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2023年 映画ベスト10

例年に比べてそんなに寒くないからまだ年末じゃないかと思ってたら、もう大晦日。というか今年休み短くない? 駆け込みで発表していくベスト10。今年のベスト、今年のうちに!


11位〜20位

20. 人生は美しい
19. 夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく
18. あつい胸さわぎ
17. スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
16. 北極百貨店のコンシェルジュさん
15. 窓ぎわのトットちゃん
14. MY (K)NIGHT
13. 恋のいばら
12. 交換ウソ日記
11. ほつれる

今年の10位のシード権争いは熾烈だった。17位くらいからもはや実質10位タイみたいなもんです。

10.『市子』

あ、この杉咲花はぜったい何か抱えてるやつ…。すぐにわかる漆黒の瞳。川辺市子(杉咲花)は、恋人の長谷川くん(若葉竜也)からプロポーズを受けた翌日に突然失踪する。そんな途⽅に暮れてる⻑⾕川くんの元に市⼦を捜している刑事(宇野祥平)が現れて…という既にやばさしかない導入。私たちは若葉竜也とともに、昔の友人や同級生の話を聞いて、市子と過去を紐解こうとするんだけど、そうして登場してくるのが、中田青渚に石川瑠華に中村ゆり? 倉悠貴に渡辺大知? …って、なんだこの生きづらさミニシアター映画オールスターみたいな最高の布陣はッ! しかし兎にも角にも、その中央で佇んで生きた圧巻の杉咲花がやばいです。彼女の存在こそが物語。だけど本当の彼女を誰も知らない。物語の中心にぽっかりと空いた穴。それは空洞、でかい空洞…。彼女と出会った人物それぞれの証言から表層的に"市子"を知っていき、そのあとで明かされる衝撃の真実は…。というのは、予想外か否かという意味では(まあストーリー的にそりゃそうなるかという意味で)驚きってワケではないんだけど、そうなってしまうか…という絶望がありますね……。きっと、そうなってしまいそうだったから僕は祈るように観ていたけど、果たしてどう祈ればいいかわからなかったし、何が幸せになるのかわからなかった。身勝手とか逃げてばかりとか言うのは簡単かもしれない。でも、そうすればよかったとか、それはしたらダメとか、そんな次元はとうに過ぎてしまったんだよなあ。どこかで何かが変えられたのではとも、では果たして何が変えられるのだろうかとも考えてしまう。生き抜くための選択と、その選択をせざるを得なかった環境と。だけど、重ねられた嘘のなかに、一瞬だとしても幸せな時間があったのは本当で、その時の時間があたたかくて杉咲花さんがはちゃめちゃに可愛いから余計に辛いです。善悪の境界線が曖昧になった厳しい現実で、閉ざされた空間で、抜け出せない茹だるような暑さに汗ばんでいた市子。最後に歩き出したその道に照りつけるその日差しが、いつか未来を照らすように。そんな祈りが込められたような夏だった。つよい……

今泉監督作品感(金麦)


9.『フェイブルマンズ』

まるで僕らはフェイブルマンズ。スティーヴン・スピルバーグが、“映画監督”になる自分の原体験を描いた自伝的映画は、流石の巨匠力がやばいし、登場した時点で「この日々は絶対長く続かない」と予感させる俳優No.1のミシェル・ウィリアムズ様は、今作も危うさ擦り切れさ束の間の幸せ感が満開だった。そう、これは巨匠力と不幸力の両輪で突き進む物語(違います) 。ただ、スピルバーグの自伝なのにいわゆるサクセスストーリーではなく、芸術は麻薬、創作は業。世界はままならなくて、出来事には全て意味がある。みたいな世界観。これが僕の成功物語!みたいな空気ゼロでした。いやいやスピルバーグもっと自分のこと自慢していいんやで! しかしこれも数多くのひとを変えてきた巨匠ゆえの境地っぽくもあり、「映画は誰かの人生を変える」ことに対して、夢だけでなく呪いや暴力性に自覚的なのでしょう。人生という意味では、子供が大人になるまでには、少なからず家族に影響を受けずには、及ぼさないわけにはいられなくて…。そしてカメラは好意も悪意も全部収めてしまうんですわね。映ったものこそが真実なのか、それは意図を持って映された虚構なのか。濃厚で目が離せない映画愛憎と、作品の奥底に滲むどころかダダ漏れな凄み。さすがの巨匠力がやべぇです(2度目)あと、序盤に主人公の少年がいきなりクオリティの高い映画を撮りまくっていて、そんなこと出来る奴なんているわけないだろ…となったところで、でもまあスピルバーグだしあり得るかと思えるスピルバーグの説得力がすごい!

