30代中盤ですが美大に進学し(て)ました
タイトルの通りです。
この度、武蔵野美術大学(ムサビ)の通信に入学しました、というか実はもう今年の4月に入学していました。実はこれ仕事場にはつい最近お知らせした話で、かつこの記事は5月にすでに書いていたものを色々な事情でずっと伏せていました。時間の問題によりかなりの事後報告になってしまったのですが、タイミングもそうだしあくまで仕事が優先です!というのをお伝えしたかったのが理由です。会社関係者その他の皆様を驚かせてしまったらすいません。
で。
当方デザイナーなので、最近多くの人に美大卒と勘違いされていたことに気がついたのですが、実は私は、
大卒ではなく専門卒
デザイナーでありながらバックグラウンドはデザイン系の専門とはいえファッションで、美大とは残念ながら何の関係もない
だったりします。
そういうわけでここ数年大学進学はずっと考えており、近しい方々にはそうするかもとそれとなくお知らせしていたのですが、色々な理由が重なって結構デカい挑戦だけどやってみることにしたのでした。
なんでやるの?
理由は色々あります。
将来の選択肢を増やす(学歴コンプの克服も含む)
時間的に今しかなさそう
友達の大学院進学が後押しした
単純にずっと勉強したかった分野
迷いを断ち切る友人からの超力強いサポートとプッシュ
1. 将来の選択肢を増やす(学歴コンプの克服も含む)
実はこの数年、海外転職に踏み切ろうと考えたタイミングからも、大卒カードが無いことが足かせになる場面に何度か見舞われました。
例えば、海外のデザイナー職に応募しようとした時、関連学位がないと、それ相応の経歴(例えばOSS系の活動していた、何かのコンペで賞をとった、みたいな輝かしいやつ)がない限りは、足切り材料とされてしまう場合があったりします。
まあ最終的にはタイミングや相性の問題でもあるけど、学歴がないことにより入口が狭まってしまう可能性というのは、否定はできません。
残念ながらそれっぽい感じで選考から弾かれてしまうケースを日本でも海外でも何度か経験しました。
なお、私の転職歴については色々な理由でとんでもなく多いので、日本的な日本企業 = いわゆるJTCだと職歴多すぎて論外、とほぼ全ての会社に書類で落とされるレベルです。詳しく知りたい方はこちらをどうぞ
また、カナダやその他の国に移民を考えた時もやはり大卒資格というのは有利、というか、正直無いと今後将来不利になってしまうと思ったところはかなりあります。(むしろこっちの方が大きいかもしれない)
私がいたカナダもそうだしアメリカはもちろんのこと実は日本もなのですが、結構高い割合で、移民したい国の永住権を取得できるかどうかは、「自分のステータスを点数化したその合計が、国が提示するポイントよりも上かどうか」が大きく関係します。
このポイントは主に
学歴
職歴
年齢
婚姻状況
移民したい国の言語の習熟度
によって算定されますが、学歴が移民の障壁になるというケースは多く、残念ながら日本の専門卒の資格はそこをほぼ一切カバーしません。
海外でいうdiplomaというのは日本だと「専門士」に該当し、その資格を取得できる専門学校は日本には実はそこまでたくさん存在しません。(学校のディプロマポリシーによりますが)
私の卒業した専門の場合、外国でdiplomaとして認められる専門士資格を得られるまでには昼間部に少なくとも三年間通わないといけず、ここ数年で知ったのですが、夜間部3年の専門学校課程を出ている私の学位はDiplomaではなくDiplomaの下位のCertificate = ほぼ何もない、も同然なのでした。せっかく結構頑張って卒業したのにこれにはマジかよとなった。
そんなわけでカナダでdiplomaを取得したもののそれだけでは現在の永住権には敵わないところがあり、将来的に大学院進学することも考え始めたのですが、大学院のほとんどはBachelor(=学士、大卒資格)もしくはAdvanced Diploma(高度専門士、専門学校4年で得られる専門士より上の学位)保持者のみしか受け入れていないので、大学院に進学したければまず大学を卒業しろ、となります。
