対話型アート鑑賞に参加して、自分の輪郭を見つけた
みなさん、美術・芸術、お好きですか?
私は好き……ではあると思うんですけど、苦手です。
いや、苦手でした。
なんかこう、美術や芸術って難しい感じするじゃないですか?
「知ってないと語っちゃダメ」みたいな。
予備知識ないと「あんた何しに来たの?」って言われそうな。
美術・芸術について造詣の浅い(そんな日本語はない)私。
浅瀬。もう、くるぶしくらいはある?あ、ない?足の裏濡れるくらい?ってくらいの浅さ。
そもそも絵が下手。
しかも笑えもしないくらいの微妙な下手さ。
そこ美術の好き嫌い関係ないやん?って思われそうなんですけど、苦い記憶がありまして……。
学生時代に受けた中間だから期末だかの美術のテスト、40点分が普通に設問のテストで60点分が自分の手のデッサンだったんですよ。
右利きなので左手を描くんですけど、ポーズも自由で陰影とかつけて、みたいな感じで。
一応、教科書通りの知識では描くけど、答えのないものが苦手な私は「ポーズ自由」でまず固まり、絵が下手なので形をうまく捉えることもできず、陰影は一応つけたけど……というところで終了。
結果普通のテスト部分のところは満点でしたが、デッサンの方は……。
なにかい?キミは絵が描けないと美術や芸術家を語る資格もないって、そう言うのかい?
って私の中の大泉洋がぼやきまして、それ以来、苦手意識があったんですよね……。
しかし今回参加したワークショップで、美術・芸術に対してのコンプレックスが薄れ、かついろんな気付きがありました!
参加してよかった!
Yu.iさん企画してくれてありがとーーー!!
ほんとは当日すぐにでもnote書きたかったんですが、ワークショップ参加中、子供二人を見てくれてた旦那がFFしたそうにしてたので(今更FFⅪにハマり中の旦那可愛い)そっとパソコンを渡し、日中大暴れ、夜も寝るのが不安定になってきた次女を見つつiPhoneで少しずつ少しずつ書いてたら遅くなりました……。
という家庭内パソコン争奪戦&ジャイアン次女の話はさておき!
企画説明はこちら!
ファシリテーターはワークショップデザイナーの臼井隆志さん。
https://twitter.com/TakashiUSUI?s=21
もともとTwitterもnoteもフォローさせていただいていたので、これは参加するしかない!とワクワクしながら当日を迎えました。
まずは企画者の挨拶や臼井さんの自己紹介、今回の企画の軽い説明などがあったあと、臼井さんから最初の問いがありました。
みなさんにとって、アート鑑賞とはどんな意味を持つ経験ですか?
「職人さんの手作業を見ている感じ」「感覚を泳がせる場所」「人と違っていいと感じることができる場」「自分のなかにないものに触れる時間」「脳みそにダイブ」……チャットに続々書き込まれる回答。
私は「生活を忘れる時間」と書きました。残念ながら私の生活の中に「アート」はなくて、「アート鑑賞」は非日常、という位置づけになってしまいます。
あ、あつ森でね、インチキきつねに売りつけられますけど、そのきつねも全然来ないんですよね、我が島に……(ゲームする人にしかわからない話題)。
そして題材となるアート作品の紹介に入ります。
今回の題材はこちら。
まず1分ほど、各々「作品から何を感じるか」絵画に向き合う時間を取り、その後3人一組で「聞く人」「語る人」「見る人」の役割をぐるぐる回しながら、作品の印象や感じたことを語っていきます。
この絵がパッと映し出された瞬間、私の中に出てきた感情は「不安」でした。
まずぱっと見で性別がわからない。光の加減の表現か、肌の色が左右で違い、顔の真ん中には緑のライン。表情もなんともいえない表情で。バックも大きく三色に塗り分けられ、濃淡もついている。
向かって左側が男性っぽく、右側が女性っぽく見える気もする……眉毛の角度かな?肌の色?
顔に緑塗る人なんて、私は安彦良和さん(『機動戦士ガンダム』のキャラデザ&作画監督、漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の作家さん)しか知らない……!
髪型もなんか……こう……不安定いいぃぃぃ!!!
襟元のビジュー?飾り?もなんで左右で個数違うねん!なんか気持ち悪ぅいぃぃ!!
