【ライブレポ】TIF2023メインステージ争奪LIVE 前哨戦第1部 振り返り
最高のドラマでした。
地下アイドルオタクのかべのおくです。
今回は、TIF2023 メインステージ争奪ライブの前哨戦 第1部に参加してきました。
今回も興奮さめやらぬTwitterのつぶやきを拾いつつ、それに補足する形のレポートになります。長いのでさっさとはじめます。
ライブ概要
「TIF2023メインステージ争奪LIVE」はTOKYO IDOL FESTIVAL(TIF)2023のメインステージへの出演権をかけた賞レース。
今年は合計8組のグループが参戦しています。前哨戦は1部・2部の各上位2組、合計4組が決勝ステージに進出します。会場はGARDEN新木場FACTORY、以前開催されていた新宿ReNYと比べると圧倒的にキャパが増え、動きやすい会場でした。オールスタンディング、声出しOKとなり、各組の持ち味が発揮されやすい舞台が整いました。
ところで、「お前、推しグループもないのになんでそんなとこ行ったの?」というツッコミが聞こえてきました。確かにそうですね。普段応援しているFES☆TIVEは、僕が応援し始めた時にはグループとしての地位を確立し、これらの争いからは「あがって」いました。したがって幸か不幸か、賞レースのためにお金を費やした経験はありません(個人イベントは除く)。
しかし、地下アイドルの醍醐味は、スタートアップ期のグループとオタクが切磋琢磨するところにもあると思います。「このまま今のグループを応援しているだけでは、味わえない感情や見られない景色があるんじゃないだろうか?」という危機感を感じていたのです。
そんな中、今年のメインステージ争奪戦のエントリーの中には、昨年の10月にデビューしたドラマチックレコードというグループがありました。「心揺さぶるドラマチックポップカルチャー」をテーマに、幅広い楽曲が持ち味のグループです。
そんなドマレコ(ドラマチックレコードの略)の代表曲として、「瞬間ドラマチック」があります。
対バンで何度かこれを聞いているうちに「ドマレコ、もっと大きなステージで見たいな」と考えるようになりました。かくして、手段と目的が逆ですが、僕はドマレコのメインステージ決勝までのドラマを見届けに行くことになったのです。
当日レポート
当日に書いたツイートを張り付けつつ、補足します。
開場〜ライブ開始
会場のGARDEN 新木場FACTORYは倉庫を改築したライブハウスで、周りには企業の倉庫や工場などが密集しています。歩くと20分くらいかかるので、地味に時間には気を付けましょう。
多少の待ち時間はあったものの、何とか入場。しかし1000枚近くの入場者をさばくのに30分では無理があったらしく、7分遅れでの開演となりました。
舞台はそこそこの高さですが、客席側に傾斜があるわけでもないので、500番以降になってくるとおそらくかなり見えにくいと予想されます。ただ今回はグループごとにお目当てのオタクが入れ替わる、心の広い現場でした。
①Falench.
FreeK現場に出入りしているのに意外とライブが被らず、Falench.はここで初見。元てるてるの桜井花音さん、星野彩さん、元フラビの逢坂らんさんは流石の仕上がりっぷり。ほかのメンバーもその3人に触発されて良い影響を受けているように見受けられました。レベル・意識が揃ってくれば、事務所内でも頭一つ抜けた存在になれると思います。
②NANIMONO
聞いた途端に、「これ絶対Yunomi楽曲か苺りなはむプロデュースだろ!」と思ったのが何曲かあったんですけど、調べたら全然違いました。個性が強いメンバーにしっかりオタクがついていて、いわゆる「推しメン好き好きマン」が多いように感じました(全然いわゆってない)。曲間で組体操を始めたりと、とにかくステージを楽しんでいる印象でした。
残念ながら敗退となってしまいましたが、何物でもなくNANIMONOでなければならない理由、メンバーの個性は十分に感じられました。ひきつけられる魅力のあるグループは、強いですね。
③UtaGe!
