子供の頃、お父さんが怖かった
子供の時、お父さんは怖い存在だった。
親の喧嘩はたまに見ていた。
5歳くらいの頃に寝ている寝室から両親の言い合いの声が聞こえて目が覚めたことを覚えている。
お父さんは声が低く怒鳴ると雷が落ちたみたいなインパクトがあった。
テレビのリモコンがなくなったとき、風船に水性ペンで落書きしたとき、夜に兄と大声で笑った時、本当に雷が落ちたみたいにいきなり怒鳴られるのが、幼い私にはショックがあった。
おばあちゃんの家にお父さんの運転で兄と二人で向かっている時に私が途中で車に酔い、気持ち悪いと言ったことがあった。お父さんは無言で長い道のりを引き返した。休憩するわけではなく家に引き返したことが、車酔いをした私を無言で責めているように感じた。
そういうことを積み重ね、お父さんの機嫌が悪いと、同調するようになり自分を責めるようになった。
機嫌が悪くならないか、いつ雷が落ちてくるか家にいるとずっと不安があった。
中学生のころ、お父さんの仕事の忙しさがピークになった。今考えるとたくさんの責任を抱えていたのだと思う。家にいる猫を追いかけて回したり、奇声を発しているのも聞いたことがあった。
家のパソコンがネットに繋がらなくなり、仕事から帰ってきたお父さんにネットに繋がらなくなった、と言った。直してほしかった訳ではなかったが、イライラしながら話しかけた私を責めてパソコンを直しだした。怖すぎて部屋で泣いた。
兄が高校生の時、両親が仕事でいないときよく彼女を部屋に連れ込んでいた。そのまま寝てしまったのか、部屋は暗いままで両親が帰ってきたときがあった。彼女の靴に気付いた母はパニックになって慌てふためいていた。仕事終わりのイライラMAXのお父さんにどうしようと話しかけていた。またお父さんのスイッチが入って怒鳴りながら兄の部屋に入っていった。あれは今でも同情する。
しんどいことを人のせいにして引き受け、自分も人も追い詰めるような人だった。
大人になり、兄も私も家を出ると不思議と両親はよく旅行にいったり仲睦まじくなった。両親にとって子供はストレスだったのだろう。
年に二、三度実家に帰るくらいの距離感になると、私とお父さんの関係性も良くなった。
お父さんと二人で車に乗っても不機嫌になることがなくなった。会話も普通にできるようになった。
定年も迎えて子供も巣立ってストレスがなくなったのだと思う。
私を怒鳴っていた怖いお父さんはいなくなった。
私も大人になって、当時の怒鳴るお父さんの気持ちを汲み取れるようになった。
お父さんの行動を振り返ると強迫性障害な部分もあったと気付いた。神経質な性格とストレスがお父さんをそうさせたのだと理解できるようになった。
しかし私の中で怒鳴るお父さんの存在はまだいて、お父さんと同じように自分を支配している気がするときがある。
何かやらなければいけないとき、できなかったとき、心の中で自分を責めてしまうときがある。切羽詰まっているときにあえてより辛い方に向かってしまう時がある。
もう怒鳴るお父さんは現実にはいない。
が、お父さんと同じ思考の私が私の中にできている。自分を許して、自分で解決するしかない。