※撤回 【最終回】VTuberとして一ヶ月突っ走り、そのまま砕け散った

結局本記事の引退宣言は一週間も経たないうちに撤回しましたが自戒として記事を残してあります

連絡

VTuberとしての活動を停止することにした。
ほんの数日前まで「次は◯◯をやりたい」なんて話しておいて、あまりにも唐突な報告になってしまったが、真剣な話だ。
初配信が去年の12月2日だったので、活動期間ほぼ一ヶ月のスピード爆散と相成った。
我ながら色々と酷い話だとは思うが、見切り発車で始めたVTuberの顛末を資料として残しておく価値はあると思ったので、こうして書き留めておくことにする。
最後に俺の無様な生き様を、精々笑ってくれ。

結局、なぜこうなったのか。その理由を要約すると以下の二つだ。

「もっと必死になってチャンネルを伸ばさないと満足の行く配信を作れない、届けたい相手に届けられない」
「でも趣味なんだからもっと気楽にやりたい。必死になりたくない。伸ばすためだけに興味のない事をやりたくない」

「覚悟が足りない」とか、あるいは逆に「重く考えすぎだ」とか、色々と思われることはあるだろうが、これがほとんどの理由だった。
もっと雑な言い方をするなら「伸びないから辞める」だ。
今まで俺に付き合ってくれた人には本当に申し訳なく思っている。

自分の声を聞くのが嫌

おそらく、活動をする上で自分にとって最も大きな障害となっていたのがこれだ。
「録音した自分の声を聞くのは不快」とは方々で言われていることだが、俺もそうだった。
マイクのテスト時はもちろん、ネタ動画の撮影時には何パターンも台詞を録音して「一番マシ」なものを選んだりしていたが、常に不快だった。
自分の配信の中で面白そうな部分をピックアップして切り抜き動画を投稿することも何度も考えていたが、結局行わなかったのは自分の声を聞きたくなかったからだ。

自分の声が嫌いなら生声で配信なんかしなきゃいいだろ、という話なんだが、ここに厄介な点があった。
俺は声を褒められた経験がそこそこ多かったので、「どうせなら声を活かさないと損」と思っていたんだ。
実際、VTuberを始めてから頂いた数少ないコメントの中でも、何度か声は褒められた。
それでも声だけでチャンネル登録者が大量に稼げるわけでもないし、何回褒められても俺は自分の声を聞くのが嫌だった。
VTuberとしてキャラクターの画像を用意して、それに乗せて喋れば平気にならないかと思ったが、その状態で一ヶ月経ってもやはり慣れなかった。
だから俺は、自分の配信をまともに見返していない。「上達のためには見返して反省点を探すべきだ」とは常々思っていたが、とにかく自分の声を聞きたくなかった。
だが、自分が生み出したコンテンツを自分自身が愛せなくて、自信を持てなくてどうするんだと、そんな自分の行動がずっと嫌だった。

最後なのでバラすが、俺の名前が明らかに女なのは元々このキャラクターの名前ではなかったからだ。
今より2年だか3年だか前、俺はお嬢様系の女性キャラクターとしてVTuberデビューを画策していたことがあった。
ただ、女性モデルを使いつつ男の声で堂々と話すタイプがやりたかったわけじゃない。
かと言って、ボイチェン丸出しのガビガビしてキンキンした声になるのも嫌だったので、女性らしい声を出すための指南書なんかを読みながら半年くらい女声の特訓をしていた。
だが結局、それが納得できるクオリティに到達しなかったので、そのまま女性VTuber計画はお蔵入りになったわけだ。

「鏑木和奏」の名はその頃、そのキャラクターのために考えた名だ。
計画が頓挫してから日が経ち、結局男性VTuberをやろうと決心した時、お蔵入りにした設定をそのまま死なせるのが惜しかったので今の「俺」に丸ごと流用したわけだ。
ついでに言うと、今の俺が首から下げているアクセサリーのドレスは、その女性キャラクターに着せる予定だった衣装だ。
結局話す機会がなかったし、今までどこにも記載していなかったが、そのお蔵入りになった女性キャラクター版と今の「鏑木和奏」は同一人物で、
「現在の鏑木和奏は精神体であり決まった肉体を持たないので、その気になれば男の姿にも女の姿にもなれる」なんて都合の良い設定も用意してあった。

