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娘が本当にほしかったもの
「ねぇ、お母さん。どうすればいいと思う?」
娘が私に問うてきた。
その瞬間、あぁ、またはじまった……とゲンナリする。
お年頃の女の子は、なにかと大変だ。とくに人間関係の悩みが増えるもんだから、こちらも頭を悩ませる。
「相手が変わらないのなら、あなたが変わるしかないんじゃない?」
アドバイスがほしいと言った娘にかけた言葉。ふむ、我ながら最適解だ。ドヤ顔で差し出すものの、彼女にはお気に召さなかったようだ。
「でも……だって……そんなこと言われても……」
モゴモゴと言いにくそうに下を向く姿にイラッとして、説教をかましてしまう。なんとも未熟な母親だ。
あ、いかん。そうこうしているうちに泣かせてしまった。弱ったなぁ、なんて声をかけるのが正解なんだろう。
最近、顕在的な悩みと潜在的な悩みのちがいについてよく考えている。相手に行動を起こさせるには、潜在的な悩みに働きかけないとダメらしい。
これが私にはしっくりこなくて、頭の中でずーっとずーっと考えている。なんとなくはわかるのだけど、どうにもピンときていない。
こういうのは今までに何度かあって、急に降ってくるときもあれば、考えた先にたどり着くこともある。
どちらかといえば、急に降ってくることが多いのだけど。
そんなことを考えながら、洗面所でシクシク泣いている娘を見て、とりあえずフォローしなくちゃ……と声をかける。
「ま、まぁ、嫌なことを言ってくる子より、あなたを大切にしてくれるお友達と仲良くしたらいいんじゃないかな?」
「……〇〇ちゃんとか、××ちゃんとか、△△ちゃんとか?」
その瞬間、なぜだかわかった。
「そんなに泣くほど悔しかったのなら、ガッツリ言い返しなさい。そんなことでお母さん怒らないから。もし先生に怒られてお母さんに連絡がきても、ちゃんと言うから」
見つけた!最適解!
娘がほしかったのは現状を変えるアドバイスではなく、「お母さんはあなたの味方」という安心感だったんだ。
私の言葉を聞いた娘は、顔をぐしゃぐしゃにしながら「おがあざん、ありがとう〜!」と声にならない声を返してきた。
あぁ、そういうことか。
私は表面だけを見て、自分の中にある答えを押しつけちゃったんだ。
それは娘のほしいものじゃない。娘が本当にほしかったものは、私の中には最初からなかったんだ。
答えはいつだって相手の中にある。それは表面には出てこない、ずーっとずーっと奥の方に眠っているから。
よく目をこらして、深いところから響く声を聴いて、空気や温度、心の風向きを感じて。
少しのすき間からキラリと光る、その一瞬を見逃さない。
なんとなく、わかったかも。
奥の奥にあるものを探して見つける。これが、潜在的な悩みに働きかけるってことなのかなぁ?
道のりは遠いけれど、いつでも考えた先に答えがひょこっと顔を出す。私も少しだけ、最適解に近づけたのかもしれないね。
その晩、娘から手紙をもらいました。
「勇気をくれる言葉をありがとう」と書いてあったので、たぶん大丈夫だろう。
ちなみに息子には、「お姉ちゃんにもう少し優しくしてあげて!」と言われました(笑)
まっ!ここだけの話ってことで!