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本多議員の発言を擁護する話

この件は、本人が不適切な発言として謝罪しており、あっという間に風化しそうな気がするので、急いでnoteに残しておきたいと思う。

1 発言の切り抜きがひどいという話

本件の流れについてザックリ説明する。

国民民主党のワーキングチーム内で、本多議員の発言が問題となった。

中間報告のとりまとめにあたって、議員から発言の撤回の申し出があったが、それを産経新聞が報道した。中間報告からは削除されたが、それを見逃さなかったということだ(なんとなく、同党の一部からリークされた予感がするが、それは本筋ではない)。

報道は以下の通り。

(本多議員は)”性交同意年齢の議論の際に「50歳近くの自分が14歳の子と性交したら、たとえ同意があっても捕まることになる。それはおかしい」と発言した”

知っての通り、2021年6月時点の日本では、性交同意年齢が13歳とされている(13歳未満の相手との性交は全て強制性交罪になる)ほか、各都道府県にいわゆる青少年保護育成条例があり、18歳未満の男女との性行為は同意があっても「淫行」として処罰される場合がある。

産経新聞の記事では、まるで本多議員が「淫行」を擁護しているかのように読める。

他方、最高裁の判例によれば、「婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等」は淫行に含まれず、同条例によっても処罰されない。

…本条例(福岡県青少年保護育成条例)一〇条一項(当時)の規定にいう『「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為』をいうものと解するのが相当である。
ただし、右の「淫行」を広く青少年に対する性行為一般を指すものと解するときは、「淫らな」性行為を指す「淫行」の用語自体の意義に添わないばかりでなく、例えば婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等、社会通念上およそ処罰の対象として考え難いものを含むこととなつて、その解釈は広きに失することが明らかであり、また、前記「淫行」を目にして単に反倫理的あるいは不純な性行為と解するのでは、犯罪の構成要件として不明確であるとの批判を免れないのであつて、前記の規定の文理から合理的に導き出され得る解釈の範囲内で、前叙のように限定して解するのを相当とする。…                 — 1985年(昭和60年)10月23日、最高裁大法廷

実は、本多議員の発言は、「『成人と中学生が真摯(しんし)な恋愛関係になった場合、性交をすることは自然なことで罰するのは望ましくない』と主張する中で」されたものだ。

「真摯な恋愛関係」について本多議員がどこまで詳しく発言したかは定かではないが、「真摯な」というキーワードと「14歳」という年齢から考えれば、上記の最高裁の「淫行」解釈を念頭に置いたのは明らかだ。

つまり、同議員の発言は、現行法上(法律によっても条例によっても)処罰の対象とされていない行為を擁護するものだったといえよう。

ところが、産経新聞をはじめとする各社の報道では、この「真摯な恋愛関係」の文脈を削除し、「14歳と同意性交」という点のみを取り上げ、同議員の発言が「淫行」として条例によって処罰される行為を擁護の対象にしているかのような報道を行っている。

2 1を踏まえた私見

私自身、もとより、14歳とセックスする50歳に倫理的な問題が全くないとは考えていないが、それにしてもこの報道は酷すぎる。現行法上違法ではない行為について、今後も適法にすべき、という主張は、一議員の発言として十分ありうるものではないのか。党による「厳重注意」や「処分」に値する発言とは全く思えない。現職の議員にすら言論の自由が認められなければ、民主主義はこの国のどこで作られるというのか。

私には、この一連の騒動は「性交同意年齢を引き上げるべき」という結論に引きずられたリンチにしか見えない。

3 補足・性交と年齢差に関する提案

今回の騒動を受けて強く感じたのは、「50歳と14歳」という数字の持つ威力だ。性交同意年齢を維持しつつ、一定以上の年齢差があれば「淫行」とみなす条例を新設するのは、どうか(例えばフランスでは、5歳以内の年の差であれば、15歳未満との性行為も許されるようだ)。


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