
ドラクエ10を始めて三ヶ月で600時間ほど遊んだので感想を語る
ドラクエ10のプレイを開始してから三ヶ月が経った。
当初は「体験版で遊べる範囲(ver2まで)程度はプレイしよう」程度の感覚でスタートしたが、結局あっさりと製品版を購入して現時点でバージョン5まで到達している。
プレイ時間は本記事の執筆時点で600時間ほど、ネトゲ的にはまだまだ新参者だが、コンシューマーゲームとして考えれば長編のゲームを10本クリアできるくらいの時間を本作に費やしているわけだ。
まず、なぜ今更本作を始めたのかについて話すが、俺は本作の発売当時別のネトゲに人生を捧げていたため、流石に長年親しんだドラクエとは言えネトゲ2本の掛け持ちは厳しいと判断し、見送らざるを得なかったのだ。
それから10年経った2022年、新たに発売された本作のオフライン版をプレイし、そのまま一度はオンライン版にも触れたのだが、この時は「他人が作った強いキャラを3人雇えば自分のキャラは弱くても勝てる」システムに張り合いを感じられず、結局すぐに辞めてしまった。
それから2年近く経って、「自分で4キャラ育てれば解決する」と思い付いてプレイを再開、今度は色々と文句を言いながらもプレイを続けており、そして今に至る。
そんなわけで、サービス開始から12年も経ったドラクエ10を今更プレイした感想を語っていくのが今回の記事だ。
なお、詳細なストーリー面の感想は後でバージョン別に分けて語る予定なので、今回はシステム面などを含めて全体を総括した感想を中心に書いてゆく。
今回ネタバレ要素はほとんど無いが、本作のプレイ経験がある人でないと伝わらない表現を僅かながら含む点はご了承願いたい。
分からない部分は適当に読み飛ばしてくれ。この記事は大体21000字ある。
オンラインゲームとしての『ドラクエ』

とりあえずネトゲとしては普通に楽しめる、というのが第一印象だった。
本作はバージョン1のサブタイトル『目覚めし五つの種族』の名の通り、プレイヤーキャラクターとして人間以外に5つの種族を選択できるが、これがネトゲの舞台と上手く噛み合っている。
単純に全然違う見た目のプレイヤーたちが居るので見ていて飽きないし、同じ種族を選んだ人同士で親近感を持ちやすいのはネトゲ初心者にも優しい点だと思う。
実際、以前行われていたフレンド作り系のイベントを見に行った際には同種族同士でフレンドを募集している様子をよく見かけたし、俺に飛んできたフレンド申請も同種族が明らかに多かった。
ドラクエのコミカルなキャラクターデザインを活かしつつ、そのコンセプト自体がプレイヤーの交流のきっかけとして機能している。
これは本当に上手く考えられている点だと思う。褒めるのが12年遅えよ。

もちろんNPCも種族ごとに多種多様だ。ストーリーの登場人物はもちろん、町の一般キャラクターにも個性的な人物は多いので、好みのキャラを探したりコーデの参考にしてみるのも良いだろう。
オフライン版はSDキャラ化&カメラの高さ固定のせいで「このNPC、ちょっと可愛いのでは?」と思っても観察することすらできなかったので、これはオンライン版ならではの面白さ……と言うか、オフライン版のダメな点だ。

それから本作では他人のキャラクターをNPC戦闘員として雇ったり、逆に自分のキャラクターを貸し出したりできる。
貸し出して自分が何か困ることはないので大抵はダメ元で一応貸し出しておくことになるが、たまに初心者らしきプレイヤーが、大して強くもない自分のキャラクターを雇用していた履歴を見かけると少し嬉しい。
また、時々この貸出時のコメントが個性的な人もいたりするので、たまに暇潰しに眺めてみると楽しかったりする。
個人的に一番気に入っているのは、プクリポで「少し整えました!毛並み良好です!」と書いていたプレイヤーだ。多くのプレイヤーが性能について書いている中、「整えたって装備の耐性とかじゃないのかよ!」とツッコミたくなるような、プクリポらしさを活かしたアピールのセンスが光っている。
そもそも『ドラクエ』は元々一人で遊ぶゲームシリーズだったこともあり他のプレイヤーとの交流に積極的ではない人も多いと思うが(例えば俺)、こうしたコミュニケーションのきっかけ作りや、間接的なコミュニケーションの手段が充実しているのは流石だと思う。
俺はパーティプレイを一切やっていないしチャットも定型文くらいしか打たないが、たまに自分と似たようなコーデをしている人に「いいね」を飛ばしたりはする。
そして、相手からも「いいね」が返ってきた時がこのゲームで一番楽しい。

あと、本作の公式生放送をゲーム中のモニターで視聴できる、なんてイベントもある。こういった要素も、対人関係に縛られたりせずに「他の人と一緒に過ごしている感覚」を味わえたりするので、たとえ協力プレイに対して消極的でもオンラインゲームの楽しさを味わいやすい。
なにせ12年も続いているだけあってコンテンツ量は本当に膨大で、バトル系はもちろん、キャラクターの強さが影響しないコンテンツも大量にある。
ドラクエで定番のカジノではスロットやビンゴに加えてすごろくの協力プレイもできるし、カジノ以外では大富豪やバトエンなんてお遊びもある。
「学校に持っていける」事が最大の利点だったバトエンをわざわざゲーム中でやり込む奴がどれだけ存在するのかは疑問だが、本作については「ドラクエ好きが集まれるテーマパークのような存在にしたい」とのスタッフコメントを見た覚えがあるので、当時の世代の人達が友人同士で昔を懐かしみながら遊ぶような想定なのだろう。
俺は友人がいないので触れてすらいないが、こういったコンテンツも充実しているのは良いことだと思う。

