期航空輸送を提供する単一事業体として運営されており、ロイヤリティ・プログラムおよびその他の航空関連付帯サービスを含みます。

デルタ航空のボーイング

精製・供給セグメントは、自社で生産したジェット燃料及び第三者との契約により入手したジェット燃料を航空会社に供給することにより、航空会社の便益のために運営しています。

精錬所では、ジェット燃料のほか、ジェット燃料以外の製品も生産する。また、貨物事業や整備・修理・分解(MRO)事業など、補完的な事業も行っています。

完全子会社のMonroe社がフィラデルフィアで運営する製油所の収益が帰属します。燃料精製を自社で行うことでコストを削減できるのでしょう。外部航空会社への販売もしています。


売上構成

売上高の8割弱は北米での旅客です。

乗客の定期航空旅客便からの収入が最も大きくなっています。

その他
他の航空会社へのジェットエンジン燃料の精製販売、航空機整備の受託、マイル交換収益が含まれます

デルタ航空の強み

・テクノロジー

デルタ航空は、ファスト・カンパニー誌の「2019年世界で最も革新的な企業」に2年連続で選ばれました。アップル、マイクロソフト、グーグル、ロケットラボなど先進的IT企業が名を連ねるなか、唯一の航空会社となりました。

 デルタ航空が2018年に導入した空港ターミナルの生体認証技術と、フライトの安全性と快適性を向上する革新的な気象予報アプリにより、旅行業界ランキングでは昨年より順位を4つ上げ、2位を獲得しました。ファスト・カンパニー誌は、「(生体認証は、)チェックインからゲートまでの移動を著しく簡単にした」と評価しています。

デルタ航空の最高運航責任者、ギル・ウェスト(Gil West)は、次のように述べています。「デルタ航空にとってテクノロジーは、従業員に次ぐ強みです。私たちのチームは、大きく考え、小さくスタートし、早く習得するという能力を備えていて、お客様の声を聞き、お客様の要望に迅速に応えるために、テクノロジーと画期的なプロセスを設計することができます。」

・スカイチーム アライアンス

アライアンスとは、本来は「同盟」や「提携」を意味し、航空用語としては「航空連合」のことを指します。具体的に言うと、本来は別々の航空会社が業務提携を行うことで行われるマイレージサービスの共通化や相互乗り入れなどがアライアンスを通して行われます。

マイレージサービスが共有化された状態では、ある航空会社のマイルをそのアライアンス内の別の航空会社でも利用できるようになります。

現在の世界には、3つの大きなアライアンスが存在します。それはスターアライアンス、ワンワールド、スカイチームです。アライアンスは、航空業界における規制緩和や競争激化により、世界規模で航空会社同士のグループ化が進んだことにより誕生したとされています。

そのようなアライアンスの歴史の中で、最も古いものがスターアライアンスです。ドイツのルフトハンザ航空やアメリカのユナイテッド航空などが加盟しています。日本ではANAがスターアライアンスに加盟しています。

続いて、誕生したのがワンワールドです。このアライアンスは、アメリカのアメリカン航空や香港のキャセイパシフィック航空などによって設立されました。日本ではJALがワンワールドに加盟しています。

3つ目のアライアンスがスカイチームです。スカイチームには、アメリカのデルタ航空などが加盟しています。

スカイチームに加盟する航空会社

スカイチームは2000年6月に、デルタ航空、エールフランス、(フランス)、アエロメヒコ航空(メキシコ)、大韓航空(韓国)の4社によって設立されました。現在はこれらに加え、合わせて19の航空会社が加盟しています。(2019年1月現在)スカイチームも他のアライアンスと同様に、マイルサービスの共有化や、一つの定期航空便を複数の航空会社で共同運航するコードシェア便の実施などを行っています。

なお、全日空(ANA)はスターアライアンスに、日本航空(JAL)はワンワールドにそれぞれ加盟しています。そのため、日本の航空会社で、スカイチームに加盟している会社は今のところはありません。(2019年1月現在)

スカイチームの特徴とは?

