隠れた優良商社、(8020)兼松の株価の見通しは? 割安株の探し方 vol.39
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これまでの株価分析記事の一覧はこちらです。
vol.32(2019年12月6日)の記事で、僕独自の基準で銘柄スクリーニングを行い、13業種35社を割安銘柄として抽出しました。
そして、vol.33の記事では、13業種のうち卸売業(商社株)に絞って分析を行いました。
今回の記事では、商社株のうち(8020)兼松について、今の株価で買うべきか否か、詳細を見ていきたいと思います。
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①兼松ってどんな会社なの?
兼松は老舗の総合商社で、電子・IT、食料、鉄鋼・プラント事業の3本柱の事業経営をしています。
資源権益への投資はせずに、堅実経営をしています。
総合商社の定義が曖昧なため、兼松が専門商社と定義されているwebサイトも散見されますが、兼松のコーポレートサイトで総合商社とされていますので、本記事ではそれに従いたいと思います。
兼松の収益事業は、以下の4つのセグメントに分かれています。
上から重要度が高い順に並べています。
※各%は、全社合計に占める割合
(1)電子・デバイス事業
売上比率:37.3% 利益比率:62.9%
※電子部品・部材、半導体・液晶、通信関連機器・部 品、電子関連の素材・副資材、情報通信技術システ ム・サービス、携帯通信端末、モバイルインターネッ トシステム・サービス、セキュリティ機器、産業用プ リンター他
(2)食料事業
売上比率:34.4% 利益比率:13.4%
※缶詰・冷凍・乾燥フルーツ、コーヒー、ココア、砂 糖、ゴマ、落花生、雑豆、ワイン、畜産物、水産物、 飼料、肥料、大豆、小麦、大麦、米、加工食品、調理 食品、ペットフード他
(3)鉄鋼・素材・プラント事業
売上比率:19.6% 利益比率:15.1%
※各種鋼板、条鋼・線材、鋼管、ステンレス製品、一般 鋼材、製鉄・製鋼原料、電池原料、肥料原料、接着剤 材料、溶剤、機能性食品素材、栄養補助食品、医薬 品・医農薬中間体、原油、石油製品、液化石油ガス、 温室効果ガスの排出権、バイオマスエネルギー、化 学・石油化学プラント、製紙機械、通信回線敷設、光 ファイバー、電力プロジェクト、船舶および舶用機 材、工作機械、産業機械他
(4)車両・航空事業
売上比率:8.7% 利益比率:8.6%
※車載部品・機構部品、航空機および航空機部品、衛星 関連機器・部品、自動車および関連部品、産業車両、 建設機械、汎用機、鍛造品、鋳造品他
利益としては(1)電子・デバイス事業が主ですが、売上的には(1)電子・デバイス、(2)食料、(3)鉄鋼・素材・プラントの3本柱と言えます。
専門商社は一般的に、特定の商材による収益が50%を超える場合にそう呼ばれるので、その点でも兼松は総合商社と言えそうです。
②兼松の規模ってどのくらい?
それでは次に、兼松の定量情報を見ていきましょう。
●時価総額:1,250億円 ※2019年12月16日終値
●売上:7,238億円 ※2019年3月期
●営業利益:303億円(営業利益率 4.2%) ※同上
●当期純利益:166億円(最終利益率 2.3%) ※同上
●連結従業員数:全社合計 7,161人 ※2019年3月末
営業利益率がかなり低いですが、経済産業省が報告している卸売企業の営業利益率の平均は1.1%程度なので、4倍弱となっています。
三井物産や住友商事のような5大総合商社とは大きく異なり、投資先の利益取り込みによる特別利益などは大きくなさそうですね。
③兼松の業績と配当金の推移は?
