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日本史の定説を疑う 本郷和人 井沢元彦著 宝島社新書(2020年7月発行)

正直なことを言うと、井沢氏のことはあまり好きではありませんでした。推理小説や伝奇小説は面白かったので、それなりに読んでいて、その流れで「逆説の日本史」も読んだのですが、どうにも「決めつけ」な感じの口調が鼻について、それ以来、まったく手に取らなくなったんです。

そんな中、本郷氏との共著で、しかも「定説を疑う」というテーマだったので、きっと面白い展開があるのだろうと読んで見ることにしました。

日本史といっても本書では古代から明治維新まで幅広く取り扱っています。構成としては、各時代ごとにお二人の短い対談があり、その後定説と仮説の紹介、各氏の定説や仮説の検証へと続きます。

検証する内容は例えば

邪馬台国と卑弥呼
聖徳太子
南北朝時代
本能寺の変
島原の乱
桜田門外の変

など、日本史の有名イベントが取り上げられています。

それで、読んだ感想ですが、はっきり言って検証にはなっていない項目が多いです。最初に紹介された定説とはちょっとずれた論が展開されることもしばしばで、論としては面白いのですが、本書のテーマとは違うかなと。

また、論が面白いと言っても、初見のものは少なく、近年の研究結果や各氏の持論をまとめただけと言う印象でした。

両氏の特徴ですが、歴史(的有名イベント)をストーリーとしてまとめようとする井沢氏に対して、あくまでも史料をきちんと読み込んで論を展開します。いつもの本郷先生らしくないなぁ。それともこっちが本当なのかな。

もう一つ発見があったのは、井沢氏が史料をきちんと把握したうえで、それらを総合的に判断して、文章を使ってその時代を再現しようとしていると言うことが理解できたことですね。決めつける感じの文章は相変わらず鼻につきますが、時代の思想や宗教観を取り入れていることに共感を覚えました。また、本郷氏と交互に文章が並んでいるので、なんか、中和されて読みやすかったです。

歴史の新しい知見が得られるものではありませんでしたが、日本史の全体を眺められる、面白い本でした。

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