ソロ用のコンテンツも腐るほどあり、バトル系はもちろんミニゲームとしては定番の釣りとか、ハウジングなんて要素もある。そのため、たとえソロプレイに徹する場合でも全てのコンテンツ味わい尽くそうと思ったら軽く一年は遊び続けられるだろう。
実際、既に600時間遊んでいる俺でも、まだ一度も触れていないコンテンツは多々ある。
本作はゲーム自体のパッケージ料金に加え、昨今では珍しい月額料金(一番安いプランで1200円)まで要求してくるが、その程度の金額であれば元を取ってお釣りが来る程度には楽しめると言っていいだろう。と言うか、一般的なソシャゲの10連ガチャを月1回やるだけでも3000円かかることを考えたら、それより遥かに良心的だ。
総じてドラクエに対して、そしてドラクエ10に対して心臓を捧げる覚悟があるのなら、たとえ今からでも始めて損はしない程度に面白い。
それが現状の俺の感想だ。流石に600時間も遊んでおいて「遊ぶ価値なし」なんて言うほど狂っちゃいねえぞ。

ただ、もちろん良い部分ばかりだったわけじゃない。と言うかプレイ時間600時間のうち純粋に心から楽しんでいたのは200時間くらいで、残りの400時間くらいは大体が虚無と苦痛だった。
とにかくネトゲの悪い点として、コンテンツ延命のためにプレイヤーに対して無駄な手間を掛けさせることが多々あるが、それは本作でも非常に多い。
「指定されたモンスターを倒してアイテムを持ってくるだけ」「特定のキャラクターから話を聞くだけ」程度の作業感が強いクエストが連続するくらいは「よくあること」と納得できるが、特に印象が悪いのはストーリーの重要なダンジョンは大体必要以上にだだっ広く、そのくせドルボード(※)が使用不可に設定されていることだ。
※:高速移動用の乗り物。ポケモンで言う自転車やライドポケモン
更に最悪な場合だと、例えば上の画像の「創生の邪洞」は上記に加えてプレイヤーよりも足の早い敵シンボルが多数配置されており、その中にはプレイヤーの方が遥かに高レベルでも追いかけて来るやつがいる。つまり、格下の敵と何度も無駄に戦闘をさせられて、ただ時間を浪費させられる。

ダンジョンのギミックは全体的に謎解きを楽しませようとする気が感じられず、プレイヤーに時間を浪費させる目的で作られていると感じるものが多い。
どういう意味かと言うとギミック自体は単純だが、解いた答えを実行するためにはマップを隅々まで歩いて順番にスイッチを作動させる必要がある……みたいな内容が非常に多い。と言うかほとんど全部そうだ。
1階と2階を往復しながら正しいパターンを探す必要があるが、その1階と2階を移動するだけで毎回1分近く歩かされるようなダンジョンもあり、流石にこの時は最初から攻略を読みながら進めた。本当に「時間の無駄」以外の何も感じなかった。
俺は3キャラ育成しているので、そのカスみたいな時間稼ぎギミックを全部3回やっている。
それ以外にも、普通のドラクエなら無条件で使える機能が本作では制限されていて、開放するためには前提クエストが必須になっているパターンが多い。銀行や郵便局、酒場などの基本機能の開放に関してはクエストのチュートリアルも兼ねているためか非常に簡単だが、持ち物欄の拡張クエストはかなり長ったらしいお使いを何度も要求されるため、これを3キャラ分繰り返すのも本当に苦痛だった。

長寿ゲーの宿命ではあるが各種システムの項目数も膨大になっており、例えば装備品だけでもこれだけの数がある上、錬金強化やアクセサリー合成など様々な強化項目が存在する。
キャラクター強化要素としては他にも定番のスキルシステムの他、本作独自の「達人のオーブ」や、ステータスを強化する「女神の木」なんてシステムもある。もちろん強くなりたければ、これらを全て理解する必要がある。
だが、初見で全部を理解するのはまず不可能だし、そもそもストーリーをかなり進めないと入手不可能な装備や、利用できないコンテンツも多い。
一応そうしたコンテンツのガイドもゲーム中に存在はしているが、そもそもメニュー項目も非常に煩雑になっているのでガイドを発見するためのガイドが必要な状態だ。
この膨大かつ煩雑なシステムを見たとき、おそらく多くのプレイヤーが思うのは「コンテンツが多くて楽しそう!」ではなく「うわ、めんどくせえ」だろうと思う。
「本作に心臓を捧げる覚悟があれば損はしない」と書いたのはこれが大きな理由で、コンテンツ量が多い分、プレイヤーに対して強いられる負担も非常に大きいのだ。

本作には『冒険者のおでかけ超便利ツール』なるスマホアプリが存在する。
これは大雑把に言えば「ゲーム中のコンテンツの一部を、スマホの簡略化バージョンでも完了できますよ(一部要課金)」というものだが、ツール限定の報酬も多数存在するので効率よくプレイを進めたければ本アプリの導入も避けては通れない。
俺はネトゲ歴15年の勘で「これはプレイを続けるなら必須になるタイプだ」と察したので製品版を買った初日にインストールした。
これで外出先でもドラクエ10から離れられない呪いを受けたわけだ。
お前はドラクエ10のために心臓を捧げ、200時間の楽しさのために400時間をドブに捨てられるか?
過去に40000時間くらいをドブに捨ててきた俺には誤差レベルだが、普通の人間はそんな「覚悟を持ってゲームを遊ぶ」必要なんて一切ないので、一般の人におすすめできるとは思わないわけだ。
グラフィック・表現

美しくも死の世界らしい物寂しさが感じられるのが見事
元々は2006年発売のハードであるwiiで動いていたゲームとは言え、流石に何度もリファインされているだけあって基本的には現代でも十分通用するグラフィックになっている。
特にマップはデフォルメされつつもしっかり綺麗で、五種族の町などはそれぞれ違ったテーマ性がある。オルフェアやメギストリスなどのプクリポの町は遊園地のような雰囲気で、ただ散歩しているだけでも結構楽しい。
キャラクター同様、これもオフライン版ではミニチュア化されたマップとカメラの高さが固定された仕様に邪魔をされて今ひとつ風景を楽しめなかったので、今更ながらドラクエのデザイン性を楽しんでいる。

フィールドマップは遠景までしっかり作り込まれており、空気遠近法なども活用されている。
あちこちにモンスターが闊歩している様子も賑やかで、新しい地域で見慣れないモンスターを発見したときはそれだけで少し楽しい。
このモンスターのグラフィックに関しても、モデリング自体が特別に凝っているわけではないが、ユーモラスなモーションで個性が出ている。
ボヨ〜ンと跳ねながら出現し、歩かずに転がって移動するドルイド系とか、盾を構えて小さい歩幅でトコトコ歩くシールドこぞう系とか、2Dの頃にはあまり注目していなかったモンスターにも愛嬌を感じられるのはグッドだ。