よって、仮に今後将来海外に出たいと思った時、選択肢を増やしておくならまずは大学に行くしかないということになるのでした。
大学なんて行かなくたっていいじゃん、と言う人もちらほらいたのですが、そういう人たちは揃いも揃ってみんな大卒、もしくは大卒でなくても飛び抜けた資格なり受賞歴をお持ちの方だったのでなんて無責任な発言なんだと思いながら私はそんなんじゃねーし、と思いスルーさせてもらいました。
かつてそういうことを言い放った父ですらも残念ながら大卒で、父の助言に則って学歴を取らなかった結果今に至ってしまったので、今回は生暖かく見守っていただきたいものです。
- なぜ通信制大学なのか。
ありがたいことに専門を卒業し社会人経験のある私には、学校によっては三年次編入の資格が存在していました。
それに、美大とはいえ通信制であるということによって学費が通常の大学の半分どころか1/4レベルまでカットできるという点もデカかった。
(全日制美大は200万弱 + 教材費/年、通信制は50万弱 + 教材費/年)
今回のムサビ通信出願にあたっては入学相談の段階で「必修単位が多いので2年で卒業できない = 卒業までに3年はかかることは覚悟してください」と言われたけど、それでも通常のように4年かけずに卒業できる可能性があり、さらに働きながらそれを実現できるというのは非常に合理的で、30代中盤、今後のキャリアを考える時間が20代ほど多く残されていない人間にとっては非常にありがたい手段です。
- なぜ海外大学じゃないのか。
海外大学に行かないの?というのは何度も聞かれたけど、海外大は通信でも学費が高く、かつ日本の単位との互換性が一切ないもしくは薄いので卒業までに4年〜費やす可能性があること、語学の問題などもあり、日本で頑張る以上に時間がなくなることを覚悟しないといけないという厳しい現実があります。
昨年、大病じゃないけど健康を考えさせられる出来事があった私には、正直なところそんなに体力と金の無駄遣いはできない。
奨学金も、大学は大学院向けと比較して年齢制限が生じるものが非常に多く、30代の私が取得できる奨学金は、卒業後に返済しなくてはならないタイプのものしか選択肢がほぼ存在していませんでした。
この年になってそんな高額の学費を4年分建て替えてもらって後で返さなくてはならない、しかもその間働けないなら、大学院に行きたいと思った時に海外大学院を考えればその学費の半分以下で済むし選択肢も多くて無駄がないじゃん、という結論に至りました。
なお、重要なのでお伝えすると、通信でも卒業すると学士の資格は手に入ります。
大学の奨学金の数の少なさに対して、大学院進学のための奨学金はもう少し多く存在しており、また、2年での卒業が一般的な大学院に関しては、国や学校により1年もしくは1年ちょっとでMaster(修士)が取れる学校もあります。
この人のポストに結構奨学金情報が載っているので参考にしたりしています
2. 今が一番時間がある。今が一番若い。
ありがたいことに、今の会社はどこからでも働ける選択肢だったり、フルリモートフルフレックスで自分が最適なパフォーマンスを維持できる状態を決めて守ることができる状態が用意されており、今の自分ならそれができるだけの経済的な状態もそれなりに担保できる。副業する時間を大学の課題に充てれば十分卒業のチャンスが見えてくるので是非そうしようと思えたのでした。
逆にいえば「そんなことが悠長に言えるのは今しかないかもしれない」と、フリーランスの経験から思ったりもしています。
今までの自分のフリーランスとしての経験上、完全なるフリーランスでも自分のペースを守って暮らせるかどうかは時間と戦略と運が左右するんですね。フリーランス = 時間の自由が「『完全に』約束されている」わけではないし、そういうことができる状態になるまでに年数を要することは容易に想像ができました。
今が一番若い。そう考えると、やりたいことは若くて体力が残っているうちにやっておくべきですね?
