また、散歩しようね。
僕には14こ離れた弟がいる。
僕が大学受験を終えた14年前。
突然、我が家にやってきた。
彼は色白で少し毛深い。冬は暖かそうだが夏は暑そうだ。夏はいつも母がサマーカットと称してバッサリ切ってしまう。いつもとっても可愛く仕上がる。まるで別人だ。
彼は成長スピードが僕よりも早く
あっという間に追い抜かされてしまった。
もはや、彼は僕の先輩だった。
彼の日課は朝晩の母親との散歩だった。
昔は家の近くの川沿いを散歩したりもしてたけど、ここ最近は体力が落ちたのか、全然遠くまで行かなくなった。すぐに疲れちゃうみたい。
僕と妹はもう結婚して家を出てしまってたから、母さんは毎日の彼との散歩が本当に楽しみだった。
彼は毎日、父が経営する会社に出勤した。
毎日窓から外の景色を眺めたり、来客に挨拶したりと忙しかった。来客があれば誰よりも早く飛んで行って挨拶をしていた。はたまた、会社に誰も居ない時はしっかり留守番をしてくれた。本当に頼りになる存在だ。
彼には親友がいる。
名前は「アギアギくん」。
アギアギくんはいつも彼のそばにいて、いつも一緒に遊んでいた。
アギアギくんの柔らかさが彼を優しく包み込んだ。
寝るときもいつも一緒だった。
でも最近、アギアギくんとは全然遊ばなくなっていた。
彼は毎日帰りの遅い父の代わりに母親の話し相手になっていた。
彼は母親の話を黙って聞いて全て肯定してくれた。否定をしない無償の愛を彼は母に注いでくれた。母はそんな彼が大好きだった。
彼の趣味は昼寝だ。
本当によく寝る。気付いたらどこでも寝てる。
フローリングの上で寝るのが最近のマイブームだった。
冷たいフローリングが気持ち良いんだろう。
本当に暑いのが苦手だった。
彼はよく、つまみ食いをする。お気に入りはやはり、お肉だ。
野菜は全然食べない。肉食男子だ。
僕ら家族が食事をしていると必ずやってくる。
可愛い奴だ。
彼を嫌いな人は誰もいなかった。
なぜなら彼もまた、みんなの事が大好きだったからだ。
彼は僕ら家族に癒しを、愛を、楽しさを
与えてくれた。
彼が居ることでその場が明るくなった。
みんな彼を愛してた。
でもそんな彼ともう一緒に遊ぶことができなくなってしまった。
彼に大好きなお肉をあげることもできなくなってしまった。
大好きな母との散歩にも行けなくなってしまった。
またいつか、
一緒に散歩できる日を楽しみにしているよ。
ありがとう。
元気でね。
天国に居るじーちゃんとばーちゃんと待っててね。
レオ、ばいばい。