記憶があいまいなのですが、曲間で茜音ぱぴこさんが、「ライブ中は敵も味方も関係ない!一緒に盛り上がりましょう!」と言っていた気がします。その一言がUtaGe!をすべて表しているな…と思いました。
音楽の良さは、人種や言語、思想の違いを超えてその瞬間、その場でつながりあえることです。「宴」のTシャツを着ているオタクたちを中心にして作り上げられる熱狂を見ていると、どこのオタクとか、誰推しとか関係なく、みんなでライブを見られている、楽しめる、生きているこの瞬間が尊いなって実感します。
また、UtaGe!はこの前哨戦の期間にレパートリーも増えて、「6STARS」のようなメッセージ性の強い楽曲が出せるようになったのには驚きました。果たして8月までにはどれだけの成長曲線を描いてくれるのでしょうか?フロアの進化にも期待です。
④ドラマチックレコード
僕はドマレコが始まる前、本当に不安でした。ここまでの3グループはとにかく盛り上げることを重視したステージング・セットリストでした。特にUtaGe!はすさまじく、果たしてドマレコがこれを超えられるのかには自信がなかったからです。
しかしこれは始まれば全くの杞憂に終わります。ライブはただ楽しいだけ、盛り上がるだけではないということを思い出す20分間でした。最後の「瞬間ドラマチック」ではさまざまな感情が沸き上がってきて、これが「感動」なのかと思いました。
他とは違っても自分たちに出来ることをやりきった。これ以上もこれ以下もない。そんな確信があったから、ドマレコの4人は結果待ちの間もとにかく祈るだけだったのでしょう。
振り返り
「その場」にいれたこと
前哨戦を振り返ったときの所感はまず「行けてよかった」ということです。メインステージ争奪戦独特の雰囲気を感じられました。
通常の対バンは、何らかのテーマが決められているものです。オタクが回りやすいよう、「その対バンに来たい」という価値を感じられるように工夫が凝らされています。
しかし、前哨戦はいい意味でそれがなく、グループごとに会場の雰囲気、オタクの系統もガラッと変わっていました。ライブの熱量も高かったので、まるで20分のワンマンを4回連続で見せられたような気分です(疲れた)。
また、これはアイドル側も何人か言っていましたが、ライブ中は「一緒に闘っている」ことがすごく感じられました。これは、ライブ中の盛り上がりが如実に点数に反映されるからです。
メインステージ前哨戦は、以下のような投票スタイルをとっていました。
会場:2グループ(2ポイント、1ポイント)
配信:1グループ
このうち、会場の2ポイント投票、配信投票は既に投票先を決めている人が多いでしょう。しかし、会場の1ポイント投票はそっくりそのまま浮動票になっています。そこで「このグループいいな、投票したいな」と感じてもらえるライブが重要になってくるわけです。
オタクは推しグループのライブが始まる前には「盛り上げないと」という責任感を少なからず感じるものです。今回はそのプレッシャーがとりわけ強かったように感じました。しかしそのぶん、ライブ後の充実感も大きかったように思います。
言葉の持つ力
メインステージ前哨戦は、アイドル達の言葉の力を強く感じられる機会でもありました。今回においては、「ドラマチックレコードの新居歩美」から発せられる言葉の力をもっとも強く感じました。
ドラマチックレコードのデビュー時から中心的存在として、グループを引っ張る新居さん。トークライブやラジオなど、アイドルらしからぬ活躍の場も目立ちます。メインステージ争奪戦にかける思いは、Webメディアのインタビューでも語っていました。
インタビュー内で、新居さんは以下のように話しています。
この発言から見て取れるのは、新居さんの目線の高さです。「メインステージに立ちたい」という願望は、アイドル側のエゴに映ってしまいかねません。しかし本来、大きいステージに立つことは、多くの人の目にとまって活躍の場面が増えるチャンスです。そうなれば今よりもオタ活が充実する可能性が高まります。そんなオタク側の利益を明確にしているのです。また、オタクがドラマの作り手になれる可能性もあります。結果的に大きなステージに立ったとして、それをただ見ることと、そこまでの過程を経験したうえで見ることは大きな違いです。
メインステージに立つことは手段に過ぎない。しかしアイドルにもオタクにも大きなチャンス。だから応援してくれれば、絶対に大きなステージで恩返しする。打算的に感じられて、とても情熱的で、覚悟が必要な言葉だと思います。
そしてメインステージ決勝進出が決まった瞬間のMCがこちらです(この言葉をしっかり文字にしてくれたアオキユウさんがすごい)。
日頃からどういう思いで活動しているかをしっかり言語化している新居さんだからこそ出てきた言葉でしょう。アイドル達の言葉は、時にはアイドル自身を勇気づけることもあるのです。
また、新居さんの存在の大きさはMCだけにとどまりません。ドラマチックレコードは前哨戦に向けた直前練習の様子をニコニコ生放送で配信していました。その際にも新居さんを中心に、細かい振りや演出・あおりを確認する様子が見られました。
