現役証券マンの考察【米国ハイテク・グロース株の復活はあるか?】
どうも、こんにちは
Confee.Callmanマンです。
今回は、昨年11月に高値を付けてからというもの、米国金利上昇可能性が出てきた中で、NASDAQは約34%下落(21年11月22高値16,212pt→22年6月16安値10,565pt)しました。現状は積極的な金利上昇の真っただ中であり、今後の金利上昇についても積極的な金利上昇姿勢(タカ派)を崩さないFRBのまえにに、はたして、ハイテク・グロース株について、今後の復活はあるのか?とても簡単に書いていきたいと思います。
なぜハイテク株は売られたか?
約半年下落し続けた株式市場。90年ぶりの下落幅(期間)とまで言われた今回の下落。なぜそこまでの下落が起きたのか簡単に見ていこう。
①コロナ渦で行っていた「財政政策」と「金融政策」
2020年の3月、コロナの世界的大流行に伴い、米国の低迷する経済を支えるため、トランプ大統領は「大型減税(トランプ減税)」「大規模な財政支出」を行った。そこへさらに、金融政策の面でも元々ハト派であるイエレン議長をFRBのトップへ指名したことで、「財政」と「金融」の両面から景気を下支えをして、米国の景気後退(リセッション)を防いだのである。
もちろん、FRBは金融政策により、市場へお金を流し、金利を0~0.25へ下げることで、企業の借り入れを起こし、新陳代謝をよくすることで、狙い通り(設備)投資へ資金が回ったのである。
②グロース株の上昇が起きた理由
上記でなぜグロース株(大型株含)上昇が起きたか・・・市場への資金流入による機関投資家の株式投資への配分増加、債券から株への資金流入、ゾンビ企業でも救われる、一般個人投資家の投資への資金流出、ミーム株への注目、理由はいくつもあるが、1番の大きな理由はやはり「金利」であると考える。
ハイテク、グロース企業の会社はもともと、赤字、軟弱な財務、多大な借入金が多い企業がもともと多い。そんな中で、今回のコロナによる、上記の救済政策はまさにグロース企業にとっては救いの手と言えよう。その間に、ハイテク企業の多くは借入を強化し事業の拡大に努めたのである。その間に企業は売り上げを爆発的に伸ばし、利益を上げ株価上昇に弾みがついたのである。また、マイクロソフトのビルゲイツが言っていたように、「今後5年で起きるITの進歩が、(コロナによって)たった2年で起きてしまった」と言われるくらいに進んでしまった。そんな企業の多くは、本来の経済、コロナが起きなければ急激な成長も起きてなかったであろう企業が多い。そんな企業の多くが、アマゾンであり、マイクロソフトであり、ネットフリックスであるが、当時はそこまで有名ではなかった、Shopify(SHOP)、Roku(ROKU)、ZoomVideoCommu(ZM)や、Sea(SE)でもある。
③では、なぜ下落が起きたのか?
下記を理由に2020年2月に感染症であるコロナ第一波を経験した世界だが、米国株式市場は3月の大幅下落ののち、1か月後には戻り高値を更新、上記①、②を理由に大幅な上昇を約1年8か月間続けたのである。しかし、そんな強力な上昇相場の終わりはあっけなく終わってしまった。なぜか?理由としては色々考えられるが、大きく言えるのは
1.金利の上昇
2.インフレ
3.(金利上昇に伴う)企業収益の悪化
上記の3点が特に大きいだろう。
1と2については、密接な関係があるとともに、もともと、昨年2021年夏くらいから、堅調な雇用、失業率、平均自給率の伸び率から、インフレ率の上昇の懸念を説いていたFRBが金利の上昇を示唆し始めたことから始まった。
示唆し始めたことで、今まで楽観一色だった株式相場から若干の悲観論が出てきたのである。そこに来て、2021年の米国インフレ率(PCE)が5.3%へなることを予想したFRBは、早ければ2022年の3月から利上げを行うとの見通しを示したのである。しかし、皆さんもご存じの通し2022年2月24日、ロシアがウクライナへのミサイル攻撃を始めたことをきっかけに始まったウクライナ戦争がきっかけで、元々の2022年の2.6%、2024年までには2.1%に低下するという予想は大きく修正せざるを得ない形となってしまった。
1.2を踏まえたうえで、3は急激に起こる可能性が出てきたのである。
企業は上記の②を理由に株価を上昇してきた。しかし、その企業のほとんどがもともとは赤字の企業である。金利上昇がなぜ株価にそこまでの影響を与えるか。。。
例えばA株式会社という会社があるとする。コロナ前2020年の売上とコロナ後2022年の売上が全く変わらない(その他利益やコスト等の条件も一切変わらない)としよう。この企業の業績は売上100億、借入30億、利益10億の企業である。売上が全く変わらないと仮定するならば、借入金30億を毎年6億(5年)で返済するとしよう(実際そんな会社はほぼないが)。
毎年返済金利5%とした場合、年間6億の返済に対して3,000万の利息が発生する。これを5年間続けた場合1億5,000万の利息を払うこととなる。すると利益は(単純計算だが)10億×5年で手元に残る資金は50億のところ、うち1億5,000万は利益が減るため手元に残る資金は48億5,000万となる。そのため、金利を引き下げることによって、将来手元に残る資金(CF:キャッシュフロー)が多くなるため、それを現在価値で割り戻し、急激な売り上げと利益が増えたこと、そこにさらに将来の成長性を鑑みて、株価は上昇を続けたのであるが、急激な金利上昇を背景に、今後のCFが悪くなること、さらには、コロナでの爆発的な売り上げ、利益率の維持を出来ないとの予想から、ハイテク、グロース企業は真っ先に売られてきたのである。今後少なくとも、2024年までの間は米国も金利を引き上げるとの事から、そう、グロース株にとってはお先は真っ暗・・・( ^ω^)ザンネン・・・
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と、決まったわけではない!!アキラメラレナイ
グロース株の復活はあるのか!?
