化学業2社(昭和電工、タキロンシーアイ)の株価の見通しは? 割安株の探し方 vol.45
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株まとめ@元証券マンと言います。
初めての方は、こちらの自己紹介記事をぜひご覧下さい。
これまでの株価分析記事の一覧はこちらです。
vol.32の記事で、2019年12月6日の株価により、以下の基準で銘柄スクリーニングを行いました。
(1)東証一部上場
(2)予想PERが8倍以下
※8倍以下の理由はこちら
(3)実績PBRが1倍以下
※1倍以下の理由はこちら
(4)配当利回りが4%以上
※配当利回りの注意点はこちら
(5)1単元が100万円以内
その結果、13業種35社が抽出されました。
今回の記事では、その中で4番目に抽出数が多かった、化学業の銘柄について見ていきたいと思います。
①化学業の概要
あまり馴染みのない業種かとは思いますが、化学メーカーとはそもそも、化学反応を伴う生産プロセスにより財の生産、供給を行う企業全般のことを指します。
化学製品は樹脂やゴム、合成繊維の総称で、石油や天然ガス由来の物質を合成や重合を繰り返して製品にします。
身近なところですと、5G関連の電子部品材料に使われる酸化チタンや自動車関連の機能性材料などが今後重要になってきます。
※参考 日経新聞『「CASE革命」主役は素材 化学メーカーなど競う』
また、化学セクターの上位を占めるのはほとんど総合化学メーカーなのですが、これは一般的に基礎原料から川中、川下の各種製品までの一貫生産を行う企業のことを指します。
ちなみに、化学業の時価総額上位3社は以下のようになっています。
(2019年12月24日終値時点)
(1)信越化学工業:4兆9,895億円 PER 15.8倍、PBR 1.96倍 ※塩化ビニル樹脂、半導体シリコンウエハで世界シェアトップ
(2)花王:4兆4,078億円 PER 27.1倍、PBR 5.54倍 ※トイレタリーで国内首位、化粧品の比率も高い
(3)資生堂:3兆1,656億円 PER 39.1倍、PBR 6.5倍 ※化粧品国内大手
※2019年11月末、化学業平均:PER 16.0倍、PBR 1.2倍
※2019年11月末、東証一部平均:PER 17.4倍、PBR 1.2倍
化学業の平均は、東証一部平均とほぼ同水準ですね。
化学業全体として、過度な期待がされていない一方で過小評価もされていないと言えるかもしれません。
また、化学セクターは全セクターの中で最も日経平均と動きが似ているとも言われており、この事実は投資判断を行う上でも重要になるかもしれません。
※参考『―相似形描く日経平均と化学株、意外な上げ相場のシナリオ―』
ただし一方で、花王、資生堂の2社は化学メーカーというよりはB to Cの消費財メーカーであり、食品メーカーなどと同様に海外展開などもしやすいため、指標は平均よりもかなり高くなっています。
では次に、具体的な割安銘柄について見ていきましょう。
②スクリーニングにより抽出された化学業の割安銘柄は?
vol.32の記事(2019年12月6日付)でスクリーニングを行った結果、以下の化学株が抽出されました。
※時価総額は2019年12月24日時点の終値です。
(4004)昭和電工 4,513億円 ※石油化学、化学品、無機、アルミニウム、エレクトロニクスなどの化学メーカー。黒鉛電極で首位。
(4215)タキロンシーアイ 719億円 ※プラスチック加工の大手で、IT向けの樹脂板で首位。樹脂系建材でも高いシェアを誇る。
時価総額でみると、規模の異なる2社となっています。
扱っている商材が化学製品なので、概要を見てもなかなかピンときませんね笑
化学メーカーについては、以前も一度銘柄スクリーニング及び業界分析を行なっているので、ぜひ合わせてお読み頂けると嬉しいです。
③各銘柄の業績及び配当推移は?
それでは、各銘柄の一株あたり利益及び配当金の推移を見ていきましょう。
(4004)昭和電工:一株利益はやや波がありながらも右肩上がり、配当増配
(4215)タキロンシーアイ:一株利益は概ね右肩上がり、配当増配
2社とも、業績及び配当の推移は好調ですね。
にも関わらず、両者とも株価が伸び悩んでおり、PER、PBRが割安になっております。
なぜこの2社の株価は伸び悩んでいるのでしょうか。
④なぜ化学株は割安なのか?
それでは次に化学株が割安な理由を見ていきましょう。
過去記事でも触れていますが、大きく以下の2つのリスクが要因となっています。
(1)アジア経済の減退リスク
化学業界の最近の動向としては、中国経済の減速や米中貿易摩擦のあおりを受けて、収益性の高い汎用化学品(アンモニア、ポリエチレン、エタノールなど)の採算が悪化しています。
実際に、三菱ケミカルや住友化学の主力製品であるメタクリル酸メチルの市場価格は18年夏から19年春にかけて3割近く下落しています。
中国の景気動向については、過剰債務問題なども水面下では存在します。
※『中国の不良債権問題、金融危機を回避できるか-日本のバブル期を想起(2019.12.23)』
最近の日経平均はそんなことは梅雨知らずと言った様子で上昇していますが、リスクが顕在化した際は一気に暴落することも考えられます。
(2)価格競争リスク
ビジネスモデル特性上、『ブランド』が価値を持ちにくい業種のため(製品のコモディティ化)、海外企業の国内市場参入、関税引き下げなどによる輸入品の流入、ジェネリック品の台頭などにより各社厳しい価格競争に晒されています。
※参考 strategy &『化学業界の動向 2018-19年』
これは一朝一夕でどうにかできるような問題ではないので、なかなか根深いリスクと言えそうです。
以上、2点を見てきました。
ちなみに、(4004)昭和電工については、黒鉛電極バブルの先行きという大きなリスクがあります。
詳細は過去に行った昭和電工の株価分析記事をお読みください。
黒鉛電極についてはこちらにさらに詳細を記述しています。
⑤投資対象となり得る化学株はあるか?
ここまで、化学株2社が割安になっている理由について見てきました。
これらを踏まえ、僕個人としては今回挙げた(4004)昭和電工と(4215)タキロンシーアイは、いずれも投資対象となり得ると考えます。
化学業界自体のリスクはありますが、2社とも業績が伸びているのは事実ですし、中国経済のリスクなどはその他の業界にも多いに影響がありますので、化学株固有のものとは言い切れません。(黒鉛電極の需給はまた別ですが)
全体が上がっている今、数少ない魅力的な銘柄だと考えます。
⑥まとめ
今回は、化学株の2社について見てきました。
結論としては、(4004)昭和電工と(4215)タキロンシーアイの2社とも、投資対象となり得る銘柄だと考えます。
次回は、本記事で取り上げた(4215)タキロンシーアイについて、さらに詳細を見ていきたいと思います。
次回もよろしくお願いします。
本記事の内容がよかったら、これまでの記事もぜひご覧ください。
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