回転と落下
普段、常識だと思っていたり、当然のように知っている事でも、見方を変えると新たな発見や気づきがあったりします。
特に、全く別の事象だと思っていたことが、実は本質的に同じであるとわかると、何か世の中の真理に近づいたような感じがして、感動したりします。
●月は地球に落ち続けている?
確か小学校だか中学校だかで、国語の教科書に書いてあったのですが、こんな風に表現した人がいたそうです。
普通、
「月は地球の周りを回っている」
と言いますが、「落ち続ける」とはどういう事でしょう。これを理解するには、重力というものの本質をよく分かっている必要があります。
改めて言うまでもありませんが、「落ちる」というのは、
「上」から「下」に向かって物が移動する事
だとほとんどの人は認識していると思います。しかし、別の言い方をすると、
「重力」によって地球に引き付けられる
という事でもあります。
これをもっとわかりやすいように、具体的に
世界各地でボールを手から離して地面に落とす
事を考えます。すると、投げるなどしなければ「真下」に落ちます。
そして当然ですが、これは日本であってもオーストラリアであっても、イギリスでもロシアでも同じです。どこでも「真下」に落ちます。
ここでグーっとカメラをひいて、地球の外からこの現象を見てみましょう。宇宙からその様子を記録すると、地球は丸いので、ボールが地球の中心に向かっているように見えるはずです。
質量がある物体は、他の物体をその中心(重心)に向かわせる力が働くという事がわかります。これを、「中心力」といいます。
それでは、「月が地球に落ち続けている」ということを考えてみます。月と地球の間には、「万有引力の法則」が働いているわけですが、これは
「質量のあるもの同士が、ある力で引き合う」
というものです。
この法則に従うと、「月と地球が引き合う」
ということが言えるのですが、月は地球の約 1/80 の質量なので、ほとんど月が地球に引かれている状況です。
●月の由来
月が地球の衛星になった経緯は、いろいろな説があります。
「地球の一部が千切れて周回軌道に乗った」
とか、
「もともと地球と一緒に生まれたとか」
です。
その中で、
「巨大な隕石が衝突して、その破片が集まって地球の周回軌道に乗った」
というのが、一番有力な説だそうです(下図)。
おそらく地球と月の自転方向や、自転速度と公転速度の関係から考えても、それが一番納得がいきます。
さて、ここで
隕石が衝突して地球から離れていくとき
の事を考えます。ニュートンの「慣性の法則」から、
宇宙のように何も力が働かない空間では、
静止している物体は静止し続け、
ある速度で直線運動をしていた物体はその運動を継続します。
という事は、地球に衝突して運動の方向は変わりますが、その後は何も力が働かなければ、また一定の速度で地球から真っすぐ遠ざかります。
しかし、地球に近い場所では「地球の引力」が働きます。
反対に、もし隕石が衝突して、地球に対して止まってしまったら、
地球の引力によって地球に落ちてくるだけです。
しかし、巨大隕石ですから、地球に衝突しただけでは止まりません。
結局、地球から遠ざかる方向に直線運動をしながら、
地球の引力に引かれる、つまり「落ちる」事になります(下図)。
月に働く力は、地球の引力による「中心力」です。つまり、
月は、周回軌道の接線方向に等速直線運動をしながら、
「地球に落ち続ける」事で、公転を続けている
と言えるわけです。
●回転運動の本質
これは、回転運動をするのに必要な要素で、
「接線方向の速度」と、
「それに直交して中心に向かう向心力」
という事になります。
向心力が0であれば、ただの等速直線運動です。
接線向の速度が0であれば、ただの自由落下になります
等速運動をしながら、向心力が働くことで、回転運動をして「落ち続ける」ということになるわけです。
おそらく、すでに力学の円運動をはじめから知っていれば、月が地球の周りを回る現象について、特に不思議に思わないかもしれません。しかし回り始めた時を考えると、この「落ち続ける」という視点がとても腑に落ちる表現で、回転運動についても、より理解が深まった気がしました。
次回は、太陽系の惑星の運動について考察したいと思います。