スカイチームの特徴はいくつかあります。まずは、加盟する各社の航空券の価格が比較的安いことです。チャイナエアラインやベトナム航空などは特にその傾向があり、格安のパッケージツアーなどでよく利用されています。

また中国でのネットワークに強いこともスカイチームの特徴として挙げられます。スカイチームには、先ほど挙げたチャイナエアラインの他にも、中国東方航空やアモイ航空といった中国を拠点とする航空会社が所属しています。

そのため、中国の各地同士を結ぶ便が充実しており、また、日本の都市と中国の都市を結ぶ定期便も複数就航していることなども強みです。
このようなことがスカイチームのメリットだと言える一方で、デメリットと呼べるような部分も存在します。それは、中国方面のネットワークに強い一方で、アメリカやオーストラリアへの便に関しては弱いことです。

スカイチームには、アメリカからはデルタ航空しか参加しておらず、オーストラリアからはどの航空会社も加盟していません。そのため、それらの地域に向けて飛行機を利用するときに、スカイチームでは選択の余地がないと言えます。

スカイチームのラウンジとデルタ航空のゴールド会員

スカイチームは世界各地の都市に就航しており、その各地において国際線ラウンジを提供しています。スカイチーム加盟の航空会社で上級会員になれば、それらのラウンジを利用することが可能になりますが、それぞれの航空会社における上級会員の条件は異なっています。

デルタ航空のゴールドメダリオン会員は、スカイチームの他の航空会社でも上級会員としても扱われるという仕組みが存在します。

ラウンジは、食べ物や飲み物を無料でとることができるなど、飛行機に乗る前にゆっくりとくつろげる場所となっています。各ラウンジによって、提供されているサービスや設置されている設備は異なりますが、場所によってはWi-fiやマッサージチェアなども完備されています。

スカイチームに加盟する各社は、共用ラウンジあるいは提携ラウンジという形でラウンジを提供しており、それぞれの航空会社のビジネスクラスなどに搭乗する場合でも利用が可能です。

長期的な投資に対するデルタ航空の信念

デルタ航空では長期的な投資の方針を決める3つのシンプルなフィロソフィーを持っているそうです。それは、

① 人財=従業員
② 新しい機体やテクノロジー
③ 変革・改革の取り組み

です。

デルタ航空の戦略推進力は従業員を大切にする文化から生まれています。このことは、デルタ航空が従業員満足度、顧客満足度の第三者調査において、多く上位にランキングされていることでも証明されています。

デルタ航空は、「良い人財が良いサービスを生み、良いカスタマーエクスペリエンスを経験した人がまた良い人材に良いフィードバックを送る循環」を大切にしています。

デルタ航空が考える心に残る「ブランド体験」とは?

現在の世界では、1日に5,000便の飛行機が飛んでいるそうです。その中で、心に残る航空会社、次も選ばれる航空会社になるためにはどうすればよいでしょうか?

一日のうちに顧客が接するブランドは多数あります。その中で「想い」「気持ち」が残るブランドだけがまたリピートに繋がります。例えば、ディナー席で印象に残った体験としてデルタ航空の利用が語られるようになることが目標だそうです。

顧客が話題にするのは、「とても嫌な思い」か「とても良い思い」だけです。普通の印象では話題に上がることはありません。デルタ航空は、顧客の心に特別に良い体験が残ることを目指して努力しています。

このような顧客体験の実現には何が必要でしょうか? 

デルタ航空では「未来のビジョン」を大切にしています。

例えば、「ミネアポリスからアトランタへ新しい家族して初めて受け入れられる犬を飛行機で運ぶ」といったチームが実現したい具体的なビジョンを想定しています。

実際にこのビジョンは、アトランタに住むずっと犬を飼いたかった父と、初めてのペットを迎える娘さんの家族に、子犬を運んで届ける機会がやってきたときに実現しました。 

常にビジョンを持つことで、このシーンへの準備が十分に出来ていたチームのサービスは、家族から『素敵な思い出をありがとう』と感謝を受け、娘さん=未来の顧客の心に強く残るイベントにすることができました。

デルタ航空では、このように1つ1つの顧客体験作りを積み重ねることを大切にしています。

顧客中心主義戦略の効果測定方法と成果

では、このような顧客体験は本当に売上に貢献しているのでしょうか?