直近3年の実績及び今後の見込みは以下のようになっております。
一株利益・配当金ともに比較的綺麗な右肩上がりと言えますね。
ちなみに兼松は2019.3月期において、税引き前利益の過去最高を更新しています。
以下は月足チャートになります。
2019年3月期で過去最高の税引き前利益を達成している通り、2018年に直近の高値1,795円を付けています。
2019年12月16日終値ベースで、兼松の各種指標は以下のようになっています。
⚫︎PER:7.2倍 ※東証一部 同セクター平均 13.2倍(2019年11月末)
⚫︎PBR:0.95倍 ※東証一部 同セクター平均 0.9倍(同上)
⚫︎配当利回り:4.06%
PER、PBRともにかなり低いですね。
卸売業セクターの平均と比べても、特にPERは割安な水準になっていると言えます。
では、なぜ兼松の株価は割安のまま放置されているのでしょうか?
次は、リスクについて見ていきます。
④兼松のリスクは?
兼松のリスクについて見ていきましょう。
まず、vol.33の記事において、専門商社が割安になっている理由について以下のように挙げました。
(理由1)収益構造がわかりにくいから
(理由2)投資会社化しつつあり、利益の割に手元現金が少ないから
(理由3)資源価格等の外部要因で株価が動きやすいから
兼松において、これらの理由がどのように当てはまるのか見ていきたいと思います。
(割安な理由1)収益構造がわかりにくいから
兼松は前述の通り、利益としては(1)電子・デバイス事業が主力ではありますが、売上においては(1)電子・デバイス、(2)食料、(3)鉄鋼・素材・プラントの3本柱となっています。
全く異なる3つのセグメントの3本柱のため、売上と利益の流れがイメージしにくい会社となっています。
そもそも総合商社という形態自体が日本独自のもので、海外投資家には理解しにくい企業体なので、(5大総合商社よりはまだマシですが)理解しにくくなっていると言えます。
(割安な理由2)投資会社化しつつあり、利益の割に手元現金が少ないから
2020年3月期の第2四半期(9月末)の決算書によると、投資有価証券の合計が392億円あります。
一方で現金預金は889億円と投資有価証券の2倍以上の額となっております。(ちなみに、三井物産や住友商事は投資有価証券の1/4しかキャッシュがありませんでした)
5大総合商社に比べればまだキャッシュがある方ですが、同時に借入金が1,395億円と多額になっていますので、キャッシュを今後も継続して配当金に回せるのかという点は、多少懸念ではあります。
(割安な理由3)資源価格等の外部要因で株価が動きやすいから
兼松は、(1)電子・デバイス、(2)食料、(3)鉄鋼・素材・プラントの3本であり、資源関連を主力としていないので、金属資源や石油・ガス・石炭の市場価格の影響は比較的受けにくいと言えます。
以上、総合商社が割安な3つの理由に合わせて、兼松を見てきました。
以下、兼松特有のリスクを付け足します。
(割安な理由4)業績予想の実現可能性
当期以降も順調に過去最高益を更新する業績予想となっていますが、本当に実現可能性があるのかどうかはやや懸念と言えるでしょうか。
(割安な理由5)電子部品の業界リスク
以前、エレクトロニクス(電子部品)商社のダイトロンについて株価分析記事を書きました。
その時の繰り返しになりますが、電子部品の需要は景気(=設備投資)の影響を非常に受けると考えられ、また、レッドオーシャンの市場とも言われています。
これは兼松にも当てはまりますので、電子部品自体の需要が今後も堅調に推移するのかは注意する必要があります。
⑤兼松は今買うべきか否か?
以上、兼松について見てきました。
総合商社特有のリスクはやや低く、それでいtr業績や配当の推移が堅調なので、個人的には投資対象となりうる銘柄だと考えます。
過去最高益を今後も更新し続けることができるのか、というのが最大のポイントですね。
⑥まとめ
今回の記事では私独自の基準でスクリーニングをかけた銘柄のうち、専門商社の兼松について見てきました。
結論としては、十分投資対象となりうる銘柄だと判断します。
より詳細分析し、タイミングを見計らって買うのが良いでしょう。
次回は、vol.32(2019年12月6日)の記事で抽出した銘柄のうち、銀行業の6社(富山第一銀行、りそな、三井住友FG、武蔵野銀行、ふくおかFG、フィデアHD)について見ていきたいと思います。
本記事の内容がよかったら、これまでの記事もぜひご覧ください。
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