20230530配信 何を書くか? その前に、何を求められているのか?

公務員志望者各位

論作文が課されている方もいると思います。今回はその中でも「作文」ではなく、「論文」の対策について。(論文と作文の違いは1/24配信のものをご参照ください。)

既に対策の真っ最中であるかと思いますが、テクニックではなく、核心の部分について改めて重要なことを伝えます。それは
「設問の意味を正しく読み解いてください。」
ということです。

設問が何を求めているのか?これを読み誤ると、しっかりと書けたと思った答案でも、点を取り損ねます。

かねがね、集団討論と論作文は対策が共通化できることはお伝えしてきました。集団討論の設問は、自治体が直面している社会問題を提示して対策を問う直球タイプの問題が多いです。なぜなら、その方が互いにはじめまして同士の受験生は討論に入りやすく、面接官もその方が評価をしやすいからです。

一方で、論作文の設問では近年、変化球タイプが増えています。球筋をしっかりと見極めて回答する必要があるので、書く内容の構成をしっかりと前書きしてから書き始めてください。
ただし、直球でも変化球でも、基本の部分(背景・現状の把握、原因分析・対策の方向性の抽出、具体的対策、まとめ)は大きく変わりません。

4つの具体例を挙げます。

(2022年 長野県)
◎令和2年度の長野県内の育児休業取得率は、女性が96.4%、男性が19.8%である。以下の資料を踏まえ、男性の取得率を上げる必要性を考察したうえで、行政としてどのような施策が必要か、あなたの考えを具体的に述べなさい。

国家一般や東京都、神奈川県でも出題された資料提示タイプです。重要なことは提示された資料には必ず出題側の意図があるということです。この育児休業取得率の向上については2021年は大阪府からもほぼ同じ内容が出題されています。

では、設問の文言を、何が求められているか、に具体的に変換します。
① 資料を踏まえ ⇒ 資料から読み取れる事実・現状等を説明せよ
② 必要性を考察したうえで ⇒ ①からなぜ必要か説明せよ
③ どのような施策が必要か ⇒ ②のために県は何をすべきか具体的に説明せよ
と、なります。そして最後に
④ まとめを記載
となります。


(2022年 愛知県)
◎あなたの考える「危機に強い愛知」とはどのような県か。また、それを実現するために、どのような方法で地域づくりを行うべきかを一つ述べよ。

自治体の未来予想図である行政計画に関する設問です。(行政計画については昨年10月9日に配信しました『必読書のご紹介』をご覧ください。)

この設問では愛知県の最上位の行政計画を知らないと合格点は厳しい内容です。2021年は富山県も最上位の行政計画からの出題でした。設問の文言を、答案に具体的に求めている言葉に変換します。
① 危機に強い愛知 ⇒ この言葉の意味を説明せよ
② どのような県か ⇒ ①を元に具体的な説明せよ
③ それを実現するために ⇒ ②について、まず現状はどうなっているのか説明し、その上で取り組むべき課題は何かを抽出せよ
④ どのような方法で ⇒ ②の実現のために③の課題への取り組み方を説明せよ
⑤ 最後にまとめを記載


(2022年 福井県)
◎SDGsとは国連サミットにおいて採択された2030年までの国際目標である。持続可能な世界をじつげんするための17のゴール(目標)から構成され、「誰一人取り残さない」という共通理念を掲げている。昨年5月、福井県は内閣府の「SDGs未来都市」に選定された。
(1)SDGsの目標の中で、あなたが最も関心を持っているものを1つ挙げ、その理由について具体的に述べなさい。
(2)あなたが本県の職員になった場合、(1)で挙げた目標を達成するために解決すべき課題を挙げるとともに、県として取り組んでみたい施策について具体的に述べなさい。

2021年はSDGsに関するほぼ同じ内容の問題が兵庫県でも出題されていました(同じ内容が出題された理由は、以前10/5に配信したとおりです。)。
この設問では、SDGsという広範な分野にまたがることでありながら具体的な取り組むべき社会問題が示されていません。すなわち、「書きやすい得意な分野で述べていいよ。」というボーナスステージのようなものです。
しかも(1)(2)と分け、さらに設問内で細かく答案のレールを敷いています。このレールに沿って書けば、余裕で合格です。逆に外れると、大きく減点されます。合格圏外へと落ちます。

(2022年 特別区)
◎特別区では、地方分権の進展や、児童相談所の設置に加え、新型コロナウイルス感染症対策により、前例のない課題やニーズが生まれ、区民が期待する役割も、かつてないほど複雑で高度なものとなっています。特別区がこれらの課題の解決に向けた取組を進めていくには、区民に最も身近な基礎自治体として、自立性の高い効率的な事務運営が重要です。このような状況を踏まえ、区民の生命や生活を守るための、限られた行政資源による区政運営について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

特別区の設問は文章量がありますが、直球型に近いタイプです。ただし、現状や直面している問題、対策の方向性が抽象的な文言でしか示されていない場合が多いです。ですので設問に沿う形で具体化して論述する必要があります。求められていることは
① 前例のない課題やニーズ、かつてないほど複雑で高度 ⇒ 何のことか具体的に説明せよ
② 自立性の高い効率的な事務運営 ⇒ これも具体的に説明せよ
③ どのように取り組むべきか ⇒ ①②を踏まえて具体的な取組みを説明せよ
④ 最後にまとめ
私なら、この設問で特別区が直面している問題は、多様化する諸問題に加え、コロナ禍で浮き彫りとなった従来型の行政運営ではこれからも対応できない、ということとし、その対策として、行政事務のデジタル化、公共施設(図書館、公民館)の管理運営の見直しを書きます。

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