積分はタテ×ヨコ
はいどうも。クイーンの「ボヘミアン・ラプソティ」の掛け合いの部分がどうしても、
「梅宮ー梅宮~、ガリレオーガリレオ~」
に聞こえてしまう白井ですって一言多い上にとっても分かりにくいネタでスマソ。
というわけで、今回からは「積分」のお話です。
積分と言うのは考えてみれば不思議な操作でして、教科書には
「∫f ( x ) dx はグラフと x 軸に挟まれた部分の面積を表す」
と書いてあると思うんですが、一方では「速度」を積分すれば「距離」になるわけで、
「変化率(微分)からもとのグラフ(原始関数)を求める方法」
とも言えます。この、「変化率」と「面積」には一見何ら関係がないように思われて、分けのわからないまま脱落してしまう人が大半なんじゃないでしょうか。
もともと微分と積分は別々のもので、積分は「面積を測る方法」として発達してきました。ということで、まずは面積を測る方法としての積分を考えていく事にしましょう。
小学校で習う
「長方形の面積は、縦×横」
というのは誰でも知っている事だと思います。タイルなんかを授業で使った人も居ると思います。
積分も、計算こそ複雑ですが、
要するに「縦×横」以上の物ではない
です。ただそこに、「極限」と言うこれまた面倒くさい概念が入りこんでしまっているので、その単純な原理を見えにくくしているのです。
●昔に戻ろう
さて、ずーっと昔のことを考えてみて下さい。(まだ人間の始まりくらいの時。)そのころはどうやって面積を測っていたでしょうか。(別に「測地学の歴史」をやるつもりはありませんから、安心してください。)
もちろんその頃は「ものさし」なんでありません。じゃあどうしたのかと言えば、今でも似たような事はあって、例えば
会場の広さを言うのに、「定員」で表したり
します。100人入る会場というと小さいですよね。1000人でまあまあ大きい、一万人入るって言ったらかなり大きい感じですね。
そういうわけで、昔は
物がどれくらい入るのか
で面積を表したりした事は予想できます。やがて、小学校でやったみたいに、
正方形のタイルがどれだけ入るか
で測る事を考えたでしょう。そのとき、
「横に並ぶタイルの個数と縦に並ぶタイルの個数を掛け合わせると、全部のタイルの個数になる!」
って誰かが発見したんでしょうね。
さて、当然端っこの方はタイルがはみ出たり足らなかったりする事があったでしょう。その時はどうしていたでしょう。多分、
「9個とちょっと」とか、「10個にちょっと足らない」
という言い方をしたでしょうね。または、
「9個は入ったけど10個は入らなかった」
なんて言う人もいたかもしれません。あるいは、もう一回り小さいタイルをわざわざ用意した人もいたかも知れませんね。
●「とびとび」から「連続」へ
もしこの状況に「ものさし」があったならば、
縦×横の法則(←勝手に命名)
を知っているので、
「タイルの個数の代わりにものさしで測ろう」
と考えるでしょう。つまり、ものさしにタイルの1辺と同じ長さの目盛りを振っておけば、タイルを並べなくても、ものさしを当ててその目盛りを読めば良いだけであるし、もっと言えば、
わざわざ小さいタイルを用意しなくても、もっと目盛りを細かくすれば良い
だけの話です。(下図)
そして、さらにはみ出た部分を測りたければ、
「知りたいだけ」細かい目盛り
を、ものさしにつけていけばよいのです。さあここかポイントです。
今までは
「タイル何個分、あるいは小さいタイル何個分」
というやり方で測っていました。これは、
1個、2個、・・・、と「とびとび」
に測っていく測り方でした。ちなみに、こういう量を「離散量」と言ったりします。そして、ものさしの場合は、(現実的には細かさには限りがあるが)自分の知りたいだけの細かい目盛りをつけて測っていきます。
つまり、
タイルの大きさ、個数に関係なく連続的
な大きさで(例えば、"1"の次は"2"ではなく"1.1"でも良く、さらにその次は"1.11"でもよい)測れるようになったのです。これを「連続量」と言います。(タイルでこれをやろうと思ったら大変!)
仮に、
限りなく細かく目盛りを分割することが出来れば、いくらでも正確に測ることが出来る
でしょう。
この
離散量を細かくして連続量に近付ける
というのが「積分で使われる極限」の意味なのであります。これをさらに応用して、
曲がりのあるものの面積を、長方形で近似
して求めようというのが、教科書に書いてあるグラフにたくさんの長方形が書いてある絵の意味です。
あるいはこう考えても良いかもしれません。面積を知りたいものの形を方眼紙に画きます。そして、その面積を
(図形を含むマス眼)×(マス眼の大きさ)
によって測るとします。このとき、
方眼紙の目盛りをどんどん細かく分割すれば、やがてその図形の面積に近づいてゆくでしょう。(下図)
要するに、我々は
どう頑張っても「縦×横」でしか面積が計算できない
わけで、どうやってそこに持っていくか、いろいろ知恵を絞ったわけです。これが「区分求積法」であり、高校で習う「リーマン積分」、あるいは「ジョルダン測度」と呼ばれているものの考え方です。
(さらにその後、「ルベーグ」という人が、とんでもない発想でこの「面積の求め方」を考えることになり、これは「ルベーグ測度」と呼ばれています。詳しい話は、
志賀浩二先生の「ルベーグ積分30講」(朝倉書店)
を読んでみてください。数学の名著です。)
さ~て、来週のサザエさんの前に、次回はこの「面積」と「変化率からもとのグラフを求める事」がどう繋がってくるかについてさらりとくるりと考えていきます。(ぽろりもあ・・・ねーよ。)