さて、ここからはおまちかね、本題でもあり、この記事のタイトルでもある、ハイテク・グロース株の復活はあるのか!?について下記では書いていこう。
結論から言うと、復活はあり得る。少し願望も入っているが。。。
理由はシンプルに3つ。
①景気後退(リセッション)
②①に伴っての金利の下落
③企業の方向転換(コストの見直し、事業の方向転換等)
以上の観点から、ハイテク株の逆襲は可能であろう。
①景気後退による②金利下落について
今年6月、米国の長短金利差の逆転(逆イールド)が起きた。過去のデータから見ると、逆イールドが発生してから平均で約1年半後には景気後退が起こっている。なぜか?
銀行にとって、市場から資金を調達する金利は「短期金利」に値する(米国2年債など)。中期・長期の金利は「貸出金利」に値する(10年債や20年債など)。そのため、逆イールドが発生することによって、銀行が調達したときの金利が、貸し出す金利よりも高くなってしまうため、銀行は「貸し渋り」を行ったり、「資金回収」を急ぎ始めるのである。そのため、もともと赤字であったグロース(成長)企業にとっては致命的なダメージとなるのである。過去、1978年以降、米国が景気後退局面になったのは、
①1980年1月~7月
②1981年7月~1982年11月
③1990年7月~1991年3月
④2001年3月~11月
⑤2007年12月~2009年6月
⑥2020年2月~4月
の6回。その間のNASDAQは果たしてどうだったのか?データが取れる範囲ではあるが、下記で見ていこう。
①、②についてはデータで見ることはできなかった(筆者の持ってるツールでは)が、③1990年7月にNASDAQは462.04から、10月には325.44まで下落(-29.56%)したものの、景気後退が終わる1991年3月末には482.37(+48.2%)と見事にV字回復している。また④の2001年3月には2142.92ptから9月に1423.19ptに下落(-33.58%)したものの、11月末には1930.58p(+35.65%)を回復、⑤の2007年12月には2637.13pt~2009年3月には1268.64ptに下落(-51.89%)したものの、9月末には1845.72pt(+45.48%)⑥の2020年2月は9838.37ptから3月には6631.42ptまで下落(-32.59%)したものの、4月末には8926.10pt(+34.60%)を付けている。では今回はどうか・・
景気後退期へはまだ入っていないものの、昨年11月22日にNASDAQ高値16212.22ptをつけ6月16日10565.13まで下落(-34.83%)したが、足元では8月16日の13181.08ptまで(+24.76%)上昇している。景気後退局面では上記でもわかる通り、終わりが近づく前にNASDAQは反発しているし、そもそもお気付きであろうか?どんなに景気後退が来たと言っても、結局は指数自体は次の景気後退局面が来る前には必ず上がっているのである。まだ、これは景気後退に入ってない今の現状からの見方であり、今後景気後退期へ入った時の投資の戦略の一部として考えていただきたい。
しかし、米国はインフレ退治のため、「企業や家計に痛みを伴っても」現状金利引き上げを急いでいる格好である。しかし、景気後退へは遅かれ早かれ、はたまた、現状入っているかもしれない。その中で、FRBは積極的な利上げ(タカ派)へ舵を切っているが、Fedウォッチ(FRBが目標としている金利)によると現状2023年末3.5%~3.75%に目標を置いているところから、今後3.75%~4.00%にすること、はたまた、4.00%以上にしてくるところに注目が集まってくるが、9/8のパウエル議長の発言では現状、足元のデータ次第との事で、9/13のCPIの結果には注意が必要である。しかし、金利上昇でグロース株は必ず売られるのか?過去のデータを振り返るとこうだ。
第一生命経済研究所から出ている2022.03.17 田中 理さん作成のレポートから引用させていただく。
S&P500ではあるが、結果は御覧の通り。金利上昇でも株は上がっている。
それもそのはず、金利上昇を行うと企業は投資をやめ、個人の支出=消費がおちるため、景気後退がやってくる。そうなった場合、中央銀行は金利の引き下げへ動かざるを得ないのである。
現状、足元の米国長期10Y国債が3.31であり、6/14日に米国株式市場が底を付けた時の金利が3.478。FRBは10年国債だけしか動かすことができない。そのため、市場金利が先走ってしまった6月の金利まで行ったとしても、FRBの金利誘導と市場金利が一致してきた現状から考えると、グロース株の大幅下落はもう考えにくいのではないのだろうか?
