百寺巡礼
滋賀・東海
私も静かに湖東平野を一望してみた。すると、近江という土地の重要性が実感できる。
日本最大の湖である琵琶湖が中心にあるため、滋賀県の平地は湖の周囲にわずかにあるだけのような印象がある。
しかし、実際には琵琶湖は県全体の面積の六分の一しか占めていない。しかも、その琵琶湖をとりまく土地はたいへん肥沃で、住民の暮らしは豊かだったのである。
さらに、地理的に見てもここは非常に重要な場所だとわかる。
西日本と東日本の接点に位置しているため、近江は古くから交通の要衝だった。主要な道としては東海道、東山道、北陸道の三つがここを通っている。
かつての都、奈良と京都からも近い。北陸と畿内とを結ぶ琵琶湖の水上交通も、重要な役割をはたしていた。いわば、近江は東西および南北の物流の鍵をにぎる場所だったのである。