それから本作にも仲間モンスターシステムが存在するが、それらのモーションは元のモンスターとは異なる専用のものが作られている。
これが中々面白くて、例えばプリズニャンはツメ系装備を扱える。こいつの短い足でツメ武器を装着したら歩けないんじゃないか?と思うだろうが、一体どうやって扱うのかと言えば普段は腰のあたりに爪を装着しておいて、戦闘時には前足にツメを装備した上で後ろ足一本で立って武闘家の構えを取る。普段は4足歩行のコイツが人間のような構えを取っている様子は中々にシュールだ。
「モンスターズ」シリーズでも一匹ごとのモーションはここまで独自化されていないので、こういった仲間モンスターならではの固有のモーションが見られるのは本作の魅力だ。
ついでにモンスターを「おめかしグッズ」で着飾ることもできるので、ヒゲを付けてダンディにしてみたり、サングラスをかけさせてみたり、自分だけのモンスターとして愛着を持ちやすくなっている。
モーションに関してはプレイヤーキャラクターもバラエティに富んでおり、立ち姿から歩く、走るモーション、戦闘時の動作の一つ一つまで種族と性別ごとに固有のものが用意されている。
これもまた個性が感じられて、色々な種族のキャラクターを見てみたくなる。
片手剣装備時に居合の構えを取るエルフはカッコいいと評判だし、女ドワーフは当初こそ不人気種族だったが、幼い女児みたいなドタバタしたモーションの愛嬌からジワジワと評価が高まって現在ではサブキャラとして人気の地位を築きつつある、らしい。

ただ、この種族ごとのモーションについてはクセの強いものが多いくせに変更不可なのが難点だ。
例えば女ウェディはやたらとグニャグニャした脱力系のモーションになっていて、両手剣で通常攻撃をさせると思いっきり武器の重さに振り回されているド素人のような動きをする。
(一方で呪文発動時のモーションは共通なので、先述のように武器を重そうに持っていたかと思えば、呪文を唱えた途端に突然両手剣を片手で軽々と振りかざしたりする。この辺りは微妙にお粗末だ)
これが、「レベルや武器スキルが低いうちはみっともないモーションだけど、強くなるとシャキッとします」なら良い個性なのだが、困ったことにどれだけ鍛えようと変わることはない。
こんなモーションになっているのは、どうもウェディが「男はチャラ男、女はギャル系」のイメージで作られているのが理由のようだが、ここでウェディの種族説明を見てほしい。

こんな「愛する者を守る時にだけ 本気で戦った」なんて文で締めくくられている説明を読んだプレイヤーの多くは、ウェディという種族について真面目で清廉、神聖な種族のようなイメージを抱くんじゃないだろうか。
実際、転生時のマップに飾られている種族神マリーヌの像を見てもギャルっぽさは無く、清らかな歌姫のようなイメージだ。
それを見て「我らは争いを好みませんが…同胞を守るために戦います!」のような種族だと思ってキャラメイクしたら、出てくるのは「ダチ傷つけるやつマジ許さねーし!」と戦い始め、「よーい…しょっ、おーっとっと!……うわ〜この武器マジおも〜い」と動くギャルが出てくる。
そして、どう足掻いてもこのギャルを更生させることは不可能だ。
先述の通りモーションは種族と性別で完全に固定されており、「シャキっとしたウェディ」とか「落ち着いたドワーフ」なんてキャラクターは作れない。プレイヤーが頑張って工夫し、顔や服装をクールに整えても、モーションの呪縛によりキャラクターイメージは破壊される。
俺が今までの3ヶ月で他のプレイヤーを観察してきた限り、女ウェディは低レベル帯だと結構見かけるのに高レベル帯では激減しているんだが、この脱力系のギャルモーションが嫌で辞めている人が結構多いんじゃないかと思う。(一番多いのは「人間に戻った」だとは思うが)
スタッフが種族の個性を出すためにこだわるのは良いが、プレイヤーのキャラメイクの自由を奪ってまで種族のイメージに押し込められるのはいくら何でも窮屈に思う。そのイメージが初見で読み取れないウェディは特に悪質だ。
と言うか、ストーリー的に主人公は「異種族の肉体に魂が乗り移った元人間」なんだからモーションが移行先の種族になるのはおかしいだろ。

キャラメイクの自由度の低さは本当に本作の悪い点で、一番ひどいのは12年もサービスが続いているゲームなのに顔のパターンが各種族8種しかないことだ。これはサービス開始当初から1種たりとも増えていないらしい。
本作のキャラクターの顔はテクスチャで表現されており、基本的に2Dだ。なので顔パターンを作る制作コストは3Dと比べて明らかに低い。
「各種族に1パターン追加」だけでも人間+五種族の6パターン必要になる点を差し引いても、極端に制作コストが高いとは思えない。それなのにこの体たらくだ。
このゲームのプレイヤーブログなどを多少でも見たことがある人なら「どいつもこいつも同じ顔してんな」と感じたと思うが、仕方ねえんだよ。もともと顔のパターンが少ないんだ。
あと、左右の目を反転で作っているせいでハイライトが左右対称なのは手抜き丸出しだからいい加減何とかしてくれ。
髪型は数で言えば40種あるので多少マシだが、物理演算や貫通対策等が面倒なのか腰まで届くようなロングヘアは一つもない。一番長い髪でも肩より少し下程度の長さだ。
一方でNPCには超ロングな髪型のキャラも存在する。おそらくはプレイヤーのように装備を変更したり派手に戦ったりする必要がないから可能なのだと思うが、どうしても不公平感は抱かずにいられない。

更に言うと本作は、プレイヤーなどの初期バージョンから存在するキャラクターモデルと、近年の新しいバージョンで新規に作られたキャラクターモデルでは品質に明らかな差がある。
自分のキャラクターを頑張って着飾っても、新規のキャラクターと並ぶと自キャラだけ明らかに安っぽい見た目になっているのが分かる。これは本当に気分が良くない。
今更プレイヤーキャラクターのモデルを全部作り直すのは流石に困難だろうし、大量に表示される可能性があるプレイヤーキャラクターは負荷の問題等もあって大幅なクオリティアップは厳しいのだとは思うが、それにしても新規のNPCばかり綺麗な見た目になっていくのはモヤモヤしたものを感じる。ストーリーでも新規キャラクターばかり優遇されているから尚更だ。

