世界における『北斎』
サントリー美術館の北斎展
サントリー美術館で開催されていた北斎展を訪れた。
平日の昼過ぎにかかわらず会場は非常に混雑していて、客層としては全体的に年齢層が高かったが、外国人の方も多かった。
非常に混んでいたため、十分に観覧できなかったが、私が気になったのは北斎の作品を所有している外国人コレクターの紹介エリアだ。いままであまり目がいかなかったところだが、今回、ただ作品を見るだけでなく違った点に着目することを意識してみた。
イギリス人コレクター
北斎展では、6人のコレクターが紹介されていた。
外科医のウィリアム・アンダーソンは、もともと絵の才能もあり、日本海軍の招きで来日した7年間の間に数千点もの作品を購入したという。日本美術(版画や画本)を多く購入し、ヨーロッパでもっともすぐれたコレクションを作り上げた。
小説家のアーサー・モリソンは、日本を訪れたことはないが、日本帰りの船員や、友人、外交官から浮世絵版画を中心に数多く購入しコレクションを形成した。またイギリスに滞在していた下村観山、南方熊楠との交流もあったという。
画家のチャールズ・ヘーゼルウッド・シャノンは肖像画家で、大学在学中に日本の版画に興味を持ち、日本版画や絵画をコレクションするに至った。
詩人のローレンス・ビニョンは、大英博物館版画部の部長として研究し、来日した際には東京帝国大学(今の東大)で講演も行ったという。
大英博物館学芸員だったオーガスタス・ウォラストン・フランクスは、私費で多くの古美術を集め、大英博物館に日本部門が設立される原動力となったと言われている。
学者のジャック・ヒリヤーは浮世絵学者として北斎の挿画研究の書等をだしている。
北斎の世界的影響力
そもそも、日本の浮世絵は「日本から西欧への輸出陶器の梱包材として使われていた浮世絵が当時の西洋人に大きな衝撃を与えた」というエピソードで知られているが、浮世絵が初めて本格的に西洋でお披露目されたのは、1867年にパリで開かれた万国博覧会と言われている。
これを機に西洋で浮世絵が爆発的に人気になった。特に、浮世絵の構図と色彩です。(アシメトリーや何も描いていない背景の余白、対象物の一部を拡大したり切り取ったりした大胆な構図、色鮮やかな色彩表現は、西洋絵画の常識からかけ離れたもので、西洋画家にとっては驚きだったようだ。
印象派画家で有名なモネは日本愛好家として知られているが、浮世絵を多く収集しており、中でも北斎の浮世絵を最も多く所有していた。
また、ゴッホとその弟テオの書簡にはたびたび「北斎」の名前が登場しており、エドゥアール・マネやギュスターヴ・モローは北斎の絵手本を模写している。
また、私の好きな作曲家であるドビュッシーの「海」も北斎の影響を受けていると言われており、初版楽譜の表紙には、北斎の「神奈川沖浪裏」の模写が使用されている。
最後に
今まであまり北斎の絵について興味を持って見たことがなかったのだが、今回、「外国人コレクター」「海外への影響」というところに注目してみたことで、想像していた以上に海外での人気が高く、絵画以外の芸術への影響も強いということに驚いた。近年なぜまた北斎が人気なのだろうと思っていたが、その理由が分かった気がする。
私自身、日本文化やアートを海外に広めたいという目標があるが、北斎は自分の作品でそれを成し遂げた一人だと考えると、そのすごさを改めて実感している。