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読書感想『発達障害サバイバルガイド』

こんにちは。栗原白帆です。借金玉さんの『発達障害サバイバルガイド』を読了しましした。

発達障害の方へ日常生活を送るためのアドバイスをする本はたくさんあります。でも多くの著者は医療関係の方で、医者が患者にアドバイスする、という雰囲気が強い。

それに対してこの本ではADHDと診断された借金玉さんが、自分の経験を通じて得た知見を伝える、という形をとっています。
当事者が、当事者の言葉で語っている。だから説得力がすごい。

いろんな失敗をして、痛い目を見て、なんとかそれを回避するために考え出した方法がこれです!という思いが伝わってきます。

「サバイバルガイド」の題名通り、生きのびるためのテクニックが実感のこもった文章で解説されているのですが、特別なことにはほとんど触れていません。
生活環境(住居環境)の作り方、お金の管理、生活習慣(入浴や部屋の片づけ)の確立方法、服の選び方、自炊の仕方など、ごくごく普通の日常生活にを送るために、どんな道具を使えばいいか、どんな配置にすればいいか、どういう考え方をすればいいかを紹介・解説してくれています。

各章の初めにエッセイがあるのですが、その内容がとてもいい。
優しいんです。

「みんなができることができない」無力感が、僕の人生にはずっとついてきました。それは発達障害のせいかもしれないし、あるいは僕の努力が足りなかったのかもしれません。ー略ーサバイバルとは手に入る資源で生きのびていくことです。いきなり理想の自分に近づいていく努力をする前に、まずは日々を苦しまずに生きられるようになることが先決です。
 ー略ー今ある資源を最適化することならいつだってできます。
 どうか、「自分は怠けている」という結論に安住しないでください。できないことはできない、ないものはない。いつだってそこから始めていくしかないのです。
 まずは今日を、やっていきましょう。

第3刷 P.91(強調栗原)

じぶんは何ができないか、を十分に理解し、どうすればできない状態をできる状態にもっていけるのかを考え抜いた知恵が詰まっています。

一方で「サバイバル」という言葉から想像する過酷さのようなものはありません。

サバイバルとはよりラクに、より快適に、より優雅に生きられる環境を自ら作り上げていくことであると、本書では定めています。
 ー略ー
「きちんと生活をしよう」は「快適な生活をしよう」と同義でなければいけないと僕は思います。

第3刷 P.10-11(強調栗原)

この本を読んでいて感じるのは、本当の自立とは、あらゆる便利な道具に頼り、人に頼り、支えてもらうことなんだ、ということです。

もう20年近く前、私が特別支援校に勤務していたころの「自立」とは、人に頼らず自分でなんでもできるようになる、ということでした。
どんなに時間がかかっても(手伝ってもらえば5分の着替えに1時間かかっても)、一人で着替える。全盲でも一人で歩く、一人で食べる、それが「自立」でした。

でも本当はそうではないはずです。
自立とは必要な時に必要な助けを求められる力のことだと思います。
助けてくれるのは人でも、便利家電でも、アプリでもいい。
いま困っている自分を助けてくれる道具・人は何かが判断できるようになることこそ、自立に必要な力です。
1時間かけて着替えるより、手伝ってもらって5分で着替え、55分を好きなことに使う方が人生は快適なはずです。

人は誰でも快適に生活していい。

この本は生活を快適にするための方法が満載です。
何より素敵に感じたのは休日の過ごし方についても書かれていることです。
余暇の過ごし方は、快適な人生を送るために欠かせない要素の一つであることをちゃんと教えてくれる。

「失敗まみれの人生」(P.10)を生きてきた借金玉さんだから、押し付けたり、上から目線でアドバイスすることはありません。
読んでいると親身に「それ困るよね、そういうときはこうするといいよ」と寄り添ってもらっているような気持になります。

「発達障害」と銘打っていますが、誰が読んでも役に立つライフスキルがいっぱい。障害のある人が生きやすい毎日は、そうでない人にとっても快適な毎日なんだと実感しました。





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