3. 社会人大学院に進学した友人の存在
ちょうどほぼ同じタイミングで同年代の友人数名が続々と社会人大学院への進学を決めたのもファクターになりました。
彼ら彼女らはすでに大学を出ていましたが、アカデミックな経験や知識がある方がもっと仕事がしやすい、だからもうちょっと学びたいしそれによるチャンスを増やしたいと躍起になっていて、「大変だけどすごく良い経験してると思う」と話す三者三様に、本人たちは年齢を感じさせないくらいエネルギッシュだったので私もこうやって学び続けながら歳をとっていきたいなあ、と思ったのでした。ちなみに彼らは大体30代中盤〜40代です。
あと、大学院に出願したいと思った時に、私のやりたい領域は基本的に大卒資格が必須だったというのはデカいです。私が行ってた文化服装学院なら大学院に行けるらしいんですが、私がやりたいことはもうファッションではないので・・・
4. シンプルに、ずっと学びたい分野だった
なぜファッション領域出身でパソコンに縁もゆかりもなさそうな人がグラフィックデザインができるんだ不思議だ、と思われるかもしれないですが、ありがたいことに私の家には人生のかなり早い段階からMacintoshのパソコンが存在しており、父が買って使わせてくれたKID PIXなり、フォトショなりイラレなりを通じて独学で何かを作る環境が整っていました。
そのため、私のグラフィックデザインはファッションデザインで培ったセンスと独学のソフトウェアスキルとの合わせ技で成り立ってきたという奇跡的な環境だったりします。
しかしそれだけでは限界があり、大人になりデザインの世界に足を踏み入れれば踏み入れるほど、独学で誰からのフィードバックも得られない、デザインについての基礎的な考え方が欠落してることに対して凄まじい危機感を感じ始めました。
デザインチームで自分以外全員美大もしくは美術系の学校を出てたりすると、前提条件が微妙にその人達とズレててチームについていけなくなるというような場面もたまに存在するんですよね。。
大学は通信とはいえそれなりのフィードバックと本人の努力が相まって初めて卒業できるものなので、自分の努力次第ではあるものの少なからず自分のそのような知識の習得に一役買ってくれるだろうと見込んだ投資でもあるのです。
カナダで知り合ったお金持ちのマダムが、「教育は最大の投資」と申して娘さんのUSの大学進学に惜しみなくお金を突っ込んでおり、娘さんは今では某有名証券会社で大学学費以上の稼ぎを手に入れてるそうなので納得でした。
5. 迷いを断ち切る友人からの超力強いサポートとプッシュ
今でもカナダなり海外にもう一度移住したいというのは考えているのですが、その計画を立てていた最中に私に一番キツく響いたものがリセッション。残念ながらカナダ帰国を考え始めたタイミングで大規模なレイオフや採用凍結が始まってしまったのでした。
コロナでのいまだかつてなかった就職難を経験し、努力の甲斐むなしく全く就職が決まらず日本帰国した私にとっては、現在のリセッション・インフレとそれに伴う大量レイオフand採用凍結は割とトラウマで、正直なところ、よっぽど腹を括らない限り挑戦してうまくいくと考えることはできなくなってきていたりします。コロナ時と似たような状況か、円安と物価高騰がすごいのでそれよりもむしろ結構酷な状況かもしれません。
というので最後までどうするかずっと迷っていたのですが、それをカナダ時代から長らくの友人に相談したところ「美大のことで手伝えることは手伝うからやれるなら両方やりなよ」と言ってくれたのでした。これは大きかった。
英語の言い回しで「Teamwork makes the dreamwork」というものがありますがまさしくそれで、持つべきものは友、を心から実感する場面でした。
※ちなみにカナダに渡航するためのビザに応募し ましたが、実はまだビザがおりていません。申請中に移民局でストライキが決行されてしまったそうで、多分早くても許可が降りるのは5月もしくは6月中になるのではと見込んでいます。 、5月にビザが降りました。猶予が来年5月までは残されているので、どうするか今結構真剣に考えています。
これからどうするの?というか今どうしてるの?
そういうわけなので、最後まで悩み続けていたのですが友人のプッシュが効いて出願し、ついに入学にこぎつけてしまいました。入学願書から履修登録用の書類がこのご時世に全て郵便物として紙で来て、しかも手書きで書かされる系だったのでなんとも日本の伝統的な学校法人みを感じています。なお、一部のレポート課題とプログラミングの課題を除いては全部郵便提出でした。うーんさすが日本、、紙資源節約してくれ。Save the tree…🌳😇
ちなみに、 そのうち別の記事として書こうかとも思いつつ言うと、
ムサビの通信は
必修スクーリング授業(通学)がいくつか存在する
基本的に提出物の3/2以上は、紙。もしくは立体物。
なので郵便で提出することになるし、結構大型の郵便になることもしばしばある
です。
そして、2年で卒業は、おそらく社会人には、無理。
私の場合、よっぽど計画して睡眠時間を犠牲にすれば、今年のフル単取得ができなくはなかったのですが、今年に限って東京での生活面があまりにも忙しく、毎週のように公私共に予定外のアクシデントや予定が発生した結果、課題をする時間が全くなくなってしまいました。(くっそーーー
今年はそういったことが積み重なった結果体を壊すかもしれないレベルで本当に大変だったので、友人一同には来年はお誘いの大半を断る方向で話をつけたいと思ってます。
(ごめんマジで。お金かかってるから卒業の方が大事なんで!!!!)
とりあえず無事に3年次を修了することを現時点の目標にしたいと思っています。まだ提出物あるんで単位は取れるだけ取る。
そのうち学生生活なり仕事との両立についてはもうちょっと詳しく書けたらと思いますがとりあえずこのへんで。
ちなみにこの写真はMidjourneyで A female university student captured from her back at bright library in California University とPromptして出てきたなにかです。
来年はもうちょっと実務に繋がりそうな勉強がしたい。終わり