キリンジが好きというだけの話
私はキリンジが好きだ。
初めて聴いたのはいつ頃だったかハッキリとしないが、おそらく中学3年ごろだったと思う。当時から最新の音楽にあまり惹かれることがなく、言ってしまえば逆張り精神旺盛な可愛げのない奴だったのだが、若さゆえというのもあってか、ロックなど激しい音楽を聴くことが多かった。
その当時聴いていたミッシェル・ガン・エレファントやその後のROSSOは今でも聴くので、そこまで変わったと言えるほどでもないのではあるが、好む音楽の方向性が一気に変わったのは、たまたま自動再生で流れてきた、キリンジの「エイリアンズ」だった。ボーカルの気だるさと優しさを兼ね備えた声。夢と現実のあいだを彷徨うような歌詞とメロディー、ハーモニーは一瞬にして僕の心を奪った。
それから僕はこの曲を歌っているのがキリンジである事を知り、兄弟で活動していることや、それぞれ作風がかなり違うということも知った。実際その後聴くことが多いのは兄である高樹氏の曲であることが多かったので、そういう意味ではエイリアンズにあれだけ衝撃を受けたのは本当に偶然だった。
あれから、エイリアンズ自体はあまり聴いていないのは、あの曲がある意味特別すぎるからかもしれない。
その後に聴いたDrifterやその他の曲もそうなのだが、彼らの曲は勝手に寄り添ってくるのでもなければ突き放してくるのでもなく、ただそこにいる、という感じを与えられるように感じる。その距離感が、私にとって心地よいのだ。
ところで、皆さんはキリンジのどのアルバムや、どの楽曲がお好きだろうか。私は、是非3枚のアルバムを挙げさせて頂きたいと思う。
47'45''
キリンジ2枚目のアルバムである本作は、前作のペイパードライヴァーズミュージックや次作である3と比べると、一発の大きい、インパクトの強い曲自体は少ないように感じられる。だがしかし、アルバムとして非常に良いバランスで、かつ彼ららしさをちょうどよく感じられる作品であると私は感じる。特に、髙樹曲の(牡牛座ラプソディ)から泰行曲である(くよくよするなよ)、(銀砂子のピンボール)と続き、このアルバムで最も暗く、ハードな世界観の(ダンボールの宮殿)へと続くこの流れは、素晴らしいの一言でしか表せない。
For Beautiful Human Life
キリンジ5枚目のアルバム作品。(スウィートソウル)と(愛のcoda)という、兄弟それぞれを代表する名曲を兼ね備えているという点もそうだが、(奴のシャツ)や(the echo)といった疾走感のある、ロックやフュージョン色の強めな作品が入っている部分が非常に素晴らしい。そしてそれらの合間に絶妙なバランスで泰行曲の幻想的な世界観、サウンドが展開されており、退屈させないものとなっている。
愛をあるだけ、すべて
KIRINJIとなってからの作品。通算13枚目のアルバムである今作は、これまでのキリンジのイメージとは少々異なる、だがしかし素晴らしい作品となっている。(AIの逃避行)や、(新緑の巨人)など、より打ち込み要素の強いサウンドが特徴となっており、この変化はスティーリー・ダンの名作エイジャから次作のガウチョで見られる変化のようなものを私は感じた。そのような中でこれまでとこれからを歌った(時間がない)や、ググれよといったユニークさの目立つ(非ゼロ和ゲーム)など、これまで以上にポップでありながらその世界観を失わない見事な塩梅の作品である。
以上身勝手ながら私が愛するキリンジの作品について語らせて頂いたが、良ければ是非好きな作品やアルバムについて教えていただけると嬉しく思う。
おまけ
最近サブスク配信が始まったみんな大好き塊魂のキリンジ参加曲、(つよがり魂)もこれまた素晴らしい曲なのでおすすめしたいと思う。