それから本作もネトゲらしくキャラクターの外見変更用の装備などがリアルマネーで販売されているが、そもそもパッケージ代+月額料金が必要であることを考えると割高に感じるものが多い。
一度買ったアイテムの使用期限が無いのは良いが、同一アカウント内での使い回しはできない。
見た目にこだわって1キャラの全身を着飾ろうと思ったら2000円くらい飛んでいくのも珍しくないし、ドルボードの外見変更なんて単品で約2000円する。3キャラで使いたければこれだけで6000円だ。
いわゆるpay to win要素は少ないので(無くはない)強くなるために多額の課金を要求されたりはしないが、顔に桜の花びら一枚付けるだけで330円を支払ったときには「こいつ自分のことを基本無料ゲームと勘違いしてないか?」と思った。
そして、それだけ金をかけて着飾っても新規のNPCと比較すると安っぽさにションボリする羽目になるわけだ。

バージョン5シナリオでは冒頭で主人公が魔族に変化するのだが、この際にキャラクターの外見が強制的に魔族の姿に変更され、シナリオの攻略が完了するまで戻せなくなる。
この仕様は自キャラのドレスアップを頑張っている人に対してあまりにもデリカシーが無いと思ったし、何より外見変更用のアイテムを課金で販売しているくせにキャラクターの姿を勝手に変更するのは相当ナメていると感じた。
顔パターンが全然増えない件からも思ったことだが、本作はネトゲの定番だから一応キャラメイク要素を入れてあるだけで、「自キャラに愛着を持ち、キャラメイクしたり着飾ることが好き」なスタッフが誰も居ないのだと思う。
とにかく本作は、製作者がこだわった部分は確かに凝っているが、それを強引に押し付けてくるのが目立つ。
そして製作者が興味の無い部分は徹底して放置するし、プレイヤーの気持ちも考える気が無い。
これは本当に不満点だし、今後も改善は望めそうにない。
シナリオ・演出

ストーリーはとにかく当たり外れが激しい。
面白い部分は本当に面白くて、本編シナリオだとバージョン2の前半部分のストーリーは歴代のドラクエでも最高と言っていいくらいに楽しめた。
好奇心と不安のそれぞれを胸に冒険の旅をして、頼れる仲間や守りたい相手と出会い、幾多の修羅場をくぐり抜け、世界の真実へと迫ってゆく。
そんな物語が次々に味わえて、この時は本当に次の冒険が楽しみで楽しみで仕方なかった。
プレイを始めたのが遅かっただけあって、俺はこの「世界の真実」についてプレイ前からほとんどネタバレされていたのだが、それを差し引いてもなお面白かった。それぐらいのパワーがある物語だったのだ。
サブクエストのストーリーも時々グッとくる内容があり、バージョン3の「ニコニコな大冒険」は15分そこそこで終わるボリュームながら文句無しで本作最高のストーリーだった。
俺はこのクエストを始めた時点でバージョン3のシナリオに全く期待できなくなっていたので「どうせ今回もしょうもないオチだろう」と思っていたのだが、いざ終わらせてみたらその結末の切なさに息を呑んで震えたのを今でも覚えている。

それから各職業の固有クエストは全体的にクオリティが高く、プレイヤーに「この職業で強くなりたい」と感じさせる理由付けとしてしっかり機能している。
特に印象深いのは魔法使いのクエストだ。こいつは魔法の鏡を通じて、姿が見えない魔法使い「リュナン」と通信することで進行していく。
そしてやり取りを続けるうち、リュナンから「一度直接会ってみたい」と提案されるが、いざ会おうとすると主人公は危機に巻き込まれる…といったストーリーだ。
本シナリオは一連のクエスト内の題名として「はじめてのオフ会」なんてものが登場する通り、姿が見えない相手と付き合うことの危険性を示す教育的な要素のある話となっている。(ついでに、このタイトルは地味に「はじめてのおつかい」のパロディにもなっている)
ネトゲという媒体になった本作の舞台を上手く活かした内容だが、ここで重要なのが「説教臭くない」ことだ。
本クエストは「オフ会」の危険性を示しつつも、ただ単に「相手は悪いやつでした!こんな危険性があるからオフ会なんて絶対ダメ!」と押し付けてくるような内容ではなく、しっかりとミステリー的な緊張感と、リュナンというキャラクターへの愛着を感じられる物語に仕上がっている。
本作における魔法使いの必殺技「ミラクルゾーン」はこのリュナンから伝授される設定だが、本シナリオがちゃんと面白いので、その後のバトルでミラクルゾーンを使う度にリュナンのことを思い出して熱い気持ちになれる。

ただ性能を見て機械的に職業を選ぶのではなく、愛着を持ってその職業を続ける動機を与えてくれる。
魔法使いに限らず職業クエストは全体的にそのツボをしっかり押さえており、本作のプレイを盛り上げてくれる。まさに理想的なストーリーだ。
他にも個人的に一押しの職業クエストは、少年漫画的な熱さと「反対の反対」により願いが叶うオチの纏まりが見事な武闘家、ドラクエのシステムだからこそ違和感なく描かれた叙述トリック的な要素を含みつつ、単純に主要キャラのネリムが可愛いデスマスター、基本的におバカなノリでありながら、本作で独自化された職業のイメージをしっかりと描き、ついでに「人の生き方」について問いかけるような要素を含んだ遊び人などがある。
だが先述した通り、職業クエストはどれも大体面白いので、これに限らず全てプレイしてみるのがおすすめだ。スーパースター以外は全部面白いぞ。

さて、当たりの部分の話を書いたのでハズレ部分の話になるんだが、上で書いた部分以外は大体全部ダメだと思ってくれ。
まずバージョン1の頃から感じている不満点だが、本作は子供向けを意識したのか変にコミカルなギャグ要素をねじ込んでくることが多い。
もちろん然るべき場面で息抜きとして用いられていれば良いんだが、本作はシリアスなシーンの真っ最中でも「ここで面白キャラ登場!変な発言!面白ポーズ!」みたいなことを始めて全力で冷めさせてくることが多々あるので本当にきつい。
最近の似たような例で言うなら、DQM3で「エスタークの復活」というシリアスで超重要なシーンを全力で茶化しまくっていたパッゴイ教団のような感じだ。あれで笑えた人なら楽しめる。

