6/11(木)

なんだか猛烈にお金を使いたくなったので、近所のスーパーに行ったが、もぐらが出たとかで臨時休業になって入れなかった。

次にコンビニに入ると、葬儀終わりなのか、艶のない黒スーツを着た人達が店中埋め尽くしていた。
それは別にちょっと驚くくらいで別にいいのだが、その人達が全員、生まれて初めてコンビニに来たのかというくらい、商品を手に取ってひとつひとつじっくり眺めている。

そのせいで、雑誌は折り目が付いてくたくたになり、ドリンクを入れている扉は常に開けっぱなし、お菓子やカップ麺のフィルムは指紋だらけでぺったぺた、おにぎりなんかは手の形に少し丸くなっていた。

そんな使用感の出たものは気持ち悪くて買いたくない。
しかし、喪服の人たちは次々カゴに入れている。
血のつながりとは恐ろしいな、と思った。

他のコンビニを2、3軒回ったが、それぞれにまた別の遺族がいて、同じように物色していたので、何も買わず出た。

一旦帰宅するが、どうしても金を使いたい。
そうだ、スマホのアプリに課金でもしてみようかなとひらめいた。

有名なゲーム内でガチャを回しまくるのもいいが、そもそもアプリ自体有料のものを入れることにした。

ストア内で有料に絞ると、膨大にある。
適当に探していると、120円で買える「けん玉」というアプリを見つけた。
スマホでけん玉。
まぁ想像はわりとつくなーと思いつつ、デジタル機器でアナログおもちゃに興じるのも悪くないと思い、インストールした。

軽快なBGMと共にだるま筆で書いたような分厚いフォントで「けん玉」という文字が飛び出る。
「はじめる」というボタンをタップすると、いきなり広告が流れ出す。
顔を隠した薄着の女がくねくねしている。
課金したのに広告あるのかー、と思って見ていると、その女が、
「けん玉したいならぁ、このアプリをインストールしてネ」と言ってアプリが落ちた。

しばらく真っ白な画面で固まって、「けん玉2」というアプリのページに飛ばされた。
「けん玉2」はさっきの倍、240円の有料アプリだったが、とにかく金を使いたいのと、けん玉がしたいというので、迷うことなくインストールのボタンを押した。

開くと、さっきとは違って、宇宙みたいな、ぷわわわ~という感じのシンセサイザーのBGMが流れて、カチカチのフォントで「けん玉2」と浮かび上がってきた。

けん玉の世界観とは合っていないが、「PLAY」というボタンをタップすると、丸刈りで鼻水の垂れた小坊主が出てきて、丁寧に会釈をしてから、
「本当にけん玉をしたいのですか?」
とフキダシで喋り出した。

「YES」というボタンを押すと、
「わかりました」と小坊主が言って消えた。
何の確認なのかはっきりしないまま、真っ暗な画面にロード中という文字が出て、無限とも思える時間待たされた。

やっとロードが終わると、粗いポリゴンで出来たコピー機と共に「コピー中」という文字が現れ、同じように待たされた。

ペロロロロロロン!!!、というけたたましい音で、いつの間にか落ちていた眠りから戻される。
ギーーーーー!というこれまたけたたましい音とともに、コピー機から一枚の紙が滑り落ちて来て、画面にびたっと貼り付いた。

そこには、督促状みたく「けん玉3をインストールして下さい」と書かれていた。

思わず、あぁ、と声が出て、ぐにゃりと崩れ落ちてしまった。

もうなんでもいい。
1260円の「けん玉3」も即インストールして、開くと、安っぽい太陽の下、棒人間が跳び箱を跳んでいる背景に、「けん玉3」となんかモジャモジャ動いてる文字が浮かび上がる。

「けん玉を遊ぶ」というボタンをタップすると、玉が刺さってない柄の部分が出てきた。
スマホを振ってみると、カツン、カツンと、玉の姿は見えないが、柄にぶつかる音がする。

無我夢中で、スマホを振るが、まったく天辺のトゲにハマらない。
これはこれで、非常に面白い。
寝食を忘れて、打ち込んでいます。


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