科学技術・地球システム・人間
生態系の論理は決してすべてが調和に向かっているという予定調和を示すものではない。多くの種の間に一定の均衡が成立するとしても、それはそれらの間のいろいろな形での相互作用の結果、たまたまそうなるだけであって、そのような均衡解において占めるべき位置を持たない種は滅びてしまうのである。従って残った種の間に調和が成立しているように見えても、それは結果としてそうなっただけであって、調和を目標としてシステムが変化してきたわけではない。またそのような均衡が生物の種の豊かさと多様性を反映するというのは正しくない。もしある範囲において物理化学的条件が一定に保たれ、外界からの強い影響がなければ、その中での生物の種の間の生存競争の結果は、結局その条件に最もよく適合した少数の種が生き残って、他の多くの種は滅んでしまう可能性が高いのである。
しかし地球上の多くの部分における生態系はむしろ安定的な均衡状態にあることは少ないように思われる。それは気候その他の外的条件が絶えず変化するからであるが、また生態系そのものが均衡解を持たないこともあり得るし、また均衡解を持つとしてもそれが安定的でない、つまり均衡に達することがあってもすぐまた離れてしまうようなものである場合も多いように思われる。いい換えれば生態系は数学的な意味でのカオスであることも考えられる。
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