ここに出てきた「不安」から何を感じたかというと、「べき論」や「普通」に縛られた自分でした。
「男(女)の表情はこんな感じ」
「光の加減とはいえ顔の色がこんなに左右で違うとかありえる?」
「背景の色、左右で違うどころか片方は上下でも違うのはなんで……!?」
基本何にでも理由を求めて、シンメトリーであるとか、一色であるとか、「整ってること」に居心地の良さを感じる。
「こうあることが正しい」「このように振る舞わなくてはならない」という感じで育ち、生きてきた私にとっては「居心地の悪い」絵だな、と思いました。
でも美術鑑賞のワークショップでそんなこと言っていいのかな?と思いながら三人組のブレイクアウトルームへ。
最初に話しだした同じグループの方が「私はこの人、経営者だと思いました」と。
経営者!職業とか考えてもみなかった……。
「顔が似てる経営者の人に会ったことがあって」
なるほど?ほんとに感じたことを言っていい場なのね……?
ということで、私は上記のような「不安」な気持ちを語りました。
そしてもう一人の方は「私は日本人じゃん!って思った。髪型とか」「私でも描けそう(油絵の経験があるそう)」
つ、強い……!!!
そんなこんなしてるうちに全体セッションに戻り、各ブレイクアウトルームでの話の発表に。
他のグループからも「みすず学苑」「大泉洋」などなど、自由な発言が飛び出す飛び出す。
あ、いいんだ?美術で大泉洋出ても?
ぼかぁねぇ、マティスと結婚するために北海道から出てきたんじゃないんだよ!?
とぼやく私の中の大泉洋。
そうそう、この絵は『Portrait of Madame Matisse. The Green Line』、邦題を『緑の筋あるマティス夫人の肖像』とする、画家アンリ・マティスが奥さんを描いた肖像画なのです。
まぁね、絵のサイト見たときに普通に原題書いてあって「あーマティスの絵なのか、奥さんか」って思ったけど「いやでも事前情報で出されなかったからそれもわかんないことにして見ないとだめだよね……」って思って見たよね。
誰もそんなこと言ってないのにね!?
この辺からも「こうしなきゃ」に縛られてる自分が……(落涙)。
各グループの発表の中で、参加者の中に美術・芸術に精通してる方がいて即興解説が入りました。
当時の画家は自由奔放で、マティス夫妻も結婚生活は破綻していて、奥さんは苦労していただろう。サロン文化内での女性の地位は低かった、マティスはだんだん目が見えなくなって……
などなど、ふむふむと聞きつつ、即興でこれだけ解説できるのほんとすごい……!と尊敬の念を抱きつつ。
野生の解説員さんのnoteはこちら
もっと語ってほしかったー!
新しい知識って、やっぱりワクワクするものですね。
そんなこんなで再度のブレイクアウトルーム。
話すテーマはこちら。
あなたはこの作品に対して、どんな解釈をしましたか?
またその解釈は、あなたのどのような経験から生まれたものでしょうか。
我がグループはさっきのブレイクアウトルームタイムの時にある程度その辺まで話してしまっていたために「……何話そっか?」というような雰囲気になりつつも再度スリーピースダイアログへ。
そこで「keiさんが『不安』とおっしゃってたのは、奥さんの不安を感じ取ってたんですね、すごい」と言っていただいて……何それ優しい。
ただひたすら「型にはまった人間だなぁ、これだから私は」とへこみ気味だった自分にとって、この肯定はなんだかすごく嬉しくて。
そして「嫁としての不安が共鳴したのか……?」という解釈もとても面白くて。
「べき論」に凝り固まってしまってることも、「嫁」という立場になっていることも、どちらも「私」を作る要素、輪郭なんだな、と作品と向き合って気付きました。
そしてそこから派生した「作品の見方」が今回の解釈に繋がってるんだな、と改めて認識しました。
10年前に見ていたらきっと違う感想を持ったし、10年後に見たらきっとこの対話式アート鑑賞を思い出しつつ、また違った感想を持つ。
アートはその時の「自分」で向き合って、感じて、そして少ない知識でも感じたことを語っていいのかな、もっと身近に、ハードルを下げて触れ合っていいものなのかなと。
「苦手でした。」って過去形で言っちゃっていいかな、と。
コロナで外にもなかなか出れず、それでなくても子連れで美術館はハードルが高いなぁと思っている私にとって、今回は本当にいい機会でした。
この機会を作ってくれたみなさんに、改めて感謝!
そしてそして、今回オンラインでアート鑑賞したこのサイトが本当にすごい……!
収録作品数もですが、拡大したら!めっちゃ!筆跡がわかる……!
美術館行ってもこんなに近くで見ることなんて不可能ですからね。
すごい時代が来たもんだ……。
最後に、この作品についてググって出てきた解説の一文に突っ込まざるを得なかったので……
マティスは作品について「こんな人に出会ったら私も逃げ出すだろう」と他人事のように話している。
お前の嫁やろがーい!
みんな!奥さんは大事にしてね!(切望)