あそびの生まれる場所は、相手を"お客様"にしない場所
西川正さんの著書『あそびの生まれる場所─「お客様」時代の公共マネジメント』の読書会をしました。11月19日(日)に、勤務先でもある福山市まちづくりサポートセンター主催のイベント「みんなのつれのうて文化祭」があり、そこで西川さんの講演会を予定していることもあり、事前に読んでおこうと企画したものです。
個人的には、なんとなく大事だろうなと思っていたこと、やっていたことを裏付けてくださるような内容でした。まちづくりや地域づくりの活動をしている方やしてみようという方には、ヒントになることがたくさんありますし、きっと肩の力が抜けると思うので、ぜひ読んでもらいたいなと思います(いや、逆に見落としていたことに気が付いて、力が入るかも?笑)。特に、市民活動のようなテーマ型の活動をしている人はもちろん、自治会などの地縁型の活動においても参考になることがあるのではないかなと感じています。
西川さんは、市民参画型のまちづくりを支援するNPO法人ハンズオン埼玉の理事であり、現在は岡山県真庭市の図書館で館長も務められています。元々はお子さんの保育所や学童の保護者会で活動してきた父親としての経験があり、埼玉県内で36ヶ所の学童保育所を運営しているNPO法人にも理事として関わっているそう。
本書は、そんな西川さんがこれまでの活動の中で抱いた問題意識である、「気持ちの〈あそび〉」(意図してつくったゆるみ)がなくなっている現状について、その背景にある「お客様意識」や「過剰なサービス社会」について丁寧に紐解き、西川さん自身の実践の事例や、全国各地の〈あそび〉がある場所の実例を紹介するものです。
読書会の内容を踏まえて整理してみるので、講演会までに本が読めそうにないという方でも、西川さんのお話を聞いてみたい、本を読んでみたい、と思っていただければいいなと思います。
読書会では、「みんなが主体的に参加したくなる活動とは?」というテーマを掲げ、それに関連して気になったキーワードを挙げてもらいました。
〈あそび〉とは、時間・空間・仲間。ひまな時間、空間的なゆとり、ゆるいつながりとも言い換えられるかもしれませんが、まちサポでもこの〈あそび〉を持たせておきたいなと常々思っています。そうでないと、新しいことを考えられないし、思いつかなくなるから。
一緒に参加してくださった方からは、「ゆるくやることが大事ってあなたに5年くらい前に言われて、ピンと来てなかったけど、やっとわかったかも」とか「いつもゆるいスタンスだなって思ってたけど、わざとだったんだね!」と言われたり。別の方にも以前「人を巻き込むのがうまいなって思ってたけど意図してやってるの?」と言われたことも。意図してるって言えたらかっこいいし憧れるけど、本来の姿が大半のような気がします。笑
西川さんの本には、社会のなにもかもがサービスになってしまったことで、お客様体質を生み、それが「何かあったらどうするの?」という言葉やクレームにつながり、現場での〈あそび〉の無さにつながっている、と書かれています。「何かあったらどうするの?」と言われたことも、逆に言ったことも、あるいは「なんでこんなこともさせえてもらえないんだろう」「もっと柔軟に対応してくれたらいいのに」と思ったことも、誰しも経験があるのではないでしょうか。
社会全体でそれを一気に変えることはできないかもしれないけど、〈あそび〉をなるべく持たせられるように働きかけることで、少しずつオセロがひっくり返るように、自分の周りの小さな社会もまた少しずつ〈あそび〉を持った世界に変えていけるのかもしれない、と思いました。
そのために私たちは何ができるだろう。それが、「周りの人をお客さんにしないこと」であり「相手の主体性を引き出すこと」だと理解しました。これはクルミドコーヒ―の店主・影山知明さんが著書『ゆっくり、いそげ』の中で言っていた「give(贈与的な)の人格」「take(消費的な)の人格」の話にも似ていて、一人の人間の中にはその両方の人格があって、どちらを引き出すかによって、その場のありようが大きく変わるという話でした。
最後には、多くの人が集まる場所を魅力的にするための6つのポイントがまとめられていて、これらは「関係人口」をつくる時のコツにも思えます。関係人口は、地方と都市を行き来して地域の力になってくれる、観光でも移住でもない人のことを指しますが、担い手不足に悩む自治会などの地域活動にも置き換えて考えることができるのではないでしょうか。
私自身も、自分が携わっている仕事や活動を振り返りながら、「もっとこれを取り入れてみよう」とか「上手くいっていないのはこの部分ができてなかったからかも」などと改めて意識するようになりました。
ぜひみなさんとも、西川さんのお話を一緒に聞いて、それぞれの活動の中でできることを考えていきたいです。
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