これが酷いのがプレイヤーの「しぐさ」が関わってくる場面で、シリアスな場面で「この仕草を使え」と言われて習得するモーションは、大体ギャグに全振りしている。
例えばバージョン3シナリオではドワーフの神「ワギ」が、かつて自身の下した裁定が正しかったのか、与えた罰が適正だったのかとプレイヤーに問う、非常に重要なシーンがある。
そして、ここでプレイヤーが裁定を行う際に使うのが「裁定者の拝礼」という仕草だ。
名前を見てもシリアスな所作にしか思えないが、その実態は「サボテンダーのような腕の上げ方をして、跳ねながら左右にカサカサ動き回る」という人をバカにしているとしか思えない動きだ。これをシリアスな場面で何度も使わされる。トホホ…あたしゃこれじゃ最低者だよ。
同じく、パラディンの職業クエストでは非常にシリアスかつ重苦しい物語のクライマックスに、「大地の竜を目覚めさせる踊り」として伝授されるのが「ふしぎなおどり」だ。
名前の通り珍妙な動きのダンスで、明らかにシリアスな場面で使わせるようなものではない。
制作者はこれで、「本当に彼女を犠牲にするしかないのか?他の方法は…あはは、面白い動き〜w一体どうすれば皆が救われるんだ…!」と人の心が180度の高速転回を繰り返せると思ってるのか?ただ茶化されて冷めるだけだ。

それ以外にも、悔しいときには思いっきり地団駄を踏む、驚いたときは両手を顔の横にやって「どっひゃぁ〜」と言うようなリアクションをする等、とにかくリアクションが大袈裟で、そして絶望的にセンスが古い。
まあ、そもそもドラクエ自体が今ではかなり老人向けのクラシカルなゲームとなっているので多少センスが古いのは愛嬌だとすら思っているんだが、それにしてもビルダーズのようなデフォルメされたグラフィックならまだしも、本作のような高頭身のグラフィックで見せられると見ているこっちが恥ずかしくなるような演出が目立つ。
こういったリアクションを見せたいのか、ムービーシーンではキャラクターの動作が終わるまでメッセージが送れない設定になっているものも多く、台詞→リアクション(3秒待つ)→台詞→リアクション(3秒待つ).……なんてことはザラだ。
ドラクエは長らくキャラクターボイスが無かったが、それゆえに自分のペースで台詞をポンポン読み進められるのは快適さを生んでいる部分でもあった。
それが本作はボイスも無いくせにこのテンポの悪さだ。バージョン5からはムービーにボイスが付いたので「ボイスも無いくせにテンポが悪い」という問題は微妙に解決したが、どっちみちテンポの悪さは改善しろよ。

さて、ようやくストーリーの内容の話だ。先述したように基本的にダメだ。
バージョン2までの範囲は悪い部分でも「無味乾燥」程度のダメさだが、バージョン3以降は大した絆を築いた覚えもない奴が「自分の命に替えても守りたい最高の仲間」のように描写される等のプレイヤーを置いてけぼりにした展開や、どこからどう見ても身勝手な極悪人としか言いようのない人物が「罪を背負ってでも使命を果たす、覚悟を持った傑物」のように描写されるなど、DQM3のベネットのような不快感に満ちたストーリーのオンパレードだ。
俺が現在プレイしているのはバージョン5の序盤だが、バージョン3以降はストーリーへの好感度がひたすら最低値を更新し続けている。
そして、まだ見ぬバージョン6シナリオは世間的に最低の評判で、不快な内容すぎて公式の感想コーナーが大炎上したとの噂だ。楽しくなってきたな!

演出面で共通している問題がムービーにおける主人公の棒立ちだ。
本格的に3D化がされたドラクエ8の頃からメディ婆さんやチェルスのイベントでの棒立ちが度々批判されていた記憶があるが、それから改善どころか明らかに悪化している。
今すぐに敵の悪事を止めに入るべき場面でも頑なに主人公は棒立ちを貫き通して、敵が一通りの悪事を終えて「さて、仕事は済んだしそろそろ邪魔者には消えてもらおうか」と主人公の方を向いたらようやくバトル。このパターンが基本だ。
俺がベタ褒めしたバージョン2前半のシナリオですら、セレドの町後半のイベントやアラハギーロ終盤のあなうめ三兄弟の戦闘後イベントは「いや、なんで止めに入らずに敵の計画遂行を目の前でずっと見守ってるんだよ」とキレていた。棒立ちは本作最大の癌だ。
そして、バージョン4以降はこの欠点がさらなる進化を遂げる。
物語の「主人公」が完全に新登場のキャラクターになり、プレイヤーキャラクターはその隣に立っているだけの正真正銘の置物と化すのだ。
イベントムービーでは新キャラとモブが完全に二人だけで会話を進め、プレイヤーには目線すら向けない。
そして、会話が終わると「じゃあ行くか」と言われて一応主人公も同行する。本当に大体こんな感じだ。
そしてバージョン5ではいよいよストーリー上でも正式にプレイヤーが空気扱いされ始める。ここまで来ると、もう一周して笑えるレベルだった。

このプレイヤーの棒立ち・空気化に関しては他のプレイヤーの意見が気になって検索したことがあるんだが、公式の感想コーナーでもずっと昔から「主人公が何もしなさすぎ」「ムービーでの棒立ち何とかして」との不満意見は書き込まれていた。本記事執筆時点で最新のバージョン7.1の感想欄でも指摘されている。つまり今でも全く改善されていない。
つまり、この棒立ち問題はスタッフが強い意志を持って意図的に空気化させているわけだ。
まあ、スタッフは古臭いポリゴンのプレイヤーキャラクターなんかより、新しくデザインした綺麗な見た目の新キャラの活躍を見てほしいんだろう。
ここで考えてほしいんだが、「ドラクエ」はプレイヤーの感情移入を妨げないために主人公を喋らせていない作品だ。
つまりキャラクターが勝手に動いているのを見ているだけじゃイヤで、「自分が物語の主人公として、物語を引っ張っていく感覚を楽しみたい」と思う人のためのシリーズだったはずだ。
なのに、手塩にかけて育てた自分のキャラクターは棒立ちのデクの坊にされて、誰だか知らない新キャラの活躍ばかりを延々見せられる。こいつは明らかにシリーズの強みを捨てに行っている。

