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海運業、(9110)NSユナイテッド海運の株価の見通しは? 割安株の探し方 vol.29

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※これまでの記事はこちら⇒割安株の探し方シリーズ(記事まとめ)



 初回の記事で僕独自のスクリーニング基準で抽出した銘柄のうち、『9業種の割安銘柄を一挙分析! 割安株の探し方 vol.25』の記事で9セクター(業種)を一挙に見ました。

 スクリーニングの結果、9業種9銘柄が抽出されましたが、買いを検討できそうな企業が6社ありましたね。

 今回の記事では、6社のうち海運業である(9110)NSユナイテッド海運について、今の株価で買うべきか否か、詳細を見ていきたいと思います。



① 『海運業』 セクターの概要

 NSユナイテッド海運が属する『海運業』は、その名の通り海運業者が名を連ねています。

 海運業は日本の海外物流の9割を占めるほど、重要な業種になります。


 海運業セクターの時価総額上位3社は、以下のようになっています。
※2019年12月3日終値

【1】商船三井(3,505億円):PER 8.69倍、PBR 0.69倍
【2】日本郵船(3,266億円):PER 12.47倍、PBR 0.69倍
【3】川崎汽船(1,796億円):PER 16.21倍、PBR 1.54倍
【4】NSユナイテッド海運(549億円):PER 6.92倍、PBR 0.61倍

※東証一部 海運業の平均PER -倍、平均PBR 0.6倍(2019年11月末)

 

 時価総額1位の商船三井でも3,500億円程度と非常に規模の小さいセクターです。

 以前見た金属セクターも1位のLIXILグループが6,050億円でしたが、それよりもさらに低い数値になっています。

過去記事『金属製品2社(駒井ハルテック、サンコール)の株価の見通しは? 割安株の探し方 vol.24』

 

 上位3社でシェアの大半を占める珍しい業種とも言えます。

 ちなみに、全セクターの中で唯一なのですが、海運業セクターは東証一部平均の利益が赤字のため、PERがブランクとなっています。

 なぜ赤字かというのは、後ほどご説明します。

 

 それでは次にNSユナイテッド海運がどんな企業なのかを見ていきましょう。



(9110)NSユナイテッド海運ってどんな会社なの?

 NSユナイテッド海運は、その名の通り海運業セクターに分類される企業で、主に外航・内航の海運事業を行っています。

 2010年10月に新和海運が同業の日鉄海運と合併して、NSユナイテッド海運となりました。

 2019年9月末時点で、日本製鉄(旧 新日本製鉄) 33.36%日本郵船 18.35%がそれぞれ大株主になっており、この2社で過半数の株を保有しています。

 合併前の日鉄海運が日本製鉄のグループ会社なので、NSユナイテッド海運も日本製鉄が1/3ほど株を保有しているわけです。

 余談ですが、以前取り上げた鉄鋼業の合同製鐵日本製鉄系(17.5%保有)でしたね。
過去記事『(5410)合同製鐵の株価の見通しは? 割安株の探し方 vol.21』


 NSユナイテッド海運の収益としては、以下の3つのセグメントに分かれています。

(1)外航海運事業 83.6% ※外航貨物海上運送事業及びこれに関連または付帯する事業(撒積船による鉄鉱石・石炭・鉄鋼製品・非鉄鉱石等の輸送、タンカーによる原油・LPG等の輸送、及び船舶の貸渡し等)

(2)内航海運事業 16% ※内航貨物海上運送事業及びこれに関連または付帯する事業(国内水域における撒積船による鉄鋼製品・石灰石・セメント等の輸送、タンカーによるLPG・LNG等の輸送、及び船舶の貸渡し等)

(3)その他事業 0.4% ※陸運業及び情報システムの開発・保守業


 収益の8割以上が外航海運事業となっています。

 ビジネスモデルとしては、非常にわかりやすい企業ですね。



(9110)NSユナイテッド海運の規模ってどのくらい?

 それでは次に、NSユナイテッド海運の定量情報を見ていきましょう。

●時価総額:549億円 ※2019年12月3日終値
●売上:1,510億円 ※2019年3月期
●営業利益:89億円(営業利益率 5.9%) ※同上
●当期純利益:93億円(最終利益率 6.1%) ※同上
●連結従業員数:全社合計 621人 ※2019年3月末


 固定資産(船舶)の売却益が特別利益として32億円ほど計上されていることもあり、税引き後の当期純利益が営業利益を上回っています。

 営業利益の1/3もの固定資産売却益が計上されるというのも、船舶など高額の固定資産を所有する海運業独特のものかもしれないですね。



(9110)NSユナイテッド海運の業績と配当金の推移は?