とにかく、自分の声には最初から最後まで悩まされ続け、結局和解することはなかった。

無駄にハードルを上げるクセ

俺は配信の前には必ず最低30分は発声練習を行ってから臨んでいるし、配信をしない日でも同じ発声練習は基本的に一日も欠かしていない。
そして雑談配信の場合は(結局2回しか行っていないが)話題が尽きて無言の時間を作らないように、事前に話題を用意した上で話の流れも考えてからスタートしている。
ゲーム実況についても、あまりにも無様なトークや失言はしたくなかったので、VTuberをやると決めてからイラストや機材が揃うまでの2ヶ月ちょっとの間、「配信をしている」体で一人で実況の練習をひたすら続けていた。
(つまり実際に配信をしていた期間よりも、一人で「配信していない配信」を続けていた期間の方が長い)

誤解を招かないよう主張しておくが、苦労自慢をしたいわけではない。
ただ、声を褒められている以上は常に最高の声で配信に臨みたいし、自分から配信を開いたくせに話題が尽きて黙り込む、あるいはリスナーに話題提供を求めるようなことはしたくなかったのだ。

しかし、いちいちそんな事にこだわっているせいで俺にとっての配信は完全に「仕事」だった。
どうせ趣味でやっている配信なのだから「ねえねえ聞いて聞いてー」と友達に話す程度の感覚で気軽にリスナーとお喋りして、話題が尽きたら「話すことないねー、あはは」とでも笑いながら駄弁る。そんな姿勢でも良いんだろう。
だが俺は根本的に人間と友達になれる、理解し合えると思っていないので、常にリスナーに対する認識は「異種族のお客さん」だった。
わざわざこんな景気の悪い男のチャンネルにやってきた人がいるなら、それを可能な限り楽しませる、癒すのが俺の義務だと思っている。
自分が気楽に楽しく遊ぶはずの趣味で、仕事として義務を果たしていた。それで辛くなかったのか?辛かった。バカじゃねえのか。

自分がやりたかったことは配信だったのか

俺は「自分」でいるのが嫌だった。
だから「自分」ではないキャラクターとして生きられるVTuberという場に居場所を求めて、その成り行きで配信をしたような状況だった。
もちろん配信という行為自体に興味はあった。全く興味がなかったら流石に配信者をやろうとは思っていない。

だが、そこで問題になったのが先述の「無駄にハードルを上げるクセ」だ。
まず時間を決めて配信枠を作り、予告した時間通りに配信をする。
それだけでも多少の束縛感があったんだが、俺は仕事だと思って配信をやっているせいで配信中はずっと気を張りっぱなしだった。

楽しくゲームをやって、その時間を誰かと共有して、もっと楽しく過ごす。
趣味でのゲーム配信とは本来そういうものだと思うんだが、俺は「無様なプレイはできない」「面白いトークをしなければ」と常に思っていた。
雑談配信についても同様で、現状の俺はそもそもリスナーと対話して進行できるほど視聴者が多くないから一人でプレゼンのような話を延々するしかなかった。
「今回の雑談配信は『成立』するのか?」と不安に駆られながら枠を取り、「何とか乗り切れた」と思いながら配信を閉じていた。
趣味でやっている配信のはずなのに、配信をする度に「恐怖・不安・疲れ」ばかりが蓄積していた。

俺の配信を気に入ってわざわざアーカイブを全部見たという人がいたり、雑談配信に付き合ってくれる人もいたのは本当に嬉しかった。それは本当に励みだった。
しかし、既存の視聴者を楽しませるだけでは先細りするだけだ。新規を取り込まなければ配信者としての未来が無いし、既存の視聴者にとっても確実にマンネリ化が来る。
既存の視聴者を安定して楽しませるためにも、チャンネルを伸ばすことは必須だ。しかし、「伸ばすための方法」を考えるのは苦痛だった。

