長靴を探すおじさんの本当の目的
カタログ通販のコールセンターでの出来事。
その日は、何分か置きに「長い長靴ですか」と言うオペレーターの声が聞こえてきた。あっちの人が電話を切ったあと、今度はこっちの人が「長い長靴ですか」と応えている。
どうやら同じおじさんがかけてきて、女性用の長靴を探しているらしい。ショート丈ではなく、ロング丈を探している。
あったっけ?という目配せが飛び交い、手の空いてる人がそこここでカタログをめくる。
やはりショート丈しか扱いがない。
丁重にお詫びし、電話を切る。
長い長靴はありますか、とかかってくる。
お詫びし、電話を切る。
という流れが繰り返されるうちに、おじさんの問い合わせが変化してきた。
ロング丈の扱いがないと案内したオペレーターに、あなたは長靴を持っているか、と聞く。持っていない、と返答すると、切る。
なんだこれ。
よくわからんが、新手のイタズラ電話か?広くないコールセンター内で、あっという間に
「長靴おじさん」
とあだ名がついた。長靴おじさんの目的がわからず、みんなで首をかしげる。
そんな中、私に長靴おじさんのコールが繋がった。「長い長靴ですか」と応える私に、にやにやした視線が飛んでくる。
もう知ってるやろと思いながら、扱いがない旨お詫びする。あなたは長靴を持っているか、と聞いてくる。
きたきた。持っている、と返答。私ほんとに持ってるし。さあ、どう出る。
それは長い長靴か。短いです。
今日は雨が降っているが、長靴を履いてきたか。いえ、履いてないです。
長靴の中に雨が入るでしょ。?入らないです。
入るでしょ。雨の入った長靴はどんな音がするの。?わからないです。
しつこくどんな音がするか聞いてきたが、わからない、としか答えようがなく、あきらめた長靴おじさんは電話を切った。
雨の入った長靴はどんな音がするのか聞かれた、と周りに報告すると、またもや皆一様に首をかしげる。しばらく頭をひねっているうちに、「あ!」とひらめく人がいた。
「それさ、グチョグチョ、とか、いやらしく聞こえる言葉を言わせたかったんや!」
え?
えろ電かよー!
わかりにくいわー!
えろ電やったらもっとわかりやすくかけてこいよ。いや、かけんでいいねんけど。
その日以降もたまに、雨になると長靴おじさんから同じ内容で電話がかかってきた。
「長い長靴ですか」が聞こえると、ああ、長靴おじさん、久し振り、と、なぜかコールセンターが和んだ。でも忘れてはいけない。
長靴おじさんの目的は、えろ電!
長靴の長さは関係ない。
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