絶対長くは続かない幸せな日々


8.『赤い糸 輪廻のひみつ』

超面白ェ〜!台湾縁結び転生霊界恋愛ファンタジー(なんだそりゃ)は、話やノリに笑って、バチっと決まった絵に心躍って、そしてめちゃめちゃ泣いた。途中の展開にまんまと騙されたし、終盤のあれはズルいだろ! そして何よりヒロインがどっちも可愛くて最高。上映前の挨拶動画からしてビビアン・ソンがとんでも綺麗でビビるんだけど、今回に限って言えば、俺はワン・ジン派かもしれん。ピンクのワンレン気味なボブ。俺はショートと奇抜な髪色に弱い男…。ポスターのザ海外映画の日本版みたいなテイストも、今となっては愛おしいです。「あの頃、君を追いかけた」の監督最新作は、日本愛を随所に感じながら、最近の韓国映画「神と共に」を思い出すスケール感どでかいスペクタルでラブ。落雷で命を落とした主人公が、"月老"(ユエラオ)として、現世でひとびとの縁結び業務を遂行するなかで、失われた記憶とかつての約束を取り戻すストーリー。そしてヒロインがふたりということは…。そう、みんな大好きトライアングル、三角関係であります! 三角形の恋は気まぐれー! だけど、いろんな要素を盛り込みながらも物語のバランスが崩れない職人芸が光ります。ゲームセンターもボーリングも一連の流れが最高。一途な愛を貫くにしても、新たな日々を歩むにしても、どっちを選んでも楽しいし切ない。そんな三角関係が俺たちは大好きなんだよな。台湾俳優陣のヒエラルキーを知らないおかげで、普通にどっちと結ばれるのかとか、このひとは悲劇側なのかとか、今後の展開が読めないという面白さもあり、最後まで本…ッ当に楽しかった。きっと誰もがどこかで誰かを救っていて、僕は君の想いを覚えてる。それぞれの君を追いかけた者たちの駆けた想いは、紛うことなき純愛だったよ…。みんな幸せになれ! そしてもっと公開館数増えてくれ!

サンキュー、犬!


7.『イニシェリン島の精霊』

行き場のない島を舞台に、拒絶するおじさん、縋るおじさん。絶えず包み込む閉塞感、不意に訪れる死への誘惑。そして映画を彩るコリン・ファレルの困り眉。見事な傾斜の眉毛を転がり落ちるように、憎悪はエスカレートしていくし、物語としてもギアがあがっていく。こんなスリリングで胸騒ぎのする退屈な話はなかなかないよ。アイルランドのイニシェリン島での繰り広げられる、外から見てると「いや知らんがな」と言いたくなるようなおじさんvsおじさんの仲違い。最初は突然の無視くらいから始まったのに、ほんとにPG12か? と言いたくなるくらい結構血で血を洗う戦いに…。そして争いが長期化がすると、もはや何に揉めてるかわからなくなるままに話が通じなくなって後に引けなくなる感じがあるけど、それは同じ時期に勃発しているアイルランド本土で描かれる内戦へのメタファーにも感じさせるんだよな…。しかしこのおじさん仲違い対戦も、未来のおじさん(すでにおじさんだろというツッコミはさておき)の私としても、全然楽観的に見れる内容ではないというか、老いるということに関して考えざるを得なくなってしまいましたね…。今いる友人たちと、今と同じように過ごせるかはわからないんだよなァ…。人生とは、悪意とは、諍いとは。知性の自覚と隔たりによって炙り出されるあれやこれ。不謹慎スレスレのジョークに覆い隠された異常性と、それでもかつては仲が良かった一瞬の仕草の強度がすごい。しかし、やっぱりこのおじさん達どちらも結構めんどくせぇし、バリー・コーガンが登場したときの、こいつ絶対めんどくせぇことしそう感は異常。

