私は視線恐怖症だった
そんなことを思い出した。発病は、高校一年生の頃のことである。
原因はいろいろあった。いまだにバラバラと散らばりすぎていて、とても書けたものではない。ただ、あの頃の感覚をよく覚えていることを思い出した。すっかり私の一部になっていて、それより前の自分が思い出せない。
それまで行けた場所に行けなくなった。乗れたものに乗れなくなった。会えた人に会えなくなって、できることが少なくなった。教室の前の方の席が嫌いだった。背後からの全ての視線が突き刺さっていると感じ、そうであると信じていた。もう2度と振り向くことができないと、震えることもできず体を硬くしていた。
精神に病を抱えるとは、自分だけしかいない幻の中に生きるようなものだと感じる。現実的にはありえないことが、心の中で真実になってしまう。
今はバスにも乗れるし人混みの中に入ることもできるようになったけど、できるようになったことは平気になったわけではない。とても怖い。でもそれは幻であることを自覚して、現実を生きようとして、生きている。
それでも鏡の中の自分と目が合うのが怖くて、今でもじっくり鏡は見られない。
今でも幻の中を生きていることを思い出して、少し寂しくなった話。