Beggarの死が私に教えてくれたこと。
朝から芸能人の飲酒運転でワイドショーが賑わっている。
父親が言った。
「こんなんただの甘えや。子供やないねんから。」
いつになったら「精神疾患=甘え」の図式はなくなるのか。
家族の忠告を怒鳴り散らし蹴散らかし暴飲暴食を続け、結果肝臓の数値は4桁目前、高血圧と糖尿になって絶賛食事制限付きの人生を送るハメになっている人のことは甘えとは言わないのか。
私はスコットランドでYoung careleaverのmentorになるという日本じゃ馴染みのないプログラムに参加していた。
そこには、もはやグレてドラッグかお酒に手を出すしかないということに納得してしまう様な環境で育ってきた子供達がいた。
親の勝手で育児放棄され施設に行かざるを得なくなった子供達を見ると親になるということの責任の重さを痛感するけど、その親もまた同じ様な境遇で育ち、どうしようもなくなっている被害者でもあった。
負の連鎖は確実にループ上になって今もぐるぐる回っている。
イギリスにはホームレスがたくさんいる。
日本より多いのかどうかは分からないけど、都会になればなる程その数は増えていく。
日本と決定的に違うのが、ホームレスに対して寛大な人達が多いこと。
お金をあげることは日常茶飯事だし、地域ボランティアの人達が彼らの手を握りしめながら話をする光景すら珍しいものではない。
私の住んでいた場所は田舎だったこともあり、駅前のショッピングセンター前には定位置にいつも同じホームレスの人達が住んでいて誰もがお互い顔見知りみたいな雰囲気があった。
スコットランドは日本より高緯度にあるが
冬はそれほど寒くはない。
夏がびっくりするくらい短くて暑くないし、冬はほとんど真っ暗だけど。
ただ、雨が多過ぎて毎日の様に濡れて帰るハメになるので風邪をひく頻度はグンと上がる。
濡れた体で浴びるシャワー程さぶいものはない。
そんな冬のある朝、いつもいるホームレスのおじちゃんはそこにいなかった。
代わりに目に飛び込んできたのは、新しい血がついたおじちゃんのクッションだった。
洗い立てのはずがないそのクッションがやけに真っ白に見えたその光景は今も目に焼き付いている。
2週間程して、その場所は花束と子供達からのメッセージカードで溢れかえった。
私は自分でも何だか分からない怒りに満ち溢れていた。
もしかしたらそのおじちゃんは「おいっ、さすがにもうちょい頑張れたやろ!」みたいな理由でホームレスになってるかもしれない。
同情の余地なんてものはない人生を送ってきた人かもしれない。
何も知らないそのおじちゃんの死に対して湧き上がるこの怒りは何なのか。
届けられたばかりの綺麗な花やLoveの文字がたくさん並んだカードを見て、私はその場から動けなくなった。
もちろん、写真なんて撮れるはずもなかった。
私は今もまだこの時の「怒り」に対する答えが出ていない。
ただ、この怒りが誰か特定の1人に向けられたものではないことだけは確かだ。
怒りの相手には私自身も含まれているし、そのおじちゃんも含まれている。
花束を置いていった人や、子供にカードを書かせた親にも向けられているかもしれない。
情報が溢れかえっている現代、私達には情報を取捨選択する権利が与えられた。
情報はあればあるだけ良いわけではないが、情報があるおかげで今までの自分の思い込みが思い込みであると気付かされることはたくさんある。
でも、情報の取捨選択は自分次第だからどうしても偏るし、受け付けない人はとことん受け付けない。
自分の知らない場所での生活は、予期せぬタイミングで価値観を180度変えることに繋がる。
取捨選択なんて呑気なこと言ってる暇は与えられない。
だからこそ、価値観が変えられる。
無理矢理ドラッグやアルコールの蔓延している世界に行って価値観変えろなんてことはもちろん思わない。
大麻特有のあの匂いが漂う街中を通って家に帰る生活なんて知らなくていい。(私はあの匂いがキライ。)
でも、大麻でラリった学生を横目にする生活、ロンドンの街中で生きてるかどうか判別不能な状態になっちゃってる高校生を見てしまった経験から言えるのは、大麻は絶対に良くない。
実際に見たからこそ分かるし、理屈なんて抜きに言える。
大麻良くない。
価値観の変化は自分に必要だからやってくるもんやと私は思う。
そして、価値観の変化は自分の広がりに繋げることが出来る。
狭めることも出来るけど。
私はこの先も自分を広げていきたい。
広げることで自分の中の選択肢を増やすんだ。
人は2択だと葛藤を起こす。
でも、3択目が生まれるとそれは自由になる。
依存症が本人の甘えだとか大麻合法化だとか叫ぶ人は、現実を目の当たりにした時同じことが言えるんやろうか。
私も目の当たりにしたとか偉そうなこと言える程に何か知ってるわけではないけど、少なくとも何も知らない日本人よりかは知っていることがある。
社会の闇に対して今私が出来ることなんてない。
あったら教えて欲しい。
私は、目の前にいる家族の価値観すら変えることが出来ず、朝っぱらからムカムカさせられている。
他人は変えられない。
変えられるのは自分だけ。
だから、1人でも多くの人に自分の変化を見せていくしかない。
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