デルタ航空では、ケーススタディから解決をすると、その12か月後には売上が上がることをチェックしているとのことで、講演内では実際の効果測定グラフも紹介されました。

PDCAを実践するポイントとしては、1日1日の売り上げや、1ドルに対しての相関のような、小さく短期的な結果を求めることはせず、12か月後の動向を見ているそうです。

特別に顧客の心に残るカスタマーエクスペリエンスを提供すれば、確実に顧客満足度やリピートとしてフィードバックがあり、よりよいビジネスができることは確実だと、ジョイス氏は自信をもって説明していました。

市場動向

世界市場シェア

エアライン・航空会社各社の2020年度の売上高を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして2020年のエアライン業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はアメリカン・エアラインズ、2位はデルタ・エアラインズ、3位はルフトハンザとなります。

激変するエアライン業界ですが、世界1位はアメリカン・エアラインズとなりました。前年1位のデルタ・エアラインは2位となりました。

3位は、ドイツのルフトハンザが入ってきています。それぞれ、ワンワールド、スカイチーム、スターアライアンスと属する航空アライアンスが異なります。4位にはユナイテッド・エアラインがランクインしています。2019年はアメリカを代表するエアライン3社が上位3位を独占する形となりましたが、2020年はルフトハンザが3位になりました。

世界5位と6位は、中国東方航空と中国南方航空です。7位はフランスとオランダのナショナル・フラッグが経営統合して誕生したエールフランスKLM、8位は再び中国のナショナルフラッグであるエアチャイナとなっています。

市場規模

調査会社リポートリンカーによると、2020年の同業界の市場規模は3326億ドルです。2026年には7440億ドルとなり、その間の年平均成長率は12.7%を見込みます。

エアライン会社の前年比売上高減少ランキング(2019年度と2020年度の比較)

世界市場シェア上位エアライン各社の売上高減少率を2020年度と2019年度の売上高で比較すると、1位はシンガポール航空、2位はブリティッシュ・エアウェイズ、3位はJALとなります。

シンガポール、イギリスともに国際便のハブ空港なので、海外移動が制限されている影響を最も強く受けた形になります。

エアライン各社の再編

LCCの増加を受けて、下図の通り、直近でも2018年にAlaska Airlines(アラスカ航空)がVirgin America(ヴァージン・アメリカ)を約26億ドルで買収や2015年のアメリカン航空がUSエアウェイズとの経営統合等、再編が相次いでいます。

またコロナの影響をうけ。2020年は南米最大手の航空会社であるLATAM航空会社、南米第2位のアビアンカ航空、タイ航空、フィリピン航空等の破綻が相次ぎました。

業績

売上高、純利益

キャッシュフロー

同社はネットワーク拡充を目指した同業他社のM&Aを行っています。

2005年 アトランティックサウスイースト航空をスカイウェストへ売却
2009年 ノースウェスト航空を買収

デルタ航空、営業利益14億5,600万米ドル 22年7〜9月期

デルタ航空は、2022年7月〜9月期の四半期決算を発表。2四半期連続で営業利益率は2桁となり、力強い需要の回復が鮮明となりました。

GAAP(米国会計基準)ベースでは、営業収益は139億7,500万米ドル、営業利益は14億5,600万米ドル、純利益は6億9,500万米ドル、営業利益率は10.4%。1株あたりの利益(EPS)は1.08米ドル、営業キャッシュフローは8億6,900万米ドルとなり、ハリケーン「イアン」による影響で下振れしました。

