マイホーム売却時の減価償却とは?計算方法を分かりやすく解説!
減価償却とは「建物や機械などの資産価値が目減りした分を経費計上する」という会計上の手続きです。事業を営む個人や法人が行うものですが、マイホーム売却時の税額計算にも用いられます。知っておくと役立ちますので、この機会に理解を深めておきましょう。
減価償却って何?
減価償却とは、建物や機械などの高額資産における価値の減少分を経費計上することです。
事業を営む個人や法人は、収入を得るためにかかった必要経費を帳簿に計上します。一般的な必要経費は一括で計上しますが、高価な資産は一定期間に分割して計上する仕組みです。その際に使用する期間を「耐用年数」と呼びます。
マイホーム売却時も建物の減価償却が必要
「減価償却」は会計上の用語であるため、馴染みのない人がいるかもしれません。とはいえ、マイホーム売却時の税額計算では、建物の取得費を求めるために減価償却を行います。事業者でない人でも、考え方を知っておいて損はないでしょう。
譲渡所得=売却代金-(取得費+譲渡費用)
譲渡所得税=譲渡所得×税率
土地は減価償却の対象外
減価償却が必要なのは、建物のみです。土地は減価償却を行いません。
不動産の価値はさまざまな要因で変動しますが、建物の価値を大きく左右するのは築年数や劣化具合です。使用期間が長いほど屋根や外壁、水回り設備が老朽化します。減価償却は、そういった経年劣化を考慮するために行うものです。
土地は経年劣化する資産ではないため、減価償却の対象外という訳です。
同じ家でも、1年後と20年後では劣化具合が異なりますよね。減価償却は、そういった価値の低下を考慮するために行います。
減価償却費の計算方法(マイホーム売却時)
減価償却費の計算方法は、マイホームと事業用の建物で異なります。マイホーム売却時の減価償却費の計算方法は、以下の通りです。
計算に必要な要素は「建物の取得費」「償却率」「経過年数」です。
建物の取得費は本体価格と費用の合計額を指し、償却率は構造ごとに定められています。日本の一戸建ては木造、マンションは鉄骨・鉄筋コンクリートが多数派です。
経過年数は、6ヶ月以上の端数を1年、6ヶ月未満の端数を切り捨てで計算します。
【例:建物5,000万円(木造、経過年数20年)、購入にかかった費用350万円の場合】
減価償却費2,985万3,000円=取得費5,350万円×0.9×償却率0.031×経過年数20年
譲渡所得の計算に用いる建物の取得費は、減価償却後の金額です。上記の場合、建物の取得費に算入できる金額は2,364万7,000円になります(取得費5,350万円ー減価償却費2,985万3,000円)。
シミュレーションで解説!減価償却費が譲渡所得税に与える影響とは?
「減価償却の仕組みは理解したものの、税金にどのような影響があるのか」気になる人もいるのではないでしょうか。減価償却費と譲渡所得税の関係性について、具体例を用いて解説します。
【シミュレーションの条件】
<購入時>
建物(木造)
本体価格:5,000万円
諸費用:350万円
土地
本体価格:3,000万円
諸費用:210万円
<売却時(土地+建物※)>
売却代金:7,000万円
譲渡費用:490万円
建物の減価償却費:2,985万3,000円
※売却時点で所有期間20年と仮定
結論からお伝えすると、減価償却費が高くなるほど税金の負担が増えます。上記の条件で税額を計算した場合、減価償却をしなければ0円、減価償却をすると190万でした。
減価償却しない場合の計算方法
譲渡所得0円=売買代金7,000万円-(取得費8,560万円※+譲渡費用490万円)
※取得費8,560万円=建物の取得費(本体価格5,000万円+購入時の諸費用350万円)+土地の取得費(本体価格3,000万円+購入時の諸費用210万円)
減価償却する場合の計算方法
譲渡所得935万3,000円=売買代金7,000万円-(取得費5,574万7,000円※+譲渡費用490万円)
※取得費5,574万7,000円=建物の取得費2,364万7,000円+土地の取得費3,210万円
A所得税額・復興特別所得税額143万2,400円=譲渡所得935万3,000円×15.315%
B住民税額46万7,600円=譲渡所得935万3,000円×5%
譲渡所得税額190万円=A+B
※100円未満切り捨てにて
減価償却によって譲渡所得税が増える理由
減価償却によって譲渡所得税の負担が増える理由は、建物の取得費(譲渡所得から控除できる金額)が減り、課税対象の譲渡所得が増えるためです。
少々分かりにくいため、図解を用いて解説します。
譲渡所得税の対象となる「譲渡所得」が増えると税額が増えます(上図ポイント1)。譲渡所得は売却代金から取得費や譲渡費用を控除した金額のため、これらの金額が少ないほど譲渡所得が増える仕組みです(上図ポイント2)。
建物の取得費は減価償却後の金額であるため、減価償却費が増えるほど譲渡所得の計算に参入できる取得費が減ります(上図ポイント3)。以上が減価償却によって譲渡所得税の負担が増える仕組みです。
マイホーム売却時における減価償却費の計算には「経過年数(所有期間)」を使用するため、所有期間が長期化すると減価償却費が高額になります。譲渡所得税の負担が重くなる恐れがある点に注意が必要です。
マイホーム売却時の税金は、特例で負担を軽減できる
マイホーム売却時には税金の負担を抑えるための特例が設けられています。
活用できる特例があるかどうか、確認しておくと良いでしょう。例えば「3,000万円特別控除」という特例があります。これは譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。特例を利用した場合、譲渡所得3,000万円以下であれば税金がかかりません。
ただし、特例の適用には複数の条件があります。興味のある人は、国税庁の公式サイトにて詳細をご確認ください。