見出し画像

読書録『自転しながら公転する』

山本文緒さんのエッセイが気になって、ついで買い。思ってたよりだいぶ、分厚い!

最初はベトナムで結婚式を挙げるところから話がスタートする。あれ、いきなりクライマックス…?

と思ったら、急に茨城県に舞台が移る。主人公の与野都は30代前半の女性で、アウトレットモールのアパレル店で働いている。東京で店長まで勤めたが、母親の更年期障害がひどく、サポートのために実家に帰ってきて、父と三人で暮らしている。
ある台風の日に、同じモール内の回転寿司屋で働く貫一と出会い、ほどなくして付き合いはじめる二人。このまま付き合い続けて結婚するのか、結婚せずに別れるのか、自分も周りも「この先どうするの?」と思っている。仕事やお金、住まいなど、いろんな要素を考えて、自分で決めなくちゃいけないけど、自分がどうしたいのかもわからない都が最後に選ぶ道とは…?というお話。

物語は都(娘)の視点と桃枝(母)の視点で交互に描かれていく。

都にも桃枝にも、大小さまざまな困難が降りかかってくる。非正規雇用、学歴、職場の人間関係、セクハラ、ジェンダーロール(社会的に期待される性ごとの役割)、老後資金…。世代による価値観の違いから生まれるものもあるし、身近にもまだまだ蔓延ってるなぁと思うものもある。

根底にあるのは、働いても働いても全然豊かにならない今の日本社会。ちょっと絶望しそうにもなる。だけど、結果的には都も桃枝も、少しずつ肩の力を抜いて生きられるようになっていくのが救いだ。

ちょっとでも失敗すると、全然リカバーが効かない社会だなぁ。

分厚いけど続きが気になって一気読みしてしまった。恋愛小説でありつつ、社会派小説って感じで好きでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?