
女系図でみる驚きの日本史 大塚ひかり著 新潮新書(2017年9月発行)
他の歴史関連の新書を読んでいたときに紹介されていて、やっと書店で見つけたので購入しました。
本書は通常は男性目線で作成されている「系図」を女性中心に作成し直しそこから見えてくる女性の立場を読み取るという力作です。読む前は「面白い視点だなぁ」と単純に思っていたのですが、どうやら順番は逆で、歴史の勉強をしている中で系図づくりに目覚め、その結果として本書のような内容にたどり着いたとのことでした。それは別の意味ですごい。
自分も特に西欧史を読んでいてあまりにも地理的知識の不足に気がつき、時代ごとに各帝国等の勢力範囲を図示し、重ね合わせてやろうかと何度も思い、思うだけで挫折することを繰り返していますので、ほんと、尊敬します。
さて内容ですが、とりあえず帯に書いてあるような内容
は、やや大げさです。もちろんこれらの内容は目次にもあり、きちんと触れられているのですが、本書の根幹はそこではなく、天皇家を中心とした貴族社会において女性の立場がどのように変遷していき、女性の生んだ子供たちがどのように歴史にかかわってきているのかということを整理したことにあります。
それによって「血のつながり」を別の角度から確認できるという面白さがありました。
ただ、文章と系図とを見比べなければならないこと、系図が(力作であるがゆえに)煩雑となっていて、文中で示された人物が系図のどこにいるのかが探しにくい、という点に難を感じました。
とはいえ、新しい視点をもって歴史の全体を眺めることができ、新しい発見は少ないものの、楽しめる一冊でした。
また章間に時折挟まれている「補講」は面白かったですよ。特に補講その三では「男色」を扱っているのですが、その系図?まで作成されています。これは傑作だね。