例えばショートフィードに載って閲覧数が激増すると噂の縦型配信にも興味はあった。
しかし既存の視聴者にとって縦型配信は単に不自由なだけだし、縦型配信でもフィードに載らないことも多いと言われていた。
わざわざ縦型配信を行って既存視聴者にそっぽを向かれた挙句、新規の獲得にまで失敗したら最悪だ。
それでも、その程度の挑戦を恐れていてチャンネルを伸ばせるのか?やはり縦型配信を行うべきでは?いや、しかし。
そんなことを何度も考えて、まあ結局行わなかったわけだが。とにかく無駄に悩むだけ悩んだ。楽しくはなかった。

そもそもの話、俺はこうして「チャンネルを伸ばすため」に散々悩んでいたが、仮に伸びたとしてどうなるのか。
視聴者が多くなって、配信が盛り上がるようになったとして、恐怖や疲れは消えないだろう。
むしろチャンネルが大きくなればなるほど、背負うものは大きくなる。
俺は本当にVTuberがやりたかったのか?
それが分からなくなった。

嫌われるのが怖い

俺が「お客さん」として対象にしたい層は最初から決まっていた。
周囲と感性が違ったりして、どこにも馴染めず、ただ一人で恨みを燻らせている奴だ。
そういう存在を笑わせる、苦痛を癒すことが俺の最大の活動目的だった。これは一度も揺らいでいない。
問題となるのは、そういった層は大抵Twitterでも鍵垢に閉じこもっていたりするから、拡散力がまるで無い事だ。
VTuberとしてターゲットに据えるには酷く矛盾した存在だった。

だから俺は、以前書いたDQM3の批判記事を強引にでも人目に付かせるために16000円払ってTwitterの広告を出したりした。
これは一応成功と言っていい結果になったと思っていて、当時5人いたかどうかの俺のTwitterのフォロワーが20人くらい増えたし、
マシュマロや配信のコメントでも「広告で流れてきたnoteを読んで共感しました」とのメッセージをいくつも頂けた。

だが、批判的な言動を行動の中心にすれば、思想の合わない人から敵視されるであろうことは理解している。
俺は炎上商法的なことがやりたいわけではないし、強い言葉で批判をするなら、その理由や根拠は丁寧に書くようにしている。
それでも例の記事が理由で俺を本気で嫌った人も一定数は存在するだろう。それを非難する気はない。

問題なのは、今回の記事で俺に共感した人が今後も俺と同じ感想を抱き続けるとは限らないことだ。
一度は俺の感想に共感した人でも、今度俺が別の作品を批判したら「ふざけるな!俺の大好きな作品を叩きやがって!」と一転して敵に回るかもしれない。
勿論それは仕方がないことだが、特に視聴者が少ない今は一人にでもそっぽを向かれたら致命的だ。

あと、VTuberとして活動をするからにはサムネイル等のイラストを今後新たなイラストレーターに発注する機会もあるだろうが、
その際に依頼した相手が万が一にも、俺が書いた批判記事を見て俺のことを嫌っている人だったら?
あれこれキャラクター設定などを書いて「よろしくお願いします!」とメッセージを送った結果、「お前のこと知ってる。誰がお前の依頼なんか受けるか!」とでも言われたら流石にキツい。
そんな余計な不安を自分で増やしている。

今の俺のフォロワー・チャンネル登録者は大多数がDQM3の記事から入った人のはずだが、これらの人は俺に何を期待しているだろうか。
DQM3のような、許せない作品への痛烈な批判か?それとも、「ドラクエ」シリーズへの思い入れの深さが垣間見えるようなゲームのプレイやトークか?
あるいは全く違う作品に対して、俺が絶賛している姿でも見ることか?
一体どれだけが、あの記事の後に「鏑木和奏」というコンテンツ自体に興味を持ち、俺が例の記事と全く関係のない事をしてもついて来る?
俺が、あれこれと面白そうだと思う配信を行った結果、「自分の期待してること全然しねえなコイツ。もういいわ」と見限られる場合もあるだろう。
新しいことをやった結果、失望されるのが嫌だ。