 直近3年の実績及び今後の見込みは以下のようになっております。

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 2019年3月期だけやや頭1つ抜けておりますが、それを除くと一株利益は右肩上がりで、配当は維持と言えますね。

 2019年3月期は前述の通り船舶の売却益が32億円計上されていましたので、この期がイレギュラーだったと言えます。

 

 以下は月足チャートになります。

画像2

 波は激しいですが、現在は2,500円近辺に収斂していますね。

 上下どちらにも振れそうな株価だと思います。

 

 ちなみに、2019年12月3日終値ベースで、NSユナイテッド海運の各種指標は以下のようになっています。

⚫︎PER:6.9倍 ※東証一部 同セクター平均    -(2019年11月末)
⚫︎PBR:0.61倍 ※東証一部 同セクター平均   0.6(同上)
⚫︎配当利回り:4.58%

 PER、PBRともにかなり低いですね。

 ただ、そもそも海運業セクター自体の指標が低く、割安水準になっていると言えます。


 では、なぜ海運業セクター及びNSユナイテッド海運の株価は割安のまま放置されているのでしょうか?

 次は、リスクについて見ていきます。



(9110)NSユナイテッド海運のリスクは?

 NSユナイテッド海運のリスクについて見ていきましょう。

 大きく、以下の3点が挙げられます。


(1)景気に敏感な業種であるリスク

 NSユナイテッド海運の主要業務である海運事業における運賃や用船料世界経済に非常に影響を受けます

 以前分析記事を書いた三菱UFJオリックスなど金融業界も景気の影響を非常に受けますが、海運業も同様です。

過去記事『(8306)三菱UFJ FGの買いタイミングはいつ? 割安株の探し方 vol.7』
過去記事『(8591)オリックスの株価の見通しは? 割安株の探し方vol.19』

 

 実際に、経済の先行指標としてバルチック海運指数という指数もあるくらいです。

参考『世界経済の先行指標となるバルチック海運指数とは?』

 

 世界経済の先行きを予測するのは非常に困難であるため、景気敏感であることはリスクであると考えます。


(2)原油価格の変動リスク

 船舶の燃料油は当然のことながら原油価格の変動の影響を受けます。

 資源系の総合商社なども原油市況によって株価が大きく動いたりしますが、これも世界経済同様、予測することが困難なので、リスクと言えます。


(3)固定資産の売却損計上リスク

 船舶の技術革新などにより、固定資産としてすでに保有している船舶が急速に陳腐化した場合、減損損失や売却損が発生するリスクがあります。

 前期は船舶の売却益で32億円も計上できたので良かったですが、逆に32億円の特別損失の計上などがあれば、株価は暴落すると思われます。

 NSユナイテッド海運もBSの固定資産を見る限り、実に1,400億円もの船舶を保有しています。

 仮に1%分の14億円でも損失になってしまったら業績に与える影響は大きいです。

 

 また、海運業の平均利益が赤字になっているのもこの固定資産関係の損失が原因です。

日経新聞『海運大手、2社が大幅赤字 前期、不採算用船で損失』

 

 このような特別損失については、PERの解説記事でも触れていますが、非常に影響が大きいので現状のPERが意味を成さなくなります。

過去記事『PERの意味は? なぜ重要? 注意点から活用方法まで元証券マンが簡単解説!No.2』



 以上の3つの理由から、NSユナイテッド海運のPBR、PERは割安な水準で放置されていると言えます。



(9110)NSユナイテッド海運は今買うべきか否か?

 以上、NSユナイテッド海運について見てきました。

 個人的には、リスクは複数あるものの、各種指標が割安であることと業績推移を鑑みて、買い検討は可能だと考えます。

 ただし、世界経済の影響を受けやすいというリスクを鑑みて、保有は少数にしておくか、日経平均売りなどでマーケットに対してヘッジをかけておくのが望ましいと思います。



まとめ

 今回の記事では私独自の基準でスクリーニングをかけた銘柄のうち、海運業の(9110)NSユナイテッド海運について見てきました。

 結論としては、リスクはあるものの買い検討は可能と判断します。より詳細検討し、タイミングを見計らって買うのが良いでしょう。


 次回の記事では、vol.1の記事で抽出した割安銘柄のうち、倉庫運輸業(9366)サンリツについて見ていきます。



※これまでの記事はこちら⇒割安株の探し方シリーズ(記事まとめ)

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