ぜったいめんどくせぇ


6.『レッドロケット』

(あらすじ)「ポルノ界のアカデミー賞を5回逃した」主人公マイキーは、無一文で故郷テキサスへ舞い戻り、別居中の妻レクシーと義母リルに嫌がられながら彼女たちの家に転がり込んだが仕事はなくて、昔の人脈でマリファナを売りながらドーナツ店で働く17歳の少女に惚れ込んで再起を夢見る……ってクズすぎるだろ! だけど、なぜだかそんなマイキーを憎めず応援してしまうのが、この映画の魅力でありミステリー。いや絶対に身近にいたら迷惑極まりないはずなんだけどな! よく言えば人間味溢れるマイキーの陽気な生命力に照らされる明るい映画です。夢は大きく、人生はスウィート!…いやいやいや。ポップなテキサスを包む光と影がありつつも、カラっとした画面からは悲壮感は微塵も感じさせない。そんな彼の生き様を、賞賛も批判もせずに、ただフラットに生活を描くショーン・ベイカー監督。小気味良いテンポ、目を奪われるようなショット。楽しく笑える映画であることは否定できず、ただ同時に、それ笑っていいのだろうか…と現実に問われ続けるのだ。ひとさじのフィクションの魔法は、優しさであり残酷な現在ゆえでもある。ただ、マジカルエンドと言われた前作『フロリダ・プロジェクト』と違うのは、いわゆる"良識"の不在で、マイキーと物語が閉塞感のなかをあれよあれよと彷徨い、全身全霊…いや全身全裸で突き進むのを誰も止められないのである。誰か止めて! 求むウィレム・デフォー! まあとはいえ、ドーナツ屋さんの17歳ことスザンナ・サン様がめちゃくちゃに可愛いから、 これは仕方ないですね(?) シアーシャ・ローナンではピュアすぎるしエル・ファニングでは狂わせすぎる。ちょっと歪ませるくらいのあどけなさと妖艶さの感じが絶妙でした!

なんてシーンをポスターにしてるのだ


5.『まなみ100%』

「バカ」って言葉知ってるか? それは俺たちのことだ…。2021年『花束みたいな恋をした』、2022年『ちょった思い出しただけ』、そして今年は『まなみ100%』だ。つらい! 高校時代からずっと好きだったまなみちゃんの結婚式の当日に、出会ってからの10年間を振り返る。10年はあっという間とはいえない。だけど、気づけば10年なんて経っていた。いちばん大好きなひとに出会って、恋と青春が終わるまでの10年間。平凡だけど特別で、斜に構えてるけど真っ直ぐな想い。後になってからじゃもう遅い。言えない気持ちも言わなかった決断もわかるし、同じくらいに言えなかった後悔もめちゃめちゃわかる。きっとみんながこれ僕の話じゃん!って思うし、彼らの青春が羨ましくも思えるんだ。まなみちゃん役の中村守里さんの不思議で掴めない本命ヒロイン感も、菊地姫奈さんに新谷姫加さんに宮﨑優さんの系統が似てる歴代の女たちの可愛くて寄り道したくなる感じも絶妙で、伊藤万理華さんの"美しく思い出の中で眩しく生きる理想の先輩"そのもの感も大好きだったよ。ふらふら感もグダグダ感も、モラトリアムの浪費と言われたらそれはそうなんだけど、そんな主人公に対して向けた気持ちは、そのまま過去の自分へ返ってくるので辛いですね!  きっとみんなそれぞれの"まなみちゃん"がいると思うんですけど、そんなひとに会いたくなるような、会いたくないような、だけど元気だといいなと思える作品でしたね。そして、そんなことをきっと相手は微塵も考えてすらない事実を残酷にも突きつける作品でもあります。ひぇ! つら! ボロボロ! でもだいすき。あと、オラキオの役、オラキオが適任すぎる。