2022年10月〜12月期は、総収益は2019年同期比5〜9%増、営業利益率は約9〜11%、1株利益は1〜1.25米ドルを見込んでいます。法人需要がレイバーデー明けに改善していることや、海外需要が特に大西洋横断路線で2019年比12%増であることなどが追い風となっています。

プレミアム需要の増加が継続や、アメリカン・エキスプレスとの共同ブランドカードの支出増も後押ししています。

2023年夏までにネットワークを完全回復させる見通しで、収益性やキャッシュフローの大幅な改善を見込む。2024年のEPSは7米ドル以上、フリーキャッシュフロー40億米ドルを計画しています。

経営者 

創業

1929年にコレット・E・ウールマンらがルイジアナ州モンローで「デルタ・エア・サービス」として旅客サービスを開始しました(それまで農薬散布の会社)。

コレット・E・ウールマン (1889年10月8日 - 1966年9月11日))はC・H・マクヘンリー(C.H. McHenry)、トラヴィス・オリバー(Travis Oliver)、M・S・ビエデンハーン(M.S. Biedenharn)と共にデルタ航空の創設者4人のうちの1人です。

彼は物理学者の子息としてインディアナ州ブルーミントンで生まれ、イリノイ州アーバナで育ちました。

イリノイ大学在学中、1909年の第1回国際飛行大会を見学したことで、飛行機整備の手伝いをするまでになりました。1912年に農学の学位(B.A.)を取り卒業後、プランテーションで働き、コンサルタントになりました。

ダランド・ダスタース(Huff Daland Dusters)という農薬散布会社に参加し、副社長を経て、第2次世界大戦後には社長に選ばれました。

現在のCEO

Edward H. Bastian、(1957年6月6日生まれ)は、2016年5月2日からデルタ航空の9代目のCEOを努めています。

CEOのEdward H. Bastian

彼は、ニューヨーク州ポキプシーで9人兄弟の長男として育ちました。父親は歯科医、母親は歯科助手であった。1975年、ポキプシーの聖母高等学校を卒業。

1979年、ニューヨーク州カッタローガス郡のセント・ボナヴェンチャー大学から会計学の経営学士号を取得しています。

彼は、ニューヨークのプライス・ウォーターハウス(現プライスウォーターハウスクーパース、PWC)で監査役としてキャリアをスタートさせました。

1981年の年次審査で、広告大手のJ.ウォルター・トンプソンが関与した5,000万ドルの不正を発見し、米国証券取引委員会の調査を受け、多くのPWC幹部がキャリアに傷を負うことなりました。
数年後、バスチアンは31歳でパートナーに指名されています。

PWCの後、1998年までペプシコで副社長を務め、フリトレー・スナック部門の国際財務を管理した後、デルタ航空に財務・経理担当副社長として入社。2000年に財務・経理担当上級副社長に昇格しました。

2005年にデルタ航空を退職し、Acuity Brands社の上級副社長兼最高財務責任者に就任。
2007年、社長に任命され、2016年5月にCEOに就任するまでその職を務めました。

彼のCEO就任は、1987年以来、デルタ航空が社内から最高経営責任者を選んだ初めてのことです。

財務状況

資産

負債純資産

株主還元

※純損失のFY20は便宜上、配当性向、総還元性向ともに100%としている

FY20の売上高は171億ドルで前年比▲64%。COVID-19のパンデミックにより航空需要が激減しました。メインキャビン、ビジネス・プレミアムともに70%の減収。

営業利益▲42.5億ドル、純損失▲123.9億ドルと大赤字。固定費が多いビジネスなので、売上減少が利益減に直結します。

キャッシュフローもマイナス。

損失計上にもかかわらず総資産が増加しています。200億ドルを超える借入を行ったためです。

FY13から配当を出し増配を続けてきましたが、FY20に一時配当停止となっています。自社株買いも停止。

株価推移

以前はウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが、航空株に積極投資しており、デルタ航空株は2019年末時点でバークシャーの上場株ポートフォリオの1.7%を占めていました。

しかし、コロナ禍を受け、2020年に保有する航空株をすべて売却しました。

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