ついでに言えばバージョン4以降のストーリーは本編シナリオのイベントすら乙女ゲー臭の強いものが目立ち、「困っている村人を助ける」「囚われのお姫様を救い出す」とかじゃなく「俺様系男子に振り回されちゃってドキドキ♥」みたいな内容が露骨に増えている。
バージョン2くらいの頃から女性ウケを意識したイケメンキャラの投入は度々行われていた(やり方が雑すぎて時々炎上していた)ようだが、なぜストーリーまで乙女ゲーにする必要がある?
乙女ゲープレイヤーの女性だって、あえてドラクエを遊んでいるときには「ドラクエらしい物語」を楽しみたいんじゃないのか?
まあ、スタッフが頑なにそういう物語を作っている以上は、それが本作らしさだと言いたいんだろう。

ドラクエの良い点は捨て、悪い点はパワーアップさせた。それが本作のバージョン4以降のシナリオだ。
俺はバージョン3のシナリオをプレイしたとき「これより下はないだろう」と思ったんだが、バージョン4以降をプレイした今では「バージョン3はプレイヤーが主人公として扱われていただけ遥かにマシだった」と思っている。なぜ主人公が主人公として扱われるだけで喜ばなきゃいけない?
バージョン5まで進めている俺の立場から言うと、本作は体験版で無料で遊べるバージョン2までの範囲だけプレイするのが一番賢いと思う。
無料で一番楽しい部分が遊べるなんて良心的なゲームだな!
戦闘システム・ゲームバランス

ネトゲになっただけあって戦闘システム面は歴代のドラクエと大きく異なっているが、根っこの部分は実際それほど変わっていない。レベルを上げてキャラクターを強くするのが基本だ。
コマンド入力がリアルタイム制になったとか、アクション性が取り入れられたとか色々と特徴はあるが、ストーリー攻略程度ならレベルや装備・スキル等を順当に強化すれば普通に勝ち進めるので、あまり複雑なことは要求されない。
強力な装備を手に入れたり、新しい呪文や特技を習得して一気にキャラクターが強くなったときはワクワクするし、様々な職業を見比べて自分なりの最強パーティを考えるのも楽しい。
そういった点では、ドラクエの楽しさは順当に継承されている。

魔法使いの職業コンセプトが崩壊するほど強い
しかし、これもまた長寿ゲーの宿命だが、どんどんとキャラクターや装備の性能がインフレして大味なバランスになっている感は否めない。
例えば俺がメインでやっている職の魔法使いは、本作では「素のスペックは貧弱極まりないが、強化スキルをいくつも重ねることで高火力の魔法を高速で乱射できる」といった感じの、瞬間火力の爽快感に特化した職業となっている。多分。なっていた。
だが、現在では魔法使いに必須級の強化効果を常時付けることも難しくなくなった。その結果、もはや強化されている状態の方が普通のような感覚になって、「手間をかけて強化を重ねることで最強火力を出す爽快感」のコンセプトは結果的に潰れてきている。確かに常時強いのは快適ではあるが、同時に味気なさも感じている。

一番不満なのは武器の格差が大きすぎることだ。例えば魔法使いの武器は両手杖・短剣・ムチの三種だが、これは 両手杖>>短剣>>>>>>>>>>>>ムチ くらいの格差がある。
明らかに両手杖が「メイン武器」として想定されており、一応短剣は場面次第で両手杖より使える可能性もあるが、ムチは何の長所もない完全な死に武器と化したまま全く強化されていない。
せっかく自分で武器を選択できるシステムがあるはずなのに、実際には「メイン両手杖・サブ短剣」以外の選択肢が無い。
なのでスキルシステムは実質ハリボテだ。
俺は僧侶キャラに棍を装備させているが、これは完全な趣味だ。実用面で考えた場合、僧侶にスティック&盾以外の装備は完全に論外と言っていい。
僧侶が棍を持つ利点はスティックよりも火力が出せることなんだが、強敵戦での僧侶は回復と補助で忙しいので攻撃に回る余裕なんてほぼ無く、利点が全く機能しないのだ。
スティックよりも回復力で劣り、スティックの優秀な補助スキルも使えず、盾が持てないので耐久力でも劣る。攻撃力では勝るが、そもそも攻撃しないので無意味。これが棍僧侶だ。
なお僧侶の武器は他に槍が存在するが、これは棍よりもさらに弱い。棍は「どうしても僧侶が攻撃に参加しなければいけない一部コンテンツ」ではギリギリ使う価値があるが、槍はそれすら無い。
一応、会心技の一閃突きがあるので僧侶でメタル系スライムを狩るなら使えなくもないが、そもそもメタル狩りにヒーラーの僧侶を連れて行く奴はいないし、メタル狩りのためだけに槍を持つ僧侶もいない。
こんな惨状だが、棍も槍もスティックに並べるような強化は行われる気配がない。
つまり運営的には「スティック使えばいいじゃん」ということなのだろう。

だが、せっかくの「武器を選択する楽しさ」を潰したまま放置しているのは本当に意味不明だ。
俺が僧侶に棍を持たせているのは「棒術を使いこなす武闘派僧侶」がカッコいいと思ったからだ。そういったキャラクターイメージを大切にしたいプレイヤーは他にもいるだろう。
なのに僧侶はスティックを使う前提で設計されており、棍メインの僧侶なんて運営からも見放されているのが悔しくてならない。
と言うか、スティック僧侶って何だよ。ドラクエの回復役は「僧侶」だ。白魔道士でも薬師でもない。神に仕えるお堅い聖職者のはずだ。本作の僧侶クエストでもそうだったろ。
なのに実態は魔法少女イメージのスティックを持って、キラキラポン☆とか言ってるのが最も一般的な僧侶の姿なのか?
棍棒や槍を持って前衛で敵をぶん殴っている武闘派の僧侶より、「盾が持てるから」というシステム的な利点を味方に付けたおかげでスティック僧侶の方が遥かにタフである違和感を受け入れなきゃいけないのか?

