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#1-9 昔の姿を追いかけて

 まず出てきたのはチャーハン。どの国に行ってもどんな種類を頼んでも絶対に失敗しないのがこのチャーハンである。
 まずいチャーハンというものに出会ったことがない。私が大好きな名探偵コナンの映画を観る時と同じくらい全幅の信頼を寄せて、安心感をもって注文することがてきる。
 アロー通りのこのたまたま入った店で頼んだチャーハンも例に漏れず、うまかった。海鮮チャーハンみたいなものを頼んだので、イカやらエビやらも豪快に入っていた。嫌われもののグリーンピースでさえも、うまい。
 次にサテー。うーん、これは微妙。焼き過ぎたのか、焼いてから時間が経ってしまったのか、カリカリと表面が硬い。サテーは店によってつけるソースが違っていて、そのソースによって味の良し悪しが決まってくる。味の良し悪しというより、好みの問題かもしれないが。今回のサテーはチリソース的な、少しピリッとするソースだった。私の好みはピーナッツがふんだんに使われた少し甘めのソース。真逆だった。残念。
 さあ、満を持してバクテーの登場である。若いお兄さんが店の外からバクテーを手に持ち近づいてくる。そして到着。待ちに待ったバクテー。マレーシアに来た1番の目的のバクテー。遠距離恋愛中の彼女に久しぶりに会うときのような、懐かしく愛おしい気持ちで器を覗き込んだ。
 あれ、こんなお顔でしたっけ?私の彼女。ちょっと会わない間にずいぶん変わりましたね?なんか痩せた?(こんな器にスカスカでした?)
 いやいや、久しぶりに会った彼女に対して見た目のことをあーだこーだ言うのは失礼極まりない。別に見た目を好きになった訳ではないではないか!性格(味)に一目惚れしたはずだ!
 ひとくち食べてみることにした。
 わたしの淡い期待はひとくち目であっさりと裏切られてしまった。もうあの頃の彼女の姿はなかった。しばらく会わないうちに見た目はもちろん性格まで変わってしまっていた。昔はあんなに柔らかかったのに…。すっかり固くなってしまって…。味も染みてないし、はっきり言って美味しくはなかった。
 ちなみに昼の反省を活かして夜は飲み物も注文した。ライムジュースはノンシュガーじゃないとのことだったので、2番目に好きなスイカジュースにした。スイカジュースはうまかったが、ライムジュースに砂糖入れるようになったの?という怒りに近いもやもやが強く残ってしまい、あまり味に集中することができない。
 
 恋焦がれたバクテーとライムジュースに再会することは叶わなかった。たしかに昼間に行ったセントラルマーケットも、以前来た時と比べると別人のようにかなりキレイになっていた。
 「なってしまっていた」と表現したい気持ちもあるが、マレーシアという国のことを考えると、「発展した」という表現が正しいのだろう。なんといっても前にこの国に来たのは7年も前である。小学生も中学生になるくらいの年月だ。見た目も性格も変わって当然か。
 少し寂しい気持ちあるが、マレーシアの発展に免じて許してやろう。(たいそうなことを書いたが、バクテーに関しては単に美味しい店を選べなかったこちらのせいの可能性が高いと思う。違う店から運んできてたみたいだし。)
 心は満たされなかったが、お腹は満腹でホテルに帰ってきた。途中ショッピングモール内のドンキでスウェットを物色したりなどした。帰りも相変わらずの雨。しかもかなり土砂降り。明日はどうしようか。

 「雨だから」どうしようか、という意味だけではない。まだ予定が何も決まっていないのである。今回の旅行は急遽決まったものだったし、マレーシアには前に来たこともあるので、ほとんどの観光地には行ったことがある。
 バトゥ洞窟でカラフルな階段も登ったし、有名なピンクのモスクにもブルーのモスクにも行った。めぼしい観光地は残っていない。
 中華街に行ってタイパンリベンジをするという案もあるが、それだと1日もたない。自然とクアラルンプールから2-3時間で行ける街に日帰りツアーをしようという考えに至った。
 Googleマップで辺りを探索してみる。
 「マラッカ」。目に飛び込んできた。なんか聞いたことあるような気がするぞ。
 Google検索に移動し(もうGoogleがないと何もできないな)、マラッカと入れてみる。おお、街が世界遺産なのか!私は世界遺産というワードに弱い。そこまで興味をそそられなくても、世界遺産というだけで行きたくなる、行かないといけないような気すらしてくる。その場所を世界遺産たらしめる何かがあるはずで、それを確かめずにはいられない。
 街全体が世界遺産といえば、以前ラオスのルアンパバーンという街に行ったことがある。本当になんにもなくて、本当に素敵だった。何を隠そう、好きな国は?と聞かれたらラオス!と答えるようにしている。
 今は分からないが、当時は信号機が街に1つしかないというくらいのどかで、安全で、なんにもない、どうしようもなく素敵な街だった。
 マラッカはどうだろうか。何もない系の世界遺産なのか、何かある系の世界遺産なのか。歴史的な何かがあるのかもしれないし、現代的な何かがあるのかもしれない。はたまた何もないのかも。
 行き方を調べてみると、TBSという日本のテレビ局みたいなバス停から3時間ほどでマラッカセントラル駅に行けるみたいだった。明日の予定は決まった。マラッカへ行く。

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