体操部顧問オラキオ


4.『aftersun/アフターサン』

夏休みにバカンスする父娘の映画って聞いてたから、『SOMEWHERE』みたいな映画だと思ってたんだ。思ってたんだよ……。たぶん事前情報いれないほうが、より主人公の境遇を体感できるはず。それは真正面から悲しみを浴びることになるけれど……。静かに心を抉るA24作品。思春期の娘、束の間のバカンス。父親とふたりきりで過ごした夏休みを、父と同じ年齢になった彼女は当時撮影したビデオテープの映像と共に思い出す。子供と大人、想像と現実、記憶と記録は溶け合って、思い出は曖昧に変質する。これは時間を巡り、その外側に想いを馳せる旅。夏の日差し、意味ありげな構図。だけど、いつだってそこに意味を持たせたがるのは、僕ら鑑賞者のほうなんだ。日を浴びたあとに皮膚に痛みが帯びるように、太陽の様な眩さのあとに闇色の夜が訪れる。子供の頃は気づかなかった父の姿。でも、悲しみを纏う背中はそのフィルムには映らないし、答え合わせも事実かはわからない。でもあの日、たしかに注がれた愛だけは真実だったと思いたくなる。それは願いであって祈りかもしれない。本当のことはわからない。視線や描き方や違和感も、見落としてしまいそうな、手からこぼれてしまいそうな、記憶の欠片を集めるように見届けた先。胸にひろがる悲しみも、今も忘れない眩しさも、波のように寄せては返して、いつか消えていくのかな、いつか変わってしまうのかな。そして今覚えていることさえ、もう変わったあとの記憶なのだろうか。この切なすぎるホームビデオを通じて思い出させれる、自分が過ごした夏の、存在しない記憶はたしかにあった。give it back……。

SOMEWHEREじゃん………


3.『グリッドマン ユニバース』

宝多六花ーーーーーーッ! うおおおおおお! 感想の語尾をぜんぶ「!」にしたくなるような熱量。期待値なんて爆風で蹴散らして遥か超えてきた。クライマックスからずっと泣いてた。欲しいのはこれだろ? と、ニーズに全部答える圧倒的ファンサービス。「見れたらいいな」がほぼ見れたのはすごいことだよ。そしてただひとり、見れたらいいけど安易に見れたらあの最終回的に困ると思ってたアカネが、ほんと最適解な登場をして泣きました。まあTVシリーズからの積み重ねゆえの高揚だしファンムービーとは思うけど、本作で結構ポイントが高いのは、創作を創作のまま愛していいと提示してくれたことかもしれない。メタバースでフィクションを描いた作品結局「だけど現実を生きろよ」的なメッセージになりがちじゃないですかぁ? 今作はフィクションを楽しむ、フィクション愛するということを全肯定する感じがもう最高だった。もちろん特撮モノとして、やっぱり合体や必殺技っていうのは否応なしにテンションあがるし、今回も最高のタイミングな挿入歌。そして展開に次ぐ展開、クライマックスに次ぐクライマックス。蓬ーーーーーッ! にめちゃくちゃ高まってやばい。そして同じくらいにやっぱり青春模様の描き方が瑞々しくて、瑞々しいというのは水分があるので、当然湿度が高いシーンもあったりするのもたまらないですね。序盤で裕太が六花に告白するという宣言をしてるから、こいついつ告白するんだ? いやいつするんだ? ほんとにするんか? というのが常に頭の片隅によぎるわけで、その状態でちょっと試すように振る舞って裕太の言葉を待つ六花を見てるとき、愛の湿り気〜〜と思ってやばかったです。愛が重そうな宝多六花、好きです。恋愛模様だけでなく、アカネとアンチくんのシーンは劇的で絵が綺麗すぎてやばいし、ガウマ蓬の親子みたいなだけど他人だから言葉濁すみたいなやつも、変わらずマスク&ターボなはっす内海も、もうありとあらゆる関係性が尊すぎるよな。その眩しさ青さ真っ直ぐさに、小っ恥ずかしくてニヤニヤしてしんみりしてやっぱり笑って、彼ら彼女たちの行動を見守るおじさんとなってました。はあーーーー。文化祭の準備したいな! 好きな子と夜道を歩いたりしたいな!  世界が終わるって言われてもさ、まだまだやりたいことだってあるし、まだまだ一緒にいたいひとがいる。時空を超えた大集結も、超絶怒涛の合体バトルも混沌だけど、あの日抱いた感情もわけわかんなくて混沌でユニバースなんだ。重ねた日々、束の間のお祭り、忘れられない青春。大好きだよ、宝多六花!!!