俺は耐えられなかった。
なので今は棍僧侶をやめて棍デスマスターとして再育成した。
既存キャラのストーリースキップが実装されたおかげでサブキャラはバージョン6までの地域を開放できたのが追い風で、レグホンを半日ほど狩るだけでレベルは最大になった。これで公式粗大ゴミの棍僧侶とお別れだ。
なお、棍が使える職としては他に武闘家と旅芸人、そして占い師が存在するが、棍を使いたくてもこの3つから選ぶ選択肢はなかった。
武闘家は単純にヒーラーを担当できず、旅芸人はブーメラン一強すぎて僧侶と同じ問題を抱えているからだ。
それでは占い師はどうか。この職はヒーラー役も可能で、職の武器として棍の立場も悪くない。
しかし、占い師も候補には挙がらなかった。何故かって、占い師が本作最悪の欠陥職だからだ。

この職はタロットカードを集めてデッキを組み、戦闘中にそれを使用することで様々な効果を発動できる。
タロットの効果は強力だが、当然ドローには運が絡むので常に欲しい効果を使えるわけではない。「今ある手札」でどう立ち回るかを問われる、カードゲーム要素を含んだテクニカルな職だ。
……だが、このテクニカルな職をAIに制御させるのが面倒だったのか、あるいは単にタロットデッキのデータを保存する容量をケチったのか、サポート仲間として雇った占い師はタロットカードを一切使わない仕様になっている。
最大の特徴であるはずの能力が封印されている。魔法が使えない魔法使い状態だ。
サポート仲間として使うつもりでサブキャラを育てている俺が、この職を選べるはずもない。
占い師が特殊な職である以上、どこかで不自由な点が出ることは仕方が無いとは思う。
しかし、サポート仲間は本作の基本システムだ。期間限定のイベントとか、特殊な外伝コンテンツじゃない。
基本システムすら使えない欠陥品を正式な職業として実装するなよ。
誰だ、育てられないのに産んだ奴は。
こんな扱いを受けている以上、今後のコンテンツでも「占い師は参加不可、あるいは参加できるが致命的な制限付き」といった扱いをいつ受けるか分かったものじゃない。
ただでさえタロットカードはレベルやスキルと別に集める必要があって育成コストが高く、もちろんプレイヤーが占い師を使いこなすために把握しなければならない情報も多いのに、それだけ苦労して育てても常に公式から締め出しを喰らう危険性を背負っている忌み子。それが占い師だ。
占い師のコンセプトや職業イメージに惹かれてメイン職に選んでしまったプレイヤーはきっと日々運営に対する殺意に身を焦がしていることだろう。
もしも俺がDQ10の公式生放送に呼ばれた際には、この件を話題にして「さすが天下のドラクエはんの技術力は結構どすなぁ」と嫌味を言う所存だ。呼ばれるわけねえだろ。

デスマスターは良い。武器スキルが全部空気なので、武器のパッシブ効果だけは最強クラスである高レベル棍の利点が活きる。そしてデスマスターは元々盾を扱えないので防御面で劣ることもない。
お前もデスマスターをやれ。職業クエストのネリムは可愛いし、身長が2メートルくらいある爆乳お姉さんのデズリンも出てくるぞ。
余談だが、デズリンがこんな人の域を超えたサイズになっているのはネリムと身長差を作りたかったからではないかと推察している。
ネリムは明るく子供っぽい言動のキャラで、見ての通り服装も小学生みたいなセンスだ。
しかしシナリオ後半でデスマスターの衣装に着替えると分かりやすいが、彼女は「人間女性・大人」の体格になっている。年齢についてストーリー中で明言はされないが、普通に見た目通り大人と考える方が自然だろう。

なぜネリムがこんなアンバランスな人物になったのか考えると、おそらく「死」が題材となっているデスマスターの物語を、あまり重苦しい雰囲気にしたくなかったのだろう。だから彼女を明るく子供っぽい人物像にして中和しようとした。
だが、彼女を本当に人生経験の少ない子供にしてしまったら「子供が遊び感覚でやっている」ように見えて、生や死を取り扱う物語として重みがなくなってしまう。
だからネリムは「子供のように明るい大人」になった。
対するデズリンはデスマスターの師匠として、落ち着いた包容力のある人物となっている。(いわゆる「あらあら」系)
このデズリンが、ネリムと同じくらいの身長だったら格好が付かないわけだ。かと言って、先述の理由でネリムの方を小さくするわけにはいかない。
そうなるとデズリンを巨人にするしかなかった、というわけだ。
まあ、これは完全に俺の根拠の薄い考察だ。
もしかしたら、単にスタッフが「え?普通に身長と胸の大きい女性が出したかっただけですけど?」と明かす日が来るかもしれない。その時は俺を笑ってくれ。

随分と脱線したが戦闘システムの話に戻ろう。
本作にはアクション要素が取り入れられている。
敵の攻撃の一部を移動して回避できるほか、敵と押し合い(通称:相撲)が可能なのが大きな特徴で、前衛の戦士などが相手を押すことで後衛の仲間に敵の攻撃を届かなくして守る、なんてことが可能になっている。
とは言えAI操作の仲間が的確に敵の進路を妨害してくれるわけでもなく、そもそも高レベルのボスは重さ特化のパラディンでもなければ全然押せない相手だらけなので、俺がこのシステムを意識することはほとんど無い。
唯一意識的に活用しているのは、低レベルの職をキリンジやレグホンで育てる際に仲間に引っ掛けながら逃げることで自分の生存時間を伸ばすときくらいだ。
このシステムを悪い意味で一番意識するのは敵と壁の間を通り抜けて裏に回ろうとしたら自キャラが「空間」を押し始めて移動できなかった時だ。
押し合いが可能なシステム上、互いの接触判定が大きめに作られているので時々こうなる。そして押し始めと押し終わりにはそれぞれ1秒ほど硬直するので、一度でも引っかかると結構なストレスだ。
せっかくソロでも楽しめるゲームなのに、主要なシステムがソロではストレスの原因になることの方が圧倒的に多いのは何とも悲しいものがある。
そして、AI操作時の仲間があまり賢くないのも本作の大きな欠点だ。
より正確に言うなら、頭が悪いと言うより指示できる作戦が少なすぎるのだ。
本作はリアルタイム制やアクション要素の導入により、過去のドラクエと比較しても遥かに戦闘が複雑になった。
過去作のように完全なターン制で、前衛キャラは通常攻撃をひたすら行うだけだった時代とは違うのだ。戦士だって複雑な仕様のスキルを多数使うのが本作だ。
なのに、作戦が「ガンガンいこうぜ」「バッチリがんばれ」「いのちをだいじに」の実質三択で足りるわけねえだろ。
(一応他に「いろいろやろうぜ」「MPつかうな」「おれにまかせろ」が存在するが、これらは有効な状況が限定的すぎて滅多に使わない)

