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第142回 2030年問題

前回触れた「2030年問題」の続きです。
「2030年問題」とは、日本社会の高齢化に伴って労働人口が減少し、多くの企業が労働力不足や競争激化、人件費上昇などの課題に直面するであろうことを言います。
この「2030年問題」について、今のところ一般人は余り気にも留めていません。
しかしながら、企業の方は、着々と準備を進めています。

例えば、先日の名証IRで情報収集させて頂いた幾つかの企業では、京都支店を廃止しています。
大阪支店を関西支社と名称変更し、京都支店を吸収させて、効率化を図っているようです。
そもそも京都支店を作ったのは、京都で地域密着型の営業をする為です。

ところが、新型コロナ感染症の問題で、オンラインが主流になった時期がありました。
この頃は、地域密着型の営業よりも、感染「risk」の低い非対面型が望まれた時期でした。
このことを利用して企業は今、顧客には直接会えないというサービスの質の低下を意識させること無く、地域密着型を改めて、効率的な企業経営へと移行が出来ている訳です。

そして、事業拡大を図る企業は、海外への展開を急いでいます。
「すき家」で有名な7550ゼンショーHDですが、一般人は「すき家」は「すき家」が経営していると未だに思っているでしょう。
経営母体が7550ゼンショーHDだと知っている人は、多少なりとも経済に明るい人たちです。
更に、9943ココスや9899サンデーサン、7627なか卯を吸収合併し、M&Aを積極的に利用して業態を拡大したことを知っているのは、経験豊かな投資家たちでしょう。
そして今の7550ゼンショーHDは、国内店舗の2倍もの国外店舗を保有し、利益の大部分を海外に依存していることを知っているのは、今日の研究熱心な投資家たちです。

つまり、既に日本企業で、国内市場だけに拘っている企業は、頭打ちになっています。
更なる高みを目指すなら、海外への進出を企画し、実行する必要がある訳です。
外食産業という日本国内でのみ成り立っているように見える企業でさえ、この傾向は顕著なのです。
ですから、鳥貴族の3193エターナルGは、今年になって米国や香港への進出を決めた訳です。
先日の名証IRでも、3066JBイレブンは海外への展開を考えていると言ってました。
7522ワタミなんかも、もっと海外に積極性を持たなければ、市場的にはだめなんでしょうね。

- じゃ、やっぱり国内だけではダメなんだ・・・・ -

そう感じるかもしれません。
いえいえ、インバウンド抜きにして、国内市場だけで生き残りを模索する企業は、多くあります。

例えば戸建ての建設業界では、人口減少の影響で、当然ながら戸建て需要が減少するという試算を出しています。
しかしながら、戸建て需要以上に減少するのが、建設業に従事する労働者数です。
建設業は、以前は3K職場の代名詞などのように言われていたので、若年層の労働者が占める割合が、元々低かった訳です。
そこに高齢層の大量退職が発生する訳です。
つまり、家を建てたくても、大工がいないから建てられないという状況になってしまう訳です。

そこでハウスメーカーは、大工を必要最小限で建てられる住宅を開発しています。
最近流行りのプレハブ住宅です。
その大部分は、工場で製作されており、現場ではほぼ組み立てだけで完成します。
平地だった場所が、1週間後には家が建っているなんてことを見たこと無いですか!?
プレハブ住宅は、大工の人数も、拘束時間も、限りなく少なく出来る訳です。

また、プレハブ住宅は、災害に非常に強いです。
建物自体を柱ではなく壁が支える構造になっていることが多く、地震や水害に対して防災効果があります。
地震によって多くの家屋が倒壊している地域で、無傷で建っているのはプレハブ住宅だと考えてよいくらいです。
また、洪水の中、流されなかった住宅として、1928積水ハウスのプレハブ住宅は有名になりました。

このように、従来と全く異なった発想で、「2030年問題」に対処して行こうという業界はまだまだあります。
それぞれ得意な業種があると思います。
その業種での対策を調べて、投資先を選定してはどうでしょうか!?
ただ一つ言えるのは、福祉業界はダメです。
介護業界、障害者業界などが企業に開放されましたが、こういう業界への投資は止めてください。
なぜなら、どう頑張っても、生産性の向上が図れないからです。
制度というものが生産性の向上を阻害し、利益が上がらないようにコントロールするので、決して手を出すべきでは無いと考えます。

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