最後に、③について考えてみよう。
この2020年から続いたコロナによって助かってきた企業、売り上げや会員数を爆発的に伸ばしてきた企業は壁にぶち当たっていることだろう。なぜなら、以前ほどの成長性を維持できない、または成長が鈍化して減少しているからだ。言い換えれば良すぎた反動が出たと言える。
グロース企業の多くのひとつとしてはSaaS企業が多い。SaaS企業とは「Softwer as a Service」の略で、簡単に言うとインターネットを通じて必要な機能やサービスを利用できるソフトウェアのこと(例えば、Slack、Zoom、Adobeなど)。これらSaaSビジネスにおけるKPIとしてどの程度成長しているかを測る指標として①「成長性(Growth)」の6項目、②「効率性(Efficiency)」の7項目、③「継続性(Retention)」の8項目がある(機会があればいつか記事にしようと思う)。特にこういう企業は簡単に言うと、「継続的」に収益を得られる「既存の顧客」が非常に大切である。
最近では4月の第一四半期決算を出して大きく株価が下落したネットフリックス。契約者数が20万人純減したことを嫌気され株価は大幅下落。しかし、第二四半期では契約者が100万人減少したにもかかわらず、市場予想の200万人の減少程に至らなかったとの事で株価は上昇。ネットフリックスの創業者でCEOのリード・ヘイスティング氏は、パスワードの使いまわしによる無料視聴者に対抗するため、これまで強く広告掲載へ反対していた姿勢を覆す、広告付きの契約プラン導入の検討を表明。
また、Snapは8月末の決算で、エヴァン・シュピーゲルCEOは従業員の約2割を大幅リストラを決定。それと同時に、いくつかのプロジェクトを閉鎖し「事業の再編と再集中」へ舵を切った。これは経営者としては大きな決断であるといえよう。これを好感し、株価は9%も上昇した。
このように、急激な株価下落を受けたグロース企業は、今までにしてこなかった、大胆なコストカットや、事業再編等を行ってくる可能性がある。そうなれば、株価の市場からの評価というのは簡単に変わるものだ。
このコロナ渦の中で株価が爆発的に伸びたグロース企業がいくつもある中、このような銘柄へ投資していた投資家は、今、打樋しがられていることだろう。しかし、コロナ前の水準まで売り上げが落ちている銘柄で無ければ、上がりすぎたバリエーションが戻っただけと考えていいだろう。そう考えると、むしろ、今後高値から4分の1、5分の1となっている銘柄は、買いの絶好のチャンスと言えるのではないだろうか。でもさすがに個別銘柄は心配だという人は、そのような個別銘柄を集めて一つのポートフォリオにしている、投資信託として投資するのも一つの手ではないだろうか。
個別商品の紹介ではないが、その一つの中にARKがあると言えるだろう。特にARKは現在のマクロ経済や金利動向を全く見ないと言っても過言ではない。それより、個々の企業の5年後の将来性を買いに行くファンドだ。ギャンブル性が高いとも言われる。しかし、ARKのキャシーウッドを有名にした、テスラ。彼女はテスラが何十ドルしかしない何年も前からテスラの自動車ではなく、自動車に関連するソフトウェアの開発や提供に可能性を見出しており、今や何百ドル、2026年には4,600ドルに達するとまで言っているのである。その一つの銘柄にコインベースやDraftKingなんかがあるが、その企業が今していることへの投資ではなく、その事業から今後発展するであろう、まだ見ぬ可能性への投資を行っているため、ARKは足元グロース株という理由だけで売られていたとしても、今後の爆発的な成長性が失われたわけではないと言えるだろう。
少し長くなってしまったが、ARKさんの保有している銘柄の精神的な支え、今後投資を検討している先の一つの材料にしていただければ幸いです。
※投資は自己責任でお願いします。
※当記事は特定の銘柄への投資を勧誘するものではありません。
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