そんな事は何にでも付きまとうものだとは思う。
もしもチャンネル登録者が100人増えるのに対し、1人に見限られる程度なら俺も「仕方ない」で済ませられると思う。
だが現状は本当にチャンネルを伸ばす道が見えていないし、いくつも行動を起こした結果「増加0、減少1」なんて結果が起こり得る。
そんなことにビクビクしながら行動したくない。結局はそんな思考に行き着いた。

自縄自縛

冒頭でも書いたが、俺はVTuberとしての活動を結構な見切り発車で始めていた。
雑談配信の際にも言及した覚えがあるが「とりあえずDQM3やる」より先のことをほとんど考えていなかった。
とは言っても、それ自体は悪いことではないと言うか、仕方のないことだったと思う。
俺は元々、考えるだけ考えて行動に移さずに終わることが多い方だったので、勢いに任せて見切り発車を承知で始めでもしなければ、おそらく企画倒れで終わっていただろう。
問題は「配信者としての自分・VTuberとしての自分」に最後まで自信を持てなかったことだ。
個人配信者なんてセルフプロデュースが命なのに、声が嫌いだとか人に嫌われたくないとか、結局はそんな事ばかり考えて思い切った行動ができずにいた。

あと、初めの方からずっと障害となっていた点として「イラストの発注が美少女VTuberより難しい」ことがあった。
俺のデザインは見ての通りゴツい男なわけだが、比較的安価でVTuber向けのイラスト発注を受けている人は「美少女キャラクター&可愛い少年」専門に近い人が多い。
たまに男性キャラクターの得意な人がいると、今度は濃すぎる絵柄だったり、いかにもなBL系の絵柄だったりする。
もっと正統派……という言い方が正しいか分からないが、とにかく自分好みの絵柄の人を探すのには非常に苦労が付きまとっていたし、それが理由で結局サムネイル用のイラストなどを新たに発注すること無く終わった。
そもそも自分で選んだデザインだ。そのぐらいの苦労は受け入れるしかないのは分かっていたつもりだったが、イラストレーターを探す度に「やっぱ女キャラの方が良かったんじゃねーかな」と思っていた。

自分から修羅の道に突っ込んで、のたうち回って、そして力尽きた。
結局、俺は趣味を趣味として楽しめなかったのが最大の問題だった。
じゃあ、誰かが代わりにプロデュースしてくれて、文字通り「仕事」として配信する企業VTuberでも目指していれば結果は違っていたのか?
けど企業じゃ絶対こんなキャラやってられねえよな。どっちみちダメだ。

寝る

これで、俺が一ヶ月のVTuber活動をして「辞める」と決めた理由は書き終わったはずだ。
最終的に、俺の配信の同時接続者は6人そこそこだったが、フォロワーやチャンネル登録者の数から考えた割合で見れば十分多かったと思う。
年単位で活動していて、チャンネル登録者が1000人くらい居るのに同時接続者は3,4人なんて人も何度か見かけてきた。
要は、少数ながらも「俺だから」期待して見に来ていた人はしっかり存在していたのだと思う。それは本当に恵まれていたと思うし、その人達を裏切るような結果になったことは本当に申し訳なく思う。
だが、無理をして続けたくもない活動をして、中途半端なエンターテイメントを供給するのが正しいとも思えない。だからハッキリと終わらせることにする。

まあ、死ぬわけじゃない。
俺はこの先も、どこかで生きている。
いつかお前が何か、許せないと思うものに出会った時、きっと俺もどこかでお前と同じように憤っているだろう。
それが何かの支えになってくれれば幸いだ。

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