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【週1書評】「人生を変えた」なんて軽々しく言うな!!
こんにちは。ライターの吉岡です。
月曜日、週1書評です。
今回から趣向を変えました。
タイトルに私が抱いた感想を掲げ、何の本かは記事を開いてみてのお楽しみ、と言う形にします。
タイトルの意味は、この書評を読んで頂けるとわかります。
そして、趣向を変えたとたん不穏なタイトルで申し訳ないです。笑
今回、ご紹介する本は
『バカの壁』養老孟子(新潮新書)
です。
![](https://assets.st-note.com/img/1739136392-plNR7wrLVE9YeC8tkKUgcWB1.jpg?width=1200)
この本どんな本?
『バカの壁』は2003年に発売され、2025年2月現在までに460万部発行されています。一時期解説不要の超有名本ですね。発刊当時私は子どもでしたが、タイトルがキャッチーなこともあって流行語のように『〇〇の壁』みたいな言い方が流行っていたように記憶しています。
なぜこの本を読もうと思った?
先日、五木寛之さんの『大河の一滴』を読みました。
五木寛之さんは仏教的、東洋哲学的な視点で世の中をとらえている方といえます。
対して養老孟子さん解剖学者でもあり、科学的、西洋哲学的アプローチをされる方です。五木さんだけとりあげて養老さんを取り上げないのはなんだか違うな?と思ったので今回書評で取り上げさせて頂くことにしました。
しかし、今回読んでいるうちにふつふつと怒りがわいてきまして。
普段の書評なら基本良いことしか書きませんし、そもそもnoteにあまりマイナスなことは言わないようにしているつもりです。それでも、ちょっと腹の虫がおさまりませんでした。笑
なので、正直に書くことにします。書評の趣向を変えてみようと思ったのはこの気持ちを表現したいから、という背景もあります。
ちなみに怒りの対象は養老さんが語る内容ではありません。内容自体はとても面白かったです。私の怒りについては、後ほど詳しく紹介します。
正直な感想
お気に入りPoint①:科学的観点と科学的推論の否定
養老さんはもともと解剖学者です。医療は科学の分野ですから、本書でも解剖学者ならではの視点で、脳の仕組みなど、つまり科学的な方向から考察を深めています。
同時に科学的推論を絶対正とすることに警鐘を鳴らされています。科学的推論とは科学的事実にたいして原因とされる仮説です。科学は反証されなければ事実にはならない。反証がされないものは推論の域をでません。しかし世の中の人は科学的事実と科学的推論をすべて正しいものと認識してしまっている、と養老さんはおっしゃっています。科学的事実と科学的推論、バランスのとれた考え方をされているな、と感じました。
お気に入りPoint②:教育者としての目線
養老さんは学者であると同時に、東京大学医学部で教授として勤務されていました。ですので、学生さんの状況をよくご覧になっていました。教育者としてのリアルな声が、養老さんの思想に反映されているな、と感じました。
私の怒りをきいてくれ
ここからは本の内容とは関係ありあせん。私の怒りを鎮めるためだけに書きます。言葉遣いは荒くありませんが、個人的な見解を多く含み、否定的な内容が入ります。仕方ない、読んでやるよ、と言う方だけお進みください。
『バカの壁』自体、古い本ではありますが、とても興味深い内容でした。
問題はこちら。帯です。
![](https://assets.st-note.com/img/1739136680-SJCmuAVBbULE3R1gqXoYMhNF.jpg?width=1200)
有名な俳優さんですね。彼女をどうこう言うつもりはありません。彼女が推薦しているのも、本当かどうかはおいといて別に構いません。どこの出版社でもこういうイメージ戦略はとっています。
問題はコメント。
人生を変えた1冊。知らないことを知るって、たまらない
正直、本屋でこの帯を見たとき、購入をやめようかと思いました。
せっかくの本に、なんて安っぽい売り文句をつけたのだと。
この帯を見てから本書を読んだものですから、「人生を変える」という言葉に頭が引っ張られてしまい、私の中で文章がかすんでしまったのです。
人生を変える?ここでいう人生とはなんでしょう?
人が歩む一生、と捉えましょうか。ということは、この本を読んだことであなたの一生の歩き方が変わったということでしょうか?
そもそも本を読んだだけでは人生は変わりません。本を読んだその人が考えたり行動したりすることで初めて「人生が変わる」のです。本は人生を変えるきっかけになるとしても、本で人生は変わりません。あながた変わったのです。
実際この俳優さんは本書を読んで、考え方が変わった、その結果人生も変わったと思ったのかもしれません。それ自体否定はしません。これが、もし書評なら「ああ、あなたはそう感じたのね、素晴らしい本に出会えてよかったね」で終わります。
問題は帯という、読者に購入を促すメッセージにこれを書いたことです。
出版社はこの安い売り文句を見て「〇〇さんの人生が変わったんだ!じゃあ自分の人生も変わるかも?買おう!」となる読者がいると思っているのでしょうか?養老孟子の本を購入しようと検討している読者に?
出版社も馬鹿ではありませんから、そんなこときっと考えていません。
この売り文句の狙いは養老孟子を普段読んでいる人ではなく、普段本を読まない客層か中学生ぐらいの学生さんを狙ったものでしょう。
しかし、この帯につられて本を買うような客層は、この本を読んでも人生変わりません。
なぜなら、「人生を変える」なんてワードに引っかかる人は、本そのものに人生を変える力があると勘違いしているからです。読めば賢くなる、と。
その矛盾を利用して購入を促そうという姿勢が、非常に腹立たしいのです。
養老さんが、この本を読んで人生を変えてほしい、と言っているならその帯でいいですよ。一言でも言っていますか、そんなこと。養老さんは、世の中にはいろんな考え方があるよ、こんな考え方もある、試しに聞いていきなさい、と言っているだけです。
読者も作者も馬鹿にした、ひどい帯だと思いました。
まとめ
書評と言いつつ、帯の文句がメインで本当にすみません。
誤解なきよう改めてお伝えしますが、本自体は興味深かったです。
養老さんや、帯に起用されている俳優さんを批判したり、悪く言うつもりは一切ありません。
本を読むという行為は、著者と自分との対話だと私は考えています。
著者の意見に触れて、自分はこう思う、思わない、と内省することが重要です。読んでいるあなたがいるから本や文章は成り立ちます。
本や文章そのものには人生を変える力なんてありません。そこは、読んだあなた次第です。
今後もそういう視点を忘れず、本や文章、言葉と真剣に向き合っていきたいと思いました。お目汚し、大変失礼しました。