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【美術展 感想】すべてのものとダンスを踊って ー共感のエコロジー

金沢21世紀美術館にて、2024/11/02〜2025/03/16まで開催されている特別展「すべてのものとダンスを踊って ー共感のエコロジー」。

金沢21世紀美術館の開館20周年記念として開催されている本展。この美術館の年間テーマである「共感のエコロジー」に基づいて、制作された作品を展示する展示となっています。

この美術展の特徴は様々な国の作品が展示されていること。

アフリカやアマゾン、イヌイットの作家など国際色感じられる美術展となっています。


まずこの美術展を鑑賞していく中で、「自然との向き合い方」というテーマは真っ先に考えさせられる内容だと思います。

「ダンボール」、「海」、「水」、「森」、「ゴミ」といった単語が至る所に出てくるこの場では、目を逸らしてはいけない現実がそこにはあって、真正面から彼らと向き合える、向き合わされる場なのかもしれません。

自然のことを考える作品として、2人組のデザインユニット「フォルマファンタズマ」が手がける《カンビオ》という映像作品が印象に残っています。

人間と自然との関わり方を、23分という長い映像作品で、歴史を辿りながら描いている作品。

人類の繁栄とそれによる侵略の歴史と言っても過言ではないかもしれません。

現代に生きる人間として歴史を見ていると、人類というものは気づくのが本当に遅いと思うのです。
人間に対して林業が追いついていないだとか、テレビで見かけるような絶滅危惧種だとか。

でもわかってる。わかってるんです。
今豊かな暮らしをして、そこから振り返って見える景色だからこそこんな事が言えてしまうなんてことも。

子供の頃は夢中でいて大人になってから自分を省みるのと同じように、僕らは人類という大きな道程の先端を生きている。

いつから人間は、「世界を守らないと」って思うようになったんだろう。
僕らも自然の1部であったはずなのに。いつの間にか自然の中のひとつではなくて、人間が自然を超えてしまった。

「マインクラフト」というゲームを知っているでしょうか。
いつもやる度に、「いくらこのゲームの世界が無限のように思えても資源は有限だもんな。上手いことやり繰りしないとな。」って考えてしまう。

地球に対してもこれと同じ気持ちを抱いてるのかもしれない。すごく傲慢な気がしてきて、でも地球はそうまでしないと守れないんだなって悲しくなる瞬間があって。

人類が向き合うのは責任でもあるのかもしれません。


自然との問題はより身近な所にも落ちています。
オトボン・ンガンカの作品では巨大なタペストリーに描かれた「海」について触れられます。

上から《見出されたー薄明》《見出されたー深夜》《見出されたー深淵》という3作品。

パッと見ただけでも海洋プラスチック問題が頭に浮かびます。

水族館に行くと亡くなったクジラのお腹から大量のプラスチックごみが出てきたといったパネルをよく見かけます。

それだけ海洋生物に多大な影響を与えている問題なのでしょう。

その中でこの作品は、網やゴミ、そして魚という「人間社会と海」という関係性を表しながら、その世界を幻想的に表しています。

今後この世界がどのようなバランスを保ちながら変化していくのか、数年後に同じ視点での作品を観てみたいと、そんな気持ちにさせられます。


最初にも触れたようにこの美術展は様々な国の作家が参加しています。

その中からは「自然に近い文化」についても。

僕はアフリカやアマゾンに対して、僕らよりも自然に近い場所で生きていると思っています。

日本という場所は本当に進んでいて、どこに行ってもスーパー等の人工的な生活に触れることが出来ます。

きっとそういう所から、自然の中でのみ生きているという感覚はもう得られないのでしょう。

それに対してアマゾン等(特に先住民と呼ばれる人達)に対しては、森の中で外界とは違う空間で生きていると、偏見込みでそのような思い込みがあるのだと思います。

彼らの作品は、とてもカラフルで、どこか神話性を感じさせながら、素直で彼らの見たまんまを表しているんだろうなと感じます。

僕らの知らない世界。人工物に囲まれた世界では見えない景色。

自然と繋がっているようで宇宙と繋がっているようで、僕はこの作品たちと上手くダンスを踊れていたのか不安で仕方ありません。

普段から美術展に訪れて、過去の人たちが描いた作品を見ることで知らない事を少しずつ埋めていますが、遠い世界を知れるのは時代の縦軸だけでなく世界の横の距離でもあると感じました。


他にも、樹齢約1000年の欅の木から生体信号を受信し、モニター上で光の変化として表すインスタレーションや、蜘蛛の映像に合わせて振動を感じられる映像作品もあって、デジタルというツールを通した作品も見受けられました。

今回の主題にも入っている「踊る」という行為は観るだけでは出来ません。他の感覚も通して、感じて、そして手を取って踊って欲しいという思いを感じます。

この美術展はここまで振り返ってみても「自然と社会課題」についての内容が多かったです。

持続可能な世界を目指していく中で、こうしたSDGsという課題に興味を持ってもらうということが「踊る」第1歩なんでしょう。

作品ひとつひとつの手を取って、普段気にしていないことを考える。美術館という場所はそういう場であって欲しいとも思います。

何があなたに刺さるかわからない。世界には色んな問題が、色んな感性が、色んな景色があります。

世界に溢れてる事柄の手も取ってみようと思えるような、そんな足がかりとなるような美術展でまず踊ってみてはいかがでしょう。

はい、わたしでよろしければ。

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