せめてモンスターズのように使用する特技を細かくセッティングさせてくれれば良いのだが、そんな機能は無い。
僧侶は何故かほとんど効果のないズッシードをやたらと高い優先度で使う思考があるんだが、これを止める手段は無い。
攻撃特化の作戦である「ガンガンいこうぜ」でも、長期戦での最大火力を狙うのか、速攻で敵を片付けに行くのかの指示なんてできない。
なので1ターンで戦闘が終わる相手に対して魔法使いが魔力覚醒だけ使って終わる、天地雷鳴士が幻魔を呼ぶだけ呼んで終わる、なんてことを戦闘の度に繰り返したりする。
ドラクエのAIは「人が操作しているような暖かさ」を重視してわざと不完全にしている、というのは昔から言われている事だが、これが人間らしい暖かさか?俺の顔は怒りで熱くなってるが。
AI操作を常にプレイヤーの思い通りにしろなんてのは無理な話だろう。
それに本作はネトゲである都合上、AI操作がプレイヤー操作より優秀になってしまったらプレイヤー同士でパーティを組む利点がなくなってしまう。だから多少の不完全さは仕方がない。
だが、それにしたって無駄な行動を平気で繰り返すAIを止める手段がないのは流石にストレスが溜まる。
魔法使いが魔力覚醒だけ使って終わる問題はソールワンドの登場で結果的に解決したが、僧侶のズッシードは本当にどうしようもない。実際のところ、俺が棍僧侶をやめた理由はこの無駄なズッシード優先思考が鬱陶しかったのも大きな理由だ。
今度はデスマスターが死霊召喚だけで戦闘を終えるストレスを背負う可能性もあるが、その時はもう知らん。
やるな。俺はやるが。

本作は発表当初から「ドラクエは一人でやるもの。ネトゲ化するなんてゴミ」と遊びもしない自称ファンからボロカスに批判されていた。
俺が今更ながら本作をプレイしたのは「10だけ遊んでいないせいでそうした連中と同一視されたら嫌だから」というハナクソみたいな見栄もあったりする。
どうだ、未だにDQ10に触りもせずにファンを自称している老人ども。オフラインだけ遊んで「10もプレイしました!」と胸を張っている半端者ども。そしてバージョン2とか3程度で引退して本作を完全に忘れた元プレイヤーたち。俺は今オンラインを600時間やってるぞ。
(600時間もやってるくせにシナリオが最新まで進んでいないのは内緒だ)
そして600時間遊んだ上で言うが、本作は「ドラクエ」だった。
お世辞じゃあない。ちゃんとドラクエの良い点はオンラインでも変わっていない。悪い点も変わっていない。

まだ書いていない点で言うと、例えば本作も新規のBGMは良い曲が多々ある。個人的に通常ボス戦のBGM「渾身の力を込めて」と、プクリポのフィールドBGM「花の民プクリポ」は歴代でもトップクラスに気に入っている。
プクリポに限らず五種族のフィールドBGMは全て固有のものが用意されていて、音楽でも種族の個性を味わうことができる。
本作を始めたばかりの頃はルーラ地点のブックマークのためにだだっ広い各地のフィールドをひたすら走り回るのがプレイ時間の大半を占めるが、その虚無の時間に耐えられるのは良質なBGMの効果が小さくない。
しかしドラクエの悪い点であるBGMの使い回しも目立っており、バージョン2の時点で早くも新規のBGMは絶滅危惧種だ。
俺はアラハギーロ王国に到着して新規のBGMが流れてきたとき、それだけで少し感動した。それと同時に、「リメイク作品でもないのに、なぜ新規のBGMが聞けただけで喜ばなきゃならんのだ」と情けなさと怒りも感じた。
本作の新規BGMと共に勇者が覚醒、盛り上がってきた!と思っていたところで、ボス戦が始まったら過去作の使い回しBGMが流れて盛大にズッコケた事もあった。

腐っても鯛だ。
まだ良い所はある。良い所は本当に良い。
だから俺は腹痛を我慢しながら、9割くらい腐った鯛を食っている。そして、時々まだ鮮度を保った部位を発見したら涙を流しながら味わうんだ。
だが最初から新鮮な料理を食べるに越したことはないので、こんな事をするのは鉛筆より先にコントローラを握って、ドラクエで日本語を覚えた(本当)俺みたいな異常者だけで十分だ。
色々と書いたが、未だ俺は本作をメインシナリオすら最後まで進めていない。だからまだまだプレイは続く予定だ。
現在進行中のバージョン5シナリオはプレイヤーが完全に空気扱い、次なるバージョン6は評判最悪、頼みの綱だった現行のバージョン7は俺の中で最強不快キャラの二大巨頭であるメレアーデとシオンの再登場が判明しており既に期待は地の底を掘り進んでいるが、それでも今更退く気は無い。
毒を喰らわば皿までってやつだ。
ここまで来たら、DQ11の発売後しばらく経った頃に「終わらないドラクエ」と色々な意味で間違ったプロモーションを行っていた本作が一体どうやって死んでいくのかを見届けるまで戦ってやる。

というわけで今回の記事はこの辺りで締めるが、ストーリーに関しては今後改めてバージョン別の感想やコンテンツ別の感想(職業クエスト等)を細かく書いてゆく予定だ。
おそらくバージョン3以降は大体同じような不満を書き続けることになると思うが、ヒマな奴は付き合ってくれ。
俺はレグホンを狩る仕事に戻ることにする。
このページで利用している株式会社スクウェア・エニックスを代表とする共同著作者が権利を所有する画像の転載・配布は禁止いたします。
(C) ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.