愛が重い宝多六花のキャラソン(定期)


2.『少女は卒業しない』

主演:河合優実×監督:中川駿×原作:朝井リョウ。やっぱり普通の青春モノのわけなかった(知ってた)。めちゃめちゃ泣いた。自分の卒業式じゃないのに泣いた。こんな青春は過ごせなかったはずなのに、こんな時間を過ごしてきた気さえする。廃校が決まり、校舎の取り壊しを目前に控えたとある地方高校の “最後の卒業式”までの2日間。その場所で、それぞれの恋にお別れを告げる少女たち。本作はあんまり廃校を仰々しくは扱わないけど、過ごしてきた場所が消滅するというのは、結構帰ってくる場所がなくなるという実感が薄らと胸に残るんですよね(経験者)。それぞれの恋の顛末を並行で描くんだけど、どの話もどの演者もよかったなァ…。個人的には、エピソードとしては軽音部部長の話が好きだし、図書室にいる丸眼鏡+カーディガンの好青年風な藤原季節は絶対真っ黒だと思った。先入観トリックじゃねえか、無茶苦茶いい先生だったよぉ…。光の藤原季節先生みたいになんか良いこと言おうとして、「この先も素敵なひとや出来事にきっとたくさん出会うよ」と言ってあげたい反面、同時に高校以上に楽しかったことってあったけ…とも思ってしまう。「別れは新たな始まり」とはよく言うけれど、始まるまえに今の世界は終わっちゃう。卒業したら終わっちゃうんだ。だけど、複雑で純粋な想いを仕舞うには、今というこの瞬間も、学校という箱も狭すぎるから。別れへ旅立つためのそれぞれの答辞。最後の学校、最後の強がり。ずっと隣で寄り添い同じ空気を共に過ごしたかのような、そして、その視線を受けるのは学校で過ごした君たちだけなんだと線を引くような、少女たちの美しい横顔に泣いたよ…。卒業おめでとう! とはいえ最終的に佐藤緋美くんに全部持ってかれます。なんだあれほんとさぁ、部長の言う通りじゃねえかよ……

超怪しい藤原季節


1.『アイスクリームフィーバー』

大好きな映画になった。そして偏愛枠でもある。渋谷の街を空気を詰め込んで、甘くてポップで可愛くゴチャ混ぜにした夏映画。夏映画なのに、暑さを忘れさせる温度感。それは暑い日にアイスを食べているときのあの感じ。あついなかに冷たさがあって、冷たいなかにもあつさがある。そんな曖昧な関係や世界を彩る衣装も可愛ければ、出てくるひとみんなが超可愛い! そして画角も色合いも音楽も、全てのシーンがお洒落で眩しい。だけど、可愛いだけでは、眩いだけではないのが人生で、それぞれの悩みや行き詰まりは交錯して共鳴するのだ。川上未映子の短編小説「アイスクリーム熱」を原案に、世代の異なる4人の女性の思いが交錯する愛の物語。監督は、ドラマやCM制作を手掛けたアートディレクター千原徹也ということで、映像面にエッジが効いてるというか、たしかにザ・お洒落映画と言える部分はある。ただ、本編に流れる空気と、ひとの持つ想いの強さに完全にやられてしまった。先輩と後輩、姉と妹、叔母と姪、君と私。どの人物も、どの組み合わせも、そこにしかない温度と輝きで最高だったし、僕はこんなに松本まりか様を好きになるとは思わなかった。時系列をトリッキーに飛び越えて、エモに振り切ったかと思えば冷静に着地したりして。振り回されるのも、わからないのも悪くないね。正直、本作の感想もうまく言葉にできないけれど、言葉にできないというのは、自分の中にしかないってことなんだ。そして自分の中にしかないものは、忘れられなくてもいいし、忘れようとしてもいい。いつか溶けて消えてしまうこと、消えたとしても心に残ること。その出会いは、その感情は、夏の日の夕立みたいに理不尽に一瞬で過ぎても、濡れた洋服は乾くし、また夏はやってくる。想いも出会いも巡る。わたしたちの人生は、やさしくつながっているんだ。私は私で、私はここにいる。その踏み出した一歩と、最高のタイミングで訪れた吉澤嘉代子『氷菓子』に情緒が崩壊した。日々は続いて、熱を紡いで、想いを永遠にして…。登場人物みんな大好きだし、みんな幸せになってほしいけど、そんなこと僕なんかに思われなくてもきっと自分で幸せになるから、僕らはアイス食べていような!🍨

今年いちばん大好きな曲


なんとか今年中に間に合った〜〜〜! 来年もなにとぞ!

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