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『シュガー・ラッシュ:オンライン』が本当に納得いかない|ネタバレ

2018年12月21日公開『シュガー・ラッシュ:オンライン』の試写を観て、これはあまりにも酷い、と思ったので、ひとこと言っておきます。

私はディズニーメディアのWebディレクターの仕事上(当時)、ディズニー配給映画はすべて観ます。2017年は(ソニー配給のスパイダーマン:ホームカミング含む)9本、2018年は9本。

これだけ観ていて、基本的に作品を嫌いになることはありません。

欠点は指摘するし、面白くなければ面白くないと言うけれど、嫌いになることは本当に滅多にないんです。

でも、『シュガー・ラッシュ:オンライン』は、まずい。

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(以下、ネタバレには配慮しないので、気にしない方だけ読み進めてください)

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変化を望まないラルフと、変化を望むヴァネロペ

『シュガー・ラッシュ:オンライン』では、主役であるラルフと、ヴァネロペが、時代や環境の変化にどう応じるか、が描かれます。

私たちも学校を卒業したり、結婚をしたりというライフイベント、それからインターネットの急激な普及による社会構造の変化など、常に移り変わる状況にどう応じるのか、様々な決断をしています。

ときには迷い、うまくいかなかったり、他人を傷つけてしまったりすることもあるわけで、このこと自体は普遍的な題材と言えるでしょう。

変化を望まないラルフと、変化を望むヴァネロペ。

真っ向反対を望む2人は、当然のようにすれ違い、喧嘩をし、そして最後には互いの思い・決断を認め合います。

その話の大筋は問題ないし、結末も良いと個人的には思います。

が。

同じ過ちを繰り返すラルフ

そこで描かれるのは、デジャブ。

ラルフが前作と同じ過ちを繰り返す、見るに堪えない描写なんですよ。

ラルフは前作『シュガー・ラッシュ』で、ヴァネロペのアイデンティティそのもの、魂そのものとも言えるほどに大切な、レーシングカートを、壊してしまっています。

普通なら、絶交です。

レーシングカートは、その当時、虐げられていたヴァネロペが、唯一、自分らしさを感じられる大切な大切なものだったわけです。

どんなに必死に謝られたって、許す人は多くないでしょう。

ただ、『シュガー・ラッシュ』でラルフは、命を掛けて、ヴァネロペを救おうとしたわけで、それで納得するかは人それぞれだけれど、一応は、等価な贖罪をしたと考えることはできます。

一方の『シュガー・ラッシュ:オンライン』では、ラルフは今度は、ヴァネロペの「インターネットに移住したい」という思いを受け入れられず、ヴァネロペが “自分の居場所” だと感じる「スローター・レース」の世界を、壊そうとします。

結果、「スローター・レース」の世界は修復困難なほどに破壊され、初期化されるハメに。

プログラム外の存在であるヴァネロペは、間一髪で死ぬ(消滅する)寸前、というとんでもない目に遭います。

ラルフの行動について「ちょっと不具合を起こさせるだけのつもりだった」と言い訳がなされますが、手にしたコンピューター・ウイルスは、どう見てもヤバいわけで(視覚化されている)、要するに、自分の思い通りにしたいがために、事実から目を背けていた、というわけです。

こんなヤツがいたら絶対に関わらない

これ、「わかるわかる、しかたないよな」とラルフの行動に共感できるんでしょうか。

私には無理。

レーシングカート破壊でヴァネロペのアイデンティティを粉々にし、今度はヴァネロペが “自分の居場所” と感じる、大切な世界を破壊したばかりか(おまえは急所攻撃の天才か)、命までも危険に晒す。

ラルフは前作『シュガー・ラッシュ』で、絶対にやってはいけないことがある、と学んだんじゃないのかよ。

しかも今度は、カート破壊の代償に自分の命を掛けたような贖罪もなされることはありません。

エンディングで、ラルフはアーケードゲームの世界に、ヴァネロペはインターネットの世界に、それぞれ離れて生きることになるわけですが、ヴァネロペは「頭の●かしいヤツ」から離れられて、ホッと胸をなで下ろしているんじゃないか、とすら思えます。

私たちの社会においても、自分本位で理屈の通じないヤツや、失敗からなにも学ばずに同じ過ちを繰り返すヤツはいますが、「ダメだコイツは、関わらないようにしよう」という対応を取る人が大半ではないでしょうか。

どんなに憎めないいいヤツだったとしても、自分の思い通りにならないからと衝動的に殺されかけ、「こんな酷いことになるとは思わなかった」と言い訳される。

そんな人が現実にいたら、ふざけるな、と逆にこちらが殺意を抱くレベルです。

主役キャラに嫌悪を抱かせるような映画ってどうなの

では、ディズニーはいったい、『シュガー・ラッシュ:オンライン』で、何を表現し、何を伝えたかったのでしょうか。

好意的に捉えて、「何を経験しても変わらない人もいる、でもそれが愛すべき “人” というものだよね」がテーマなのでしょうか。

まあ、それもこの世の真実の一つには違いありません。誰もが失敗を悔い改め、次からは間違えないわけではありません。

衝動的な性格や、思い込みが激しすぎる傾向も含めてラルフという人格の魅力、と言えば、それはそうでしょう。

それともどんな試練にも打ち勝って続く友情、ということが描きたかったのでしょうか。

でもね。

主役キャラに心からの嫌悪を抱かせるような映画って、どうなんでしょうか。

ラルフ、キ●ガイかよ、と思わせる映画って、どうなんでしょうか。

これは、面白いとかつまらない以前の問題。

本当に納得がいかない。

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