もちろん、アイドルグループはメンバーが全員いないと成立しません。しかし、なみいるメンツの中でドラマチックレコードが前哨戦を勝ち抜けたのは、彼女の知名度・存在感・発言力が大きな影響をもたらしたと言っていいでしょう。
各陣営の戦略分析
さて、最後に前哨戦1部に参加した4組の戦略を振り返っておきましょう。
ドラマチックレコード(配信1位、会場2位、総合1位)
会場・配信投票の両方をそつなく取りに行く作戦を実行。
まず、前哨戦にお目当てで入場すると特典を付けるだけでなく、新規オタクを招待すると特別特典も用意されてました。僕もこれを目当てに前哨戦に訪れたようなものです。
また、配信投票にもチェキ1枚を付ける特典がありました。
また、メンバーがビラ配りや配信を行い、オタクの絶対数を増やす努力も推しみませんでした。ここでオタクをニコニコチャンネルに誘導しているのも、とてもうまいと思います。
UtaGe!(配信3位、会場1位、総合2位)
特典自体はドマレコとほとんと同じ戦略ですが、ライブが好きで若いオタクが多い、そんな自分達の現場の特徴を活かしていると感じました。
まず、指名入場と招待で奮発した特典があります。
また配信投票にも特典がありました。
また配信企画、そして決起集会と称した対バンライブも実施。UtaGe!の持ち味である、ライブの盛り上がりを生かせる施策だったと言えるでしょう。
また今回特徴的だったのは、ドマレコとUtaGe!の2マンライブが前哨戦直前に開催されたことです。
これで会場投票の2pt,1ptを分け合ったことが、両者の決勝進出につながったのでしょう。配信投票では明暗が分かれましたが。
Falench.(配信4位、会場3位、総合3位)
ひときわ特徴的な戦略。FreeKらしい、ガチな現場オタクによる一点突破を狙った格好です。
なんとチケット先行予約で複数枚を申し込むとオフ会に参加できる、エグすぎる特典が用意されていました。
また、前哨戦ライブ前日には動員が足りないことに触れて、チケットをしっかり捌くようにオタクに周知。これもFalench.の取ってきた戦略を見れば納得です。結局チケットは叩けていても、それを持たせて投票してもらうオタクが必要なわけですからね。
また、上位グループと同様に、会場投票・配信投票特典、メンバーによる配信企画も実施されていました。
しかし気になったのは、配信投票の特典が「特典内容はDMにて公開」となっており、事前に告知されていなかったことです。これが、結果的に配信投票で後塵を拝した原因かもしれません。
また、会場を見ている感じでは、Falench.のオタクは女性も大勢いるみたいでした。一方でチケットを大量購入して周りのオタクにマウンティングしたい、推しメンに見栄を張りたいのは多くが男性です。その意味では、もう少し女性オタクに寄せた戦略が展開できたら、結果は違ってきたのかもしれません。
NANIMONO(配信2位、会場4位、総合4位)
会場投票特典にアクスタが用意されていました。ちなみに特典として具体的なモノを用意していたのはNANIMONOとドマレコの2グループです。
ライブ見ていた印象ですが、NANIMONOはメンバー一人ひとりの個性が強く、ちゃんとオタクがついているようでした。そういう特性を利用しての作戦だったのかもしれません。
しかし、それ自体はグループに適した策だったとしても、前哨戦を勝ち抜くのには有効ではなかったのかもしれません。翌日にワンマンライブが控えていたのもあって、オタクもメンバーもパワーが分散してしまっていた印象です(あくまで個人の感想ですが)。
前哨戦1部を見終わって
まとめると、各陣営の作戦は以下の通りになります。
ドラマチックレコード:配信も会場も、本気で勝ちに行く特典戦略
UtaGe!:オタクの熱を持続させるライブ企画・特典戦略と、2組での結託
Falench.:太オタに寄せた一点突破戦略
NANIMONO:オタクを本気にさせるグッズ特典
こうして振り返ると、正直どこが勝ってもおかしくなかったように思います。もらえる特典に多少の差こそあれ、基本的にやっていることは特に変わりません。
結果的には、配信やビラ配り、日々のライブなどを通じて本気で取り組んでいる姿勢が伝わり、少しでも多くの人に動いてもらえたグループが勝ち上がれたのではないでしょうか?そこで重要になってくるのが現場の熱量だったり、メンバー個人の持つ発信力や言葉の強さなんだと思います。ともあれ、メインステージ前哨戦という一つのドラマを目にしたことは本当に大きな収穫でした。熱い戦いを繰り広げてくれた4組に敬意を表したいです。
しかし皆さんご存じの通り、前哨戦は前哨戦の戦い方があり、決勝は決勝の戦い方があります。これから約1か月半、各陣営がどんな出方をしてくるのか、そして決勝ステージはどんな光景が見られるのか、楽しみにしながら過ごしたいですね。
おわりに
まとめます。
屋外のメインステージ、たぶん本当に暑そう。
以上です。