第47回 食品セクターへの投資
若いころ、私がまだ旧財閥系の会社で仕事をしていた頃の話です。
取引先の2810ハウス食品の社員さんに教わったことがあります。
それは、次の2つでした。
・不景気になれば、カレールーが売れる。
・六甲のおいしい水は、売れれば売れるほど赤字だ。
カレーと言えばバーモンドカレー、バーモンドカレーと言えば西城秀樹です。
まぁ、西城秀樹は全く関係ありませんが、日本でカレーと言えば、2810ハウス食品です。
その2810ハウス食品は、多くの商品を販売しています。
当時から、「六甲のおいしい水」、「とんがりcorn」、「フルーチェ」など人気商品が多数ありました。
しかし、利益率が一番高いのはカレールーで、他の商品は赤字か、黒字でも微々たるものだということでした。
- なら、どうしてカレールーだけにしないのか!? -
そんな素人質問を投げかけたら、丁寧に教えてくれました。
他の商品も売っているからこそ、カレールーが売れる。
もしカレールーしか売らなくなったら、知名度が下がってしまう。
すると、カレールーの売上げも下がり、利益も下がる。
だから、他の商品は赤字でも売るのは、知名度を上げるため、つまり宣伝効果を考えてのことなんです。
「六甲のおいしい水」も、わざわざ六甲から水を汲んで、運んで、封入して商品化するより、井戸水に粉を入れて濃縮還元ジュースにして売る方が、はるかに簡単で、利益率が高い。
それなのに「六甲のおいしい水」を販売し続けるのは、宣伝効果のためです。
当時の私は、宣伝効果と言えば広告だけと考えていたので、そういう戦略があるということは目から鱗の話でした。
また、2810ハウス食品は、不景気になれば業績が良くなります。
なぜなら、不景気になれば、多くの家庭が外食を控え、自宅でカレーを食べるからだということでした。
- どうして自宅でカレーを食べるんですか!? -
そんな素人質問を投げかけたら、またまた丁寧に教えてくれました。
カレーやシチューは、高級そうに見えるでしょ。
でも材料は限られてるし、そこにルーを入れるだけだから、手間がかからない。
外食を我慢しているんだから、少しでも高級そうに見えて、安く、美味しいもの、と考えると、カレーとか、シチューになるんです。
この話から食品セクターは、景気に左右されないと言うより、景気の逆に動く可能性があると後に思いました。
ただ実際は、景気の悪化により、株価は売られています。
それは、相場全体から資金が引き上げられている為で、その煽りで売られているということです。
また最近は、国内市場の縮小から、海外市場へと進出している企業も多いです。
このため、将来的な売上げの増加期待で、株価も高くなっているところもあります。
ただ、需要が底堅い銘柄であることは間違いありません。
ですから、他の銘柄と比べても、変動幅は限定的だと言うことが出来ます。
私が手掛けたことがある食品セクターの銘柄は、2897日清食品HDです。
なぜ2897日清食品HDを買ったかと言えば、単に旧財閥系の会社にいた時の上司が、2897日清食品HDの前社長と幼馴染だったからです。
「遊びに行くと、チキンラーメンの試作品を食べさせられた。」
そう上司が楽しく話してくれたので、一度株主総会に行ってみたいと思ったのと、リーマンショック後に安定銘柄を探していたこともあいまって、株主になった訳です。
株主総会後の懇親会の席で、前社長に話しかける機会があり、上司の名前を出して、その話が本当かどうか尋ねたことがあります。
すると、笑顔で「本当の話です。昔のことを思い出せて、楽しかったです。」と言ってもらいました。
そんな安定重視で買った日清食品HDですが、久々に見ると株価は5倍になっています。
買ったのは、リーマンショック後なので15年ほど経っている為、10年で10倍にはなっていません。
ただ、15年で5倍になっているので、安定重視で選んだ割には騰がっている方だと思います。
ですから、安定セクターでも、売上げが拡大していれば、暴騰しないまでも、十